第59話
「友達になった?……彩音様たちと?」
「そうよ。まだ数日しか経っていないけど、もっと色々なことをお話してみたいと思っているの。」
彩音たちに向けて千和は微笑みました。
この言葉に応えるためにも、彩音は出来る限り正直に話をしていきたいと考えています。
「私たちも同じですわ。……きっかけは生徒会のことを相談していきたいと思ってのことですが、もっと色々なお話をしたいと思っております。」
しっかりと千和を見て話をする彩音に、新谷渉美は驚いていました。
「それに、私は『ズレている』と言われてしまっているので、皆さんの助けがないと進めません。」
「えっ!?彩音様に『ズレてる』なんて言う人がいるんですか?」
「はい。『お嬢様だからズレてても仕方ない』とハッキリ言われてしまいましたわ。」
しっかり覚えていた楓の言葉を繰り返します。彩音には、この言葉がキーワードになっている気がしていました。
「……そうなんですか?」
千和が友達になっていたことも驚きでしたが、そんな言葉を遠慮なく彩音が言われていることも驚きでした。
「はい。そんなズレている私が生徒会に参加することは、学園の皆さんに失礼です。……ですから、千和さんにご相談させていただきました。」
「皆、彩音様が立候補するものだと思い込んでますものね。」
「そんな噂が流れてしまっていることも聞きました。それに、先生からは立候補するように催促されてしまっています。」
「……それで、倉本さんを推薦する?」
「はい。千和さんが倉本さんが適任だと教えてくださいました。」
彩音と新谷の会話を他の三人が黙って聞いています。
お茶会の時と同じように直接話をすることが必要なのだと思ってのことです。
「私も、千和が立候補しないのであれば倉本さんは適任だと思います。……ですが、彩音様が適任であるとも思っていたんです。」
「え?……私が、適任ですか?」
「はい。彩音様の言うことであれば皆は従ってくれると思うし、彩音様は『華』があります。そんな人が、生徒会に参加することがあってもいいのかなって思うんです。」
「……『華』ですか?」
彩音は困惑してしまい、他の三人の顔を見てしまいます。
困っている彩音を見て、楽しそうにしている悠花と澪は別にして、千和は新谷に同意している感じがしました。
「えっと、ありがとうございます。そんな風に言われたことはありませんでした。」
ここは誉め言葉として受け止めておくしかありませんでした。
「……ですが、私は、人前に立つことが苦手なんです。……苦手と言うよりも、怖いんです。」
「えっ?」
彩音の告白に新谷は驚きました。
そして、そこまでの話は聞いていなかった千和も驚きます。ただ、理事長の思惑で立候補を強要されて困っているだけだと思っていたのです。
「人前に立つようなことになれば、昔の記憶の影響で平常心を保ていられなくなると思います。……もしかすると気を失ってしまうことになるかもしれません。」
彩音の年齢で『昔の』となっていることに違和感を覚えましたが、千和たちは真剣に聞いてくれました。
誕生日パーティーで気絶した話は、二人の耳にも届いています。
「……もしかして、パーティーの時に気を失ってしまったことも関係しているのでしょうか?」
思わず千和も割って入ってしまいます。
三人が同時に気を失ってしまい、誕生日パーティーは中断されることになったことが無関係とは思えなくなっています。
「はい。今はまだ、詳しくお話できませんが関係しております。」
真剣な表情で話をする彩音。澪も悠花も同じように真剣な顔をしています。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます