第120話
悠花の屋敷には、楓と紅葉の兄妹に久坂芽衣が一緒でした。三人は色とりどりの制服を前に驚きを隠せません。
「……水瀬君、今日って勉強会じゃなかったの?」
「そう聞いてきたんだけど。」
駅に迎えの車が待機していたことにも芽衣は戸惑っていましたが、それ以上の衝撃を与えられます。
「水瀬君の要望……。とか?」
「やめてくれよ。……俺だって、何が起こってるのか分からないんだから。」
楓と芽衣はヒソヒソ声で話していましたが、紅葉は制服姿を羨ましそうに見ていました。その視線に気が付いた悠花はメイドにお願いをして紅葉を連れて行かせます。
「あれ?……紅葉ちゃん連れて行かれちゃったよ?」
「あぁ、たぶん紅葉にも用意されてるんだ。……今日はコスプレの日か?」
「制服ってコスプレなの?」
そんな話をしていながら楓が彩音たちを見ていると、カチカチと音が聞こえてきます。この場にはメイドが3人いて、両手に何かを持っていました。
「さぁ、お部屋で準備が出来ております。……こちらへどうぞ。」
悠花の屋敷には図書室があり、そこでの勉強会となります。かなりの蔵書で、読書好きである悠花の本も保管されています。
「……わぁ、すごい本の量。……お屋敷もすごいけど、本当にお金持ちなんだ……。」
芽衣は圧倒されてばかりいました。周囲をキョロキョロ見回して、見るもの全てに感動しています。
「本当は久坂さんの制服もご用意したかったのですが、サイズが分からなかったので、申し訳ございませんでした。」
「えっ!?……あっ、あ、ありがとうございます。」
「……今日、どこかで採寸させていただいてもよろしいですか?」
悠花の言葉に反応して、一人のメイドが芽衣の後ろに移動してきました。自分が誘われた理由が分からないまま参加していた芽衣ですが、受験勉強出来る機会と思って誘いに乗ってしまったことを少しだけ後悔しています。
楓の目線はメイドが公平にカウントしています。くだらないことだと思っていた千和、渉美、沙織も妙な対抗意識が出てきてしまいました。
今日のルールとして、楓の半径1メートル以内への侵入禁止、楓の触れること禁止、用事もなく楓を呼ぶこと禁止、となっていました。それでも、彩音が恥ずかしさからみんなの後ろに隠れてしまっている状況では他が有利になります。
着替えを済ませてセーラー服姿になった紅葉が戻ってきて勉強会が開始となりました。
「村瀬から問題をもらってきたから、これをやってみて。……分からないところはお互いに教え合って進めて。」
「……たぶん、わたしが一番頭が悪いと思うからお願いします。」
「教えるのも、教えられるのも、勉強だよ。」
楓は雰囲気に耐えられない様子で、出来るだけ関わらないように勉強会を進めようとしました。
「楓さんに質問しても良いのですか?」
「まぁ、俺が分かる問題なら……。」
「この問題は、楓さんも挑戦したんですか?」
「いや、まだやってないけど……。」
「楓さんの分の問題用紙はあるんですか?」
「あぁ、一応準備はしてあるかな……。」
不自然に質問される状況と、楓が答えるために女性陣を見るとカチカチと聞こえてくる音。鋭い目つきのメイドたちに囲まれて楓には妙な緊張感があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます