第6話
「悪役だなんて言ってしまって、お気を悪くされていないでしょうか?」
部屋から出ていこうとしていた澪が小さな声で彩音に質問をしました。
「ご心配はいりませんよ。いずれは自分でも行き着いていた結論ですから。……それよりも、お二人とずっと一緒だと分かったことが嬉しかったです。」
処刑された理由を考えていけば、ソフィアが『悪い事』をしたという事実には辿り着いてしまいます。
ただ、前世の世界観も思い出せていないのであれば、その世界の価値観で『悪い事』がこの世界での『悪い事』と違うかもしれません。であれば、分からないことで悩んでも仕方ないのです。
「……私も、そんなつながりまであったことに驚きましたけど、嬉しかったんです。」
「私もですわ。……思い出した記憶は悲しいものでしたけど、ずっと一緒だったことに胸が高鳴ってもいるんです。」
澪と悠花が続けて感想を言いました。
たしかに、前世の記憶としては最悪な場面でしたが、三人のつながりを証明してくれた大切なものとして考えることもできます。
一人になった彩音も少しだけ気持ちが落ち着いて、ベッドに横になると眠ることができました。
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翌朝、元気になった彩音たちが三人で談笑していると、屋敷の中が慌ただしいことに気が付きました。
日曜日にも関わらず、父の浩太郎がスーツに着替えて出掛ける準備をしていました。
「おはようございます、お父様。……朝早くからお出かけなんですか?」
「あぁ、おはよう。急用ができて出掛けなければいけないんだ。……それよりも、体調はどうなんだ?何か少しでも異変を感じたら、すぐに医者を呼ぶんだぞ。」
「平気ですわ。昨日はご心配をおかけしてしまい申し訳ございませんでした。」
慌てた様子なので、会社でトラブルがあったのかもしれません。
「おはようございます。」「おはようございます。」
彩音と一緒だった澪と悠花が浩太郎に挨拶をしました。
「おはよう。澪さんも悠花さんも、ゆっくり休めましたか?お二人も体調に異変を感じたら、遠慮なく彩音に言ってくださいね。」
「はい、ありがとうございます。」
短い会話だけを済ませて、浩太郎は出発してしまいました。
彩音たちが心配することでもなかったのですが、昨日のことも重なってしまい心には小さな波が立ってしまいます。
お昼過ぎまでは三人一緒に過ごしましたが、体調には変化が見られませんでした。気を失った原因が分からないと思っている人たちからは心配されてしまいましたが、本人たちは病気でないことを分かっています。
澪と悠花を用意した車で送ってもらうことになります。母の知世は、心配して二人に話しかけていましたが問題はありませんでした。
父・浩太郎も夜には戻ってきており、一緒に夕食の時間を過ごしましたが特に変わった様子もなく彩音の心配をしてくれます。
月曜日になって普段通りに登校すると、誕生日パーティーに参加していた子たちが、
「彩音様、大丈夫なんですか?心配しておりました。」
「彩音様、もう体調は戻られたんですか?無理はなさらないでくださいね。」
と、次々に声をかけてきました。
澪と悠花の周囲も同じように声をかけてくる子たちが押し寄せており、なかなか彩音に近付くこともできない状況です。
――新聞?……悠花さん、どうして新聞なんて持ってきているんでしょうか?
彩音は悠花が手にしている新聞が気になってしまいました。
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