第12話
それから三人は共通した台詞の意味を考えることになりました。
「……ソフィア様と彩音様が言った以外にも、その台詞を聞いたことがあるような気がするんです。」
「えっ!?悠花さんもですか?……私もなんです。」
悠花はバッグからスマホを取り出して検索を始めました。彩音と澪は結果が出るまでの時間をドキドキしながら待つしかありません。
「……あっ!ありました。……18世紀にマリー・アントワネットさんという方が言ったとされる言葉ですわ。」
更にネットの情報を読み上げてくれました。
「……フランス国王のルイ16世さんの王妃様で、フランス革命の時に処刑されている……そうです。」
「その方も、処刑されているんですか?」
「……はい。ここには、そう書いてあります。」
同じ言葉を発して、同じような最期を迎えてしまっている女性がいたのです。彩音としては心中穏やかではいられません。
ですが、マリー・アントワネットを反面教師的に考えることで最悪の結末は回避できることになります。
「そのマリー・アントワネットさんが、私と同じ言葉を残しているんですね。」
「……それが、違うようなのです。」
「えっ!?言ってはいないのですか?」
「はい。実際にはマリー・アントワネットさんが言ってもいないのに、言ったことにされてしまったようなんです。」
「どういうことなんでしょうか?」
「えっと……、民衆の気持ちを理解できていなかったマリー・アントワネットさんが、民衆からの反感を買うきっかけになった台詞とされたみたいなんです。」
おそらく悠花は要約して説明をしてくれていたのだとは思いますが、彩音も澪も釈然としない状態です。読み上げてくれている悠花も同じように、説明文を理解することができないでいました。
三人の頭の上には『?』が並んでいます。
「……どうして、マリー・アントワネットさんの台詞が民衆を怒らせるきっかけになったのでしょうか?……前世でも、その台詞は『無神経』だと怒られた記憶もあります。」
彩音が疑問を投げかけましたが、基本的なことが三人には分かっていないのです。
「さぁ、どうしてなんでしょうか。」
ソフィアが14歳の誕生日に言った時も、彩音が14歳の誕生日に言った時も、全く悪意はなかったのです。
何故、そんな言葉で民衆が怒る意味が分かりませんでした。
「もしかして、『パン』の代わりを『お菓子』にしてしまったことがダメだったのかもしれませんね?」
「『パン』の代わりですから……、『ご飯』なら良かったんではないでしょうか。」
澪が核心に近付く質問をしましたが、悠花が離してしまいます。
「……ですが、前世の世界観で『ご飯』は存在しないように感じましたよ。」
彩音も会話に参戦しましたが、核心に戻すことは難しそうでした。庶民的な感覚を持ち合わせていない三人が、答えに辿り着くことはないのかもしれません。
「……あと、マリー・アントワネットさんは『浪費家』だったとも書いてあります。」
「前世の私も『贅沢三昧な生活』を送っていると言われたのですが、ソフィアは浪費家だったのかもしれません。」
彩音は処刑台の上で『革命の女神』が観衆に向けた言葉を思い出していました。
「それでしたら、『パンがなければ、フォアグラを食べればいいじゃない?』……と言ってしまえば贅沢な感じがするんです。」
こんな感じで会議は続きましたが、結論の出ないまま一緒に夕食をとることになって終わってしまいました。
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