第132話

「……ソフィアさんの婚約者候補は何人だったのでしょう?」


「2人……。いえ、3人だったような。」


「最終的に誰かに決めたのでしょうか?」


 翌日、澪と悠花は東雲樹生についての考察を始めていました。前世の名前とソフィアの婚約者候補であったことは共通して思い出してる情報になります。


「これでまた次の段階に入ったということになるんでしょうか?」


 彩音は憂鬱な気分で溜息交じりに言いました。次の段階とは言いながら、これまでの問題が片付いているのかも定かではない状態です。


「楓さんも転生前に関りがあったことになりますが、私や悠花さんには全く記憶がありません。……ソフィアさんとはどういう関係だったのでしょう?」


 その事実も彩音を憂鬱にさせています。婚約者候補の存在を知っていたはずの悠花と澪が楓を知らないとなれば、楓は婚約者候補ではなくなります。

 楓を意識していた彩音にとっては、それなりにショックです。


「島崎さんのように、私たちが何かを思い出すためのきっかけを作ってくださる方なんでしょうか?」


 悠花が言うように、それだけの存在でしかないかもしれません。これだけ関わっておきながら、新聞記事で見ただけの島崎剛徳レベルとは思いたくありません。


「……ですが、彩音さんと、ソフィアさんと何か深く関りがあったお方のような感じもしますわ。」


「もしかして、楓さんが高校に進学されないとおっしゃっているのも何か意味があるんでしょうか?」


 彩音にしか分からないことになるはずなので、澪と悠花は彩音の顔を見ました。


「……申し訳ありません。……私にも分からないのです。」


「そうですか。」


「ただ、楓さんがご存じなことをお聞きできれば……。それに、『東雲樹生さんは大丈夫』とおっしゃっていたことも気になってしまいます。」


「そうですわね。『東雲樹生は……』と強調されているのであれば大丈夫ではない方もいらっしゃることになるます。」


「もしかすると、婚約者候補だった方がこちらの世界でも揃ってしますのかもしれませんね。」


「残念ながら、そんな気もしています。」


 そこまで話したところで、澪が不思議そうな顔をしながら言いました。


「……それにしましても、どうして前世で関係していた人たちが一斉に揃うことになったのでしょうか?」


「えっ?」


「異世界転生すること自体とても貴重な体験になると思うのですが、人数が多過ぎるような気がしませんか?」 


「そう言われましたら、そんな気がしますわ。」


 彩音たちは、今まであまり考えていませんでしたが人数は多くなります。島崎や理事長のようにスポット的な関りであっても、転生前に関係していたことは間違いありません。

 何らかの意図があって選ばれているのかどうかも分からない状況で異世界転生者だけが増えていきます。


「……ここに『革命の女神』も加わることになるのでしょうか?」


 転生前の『やり直し』であるのなら、彩音たちはこの存在を忘れることは出来ませんでした。


「少しだけ気になっていることがあるのですが……。」


「どうされました?……悠花さんには、何か思い当たることでもあるのですか?」


「いえ、そういうわけではありません。」


 悠花が話し難そうにしているので、彩音と澪は顔を見合わせて不思議がっています。


「……あの、ソフィアさんも『何とかの女神』みたいに呼ばれてはいませんでしかた?」


「え?……ソフィアも、そんな呼ばれ方をしていたのですか?」


「そんな記憶が微かにあるような、ないような。」


 ものすごく曖昧なことだけは分かりましたが、全く無関係のことを思い出すとは考え難い状況です。


「確かにソフィアさんは女神のようにお綺麗な方だと思います。……ですが、魔法も苦手で特別な力はなかったはずですので、『何の女神』になるんでしょうか?」


「お二人が覚えていないのでしたら、私の勘違いかもしれませんね。申し訳ございませんでした。」


 本当に自信がなかったらしく、悠花は早々に自分の話を切り上げてしまいました。

 それでも、『革命の女神』と呼ばれる人がいたのは彩音も思い出しているので、全く可能性がないとは言えません。ただし、その呼び方が何であったか思い出したとしても、役立つ情報になるのかは分かりません。

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