第26話
「君たちの都合が良い日にあわせるが、それでもダメなのか?」
浩太郎が提案するも、紅葉は首を横に振ります。そんな紅葉を見て、彩音は嫌われてしまったかもしれないと不安になります。
「お気遣いは嬉しいですけど、スイマセン。」
紅葉に参加の意思がないのであれば、楓が誘いを受けるはずもありませんでした。
「……紅葉さん、どうされてしまったんですか?」
澪が心配した様子で紅葉に声をかけると、紅葉がボソボソと何かを呟いています。小声で聞こえなかったこともあり、『えっ?』としゃがんだ澪の耳元にヒソヒソ話を始めました。
紅葉の話を聞いていた澪が『そういうことでしたか』と納得した顔をして、『……でしたら……』と紅葉の耳元に話しかけます。澪からの提案を聞いていた紅葉の表情は一気に明るくなっていき、何度か頷きました。
「……どうやら、女性陣で話はまとまったらしいな。」
「はぁ……。」
その様子を黙って見ていた浩太郎からの言葉で、楓はお茶会への参加を渋々でも認めざるを得ません。
紅葉の前にしゃがんでいた澪の横に楓も近付き、三人でヒソヒソ会議は続きます。彩音が聞き耳を立てていると、『じゃぁ……あんたの家に……』とか『……頼むよ』とか聞こえてきます。
――澪さんのお屋敷で何かあるのでしょうか?……楓さんは澪さんに何をお願いしているのでしょうか?
これで彩音が望む結果とはなりましたが、彩音としては何となく面白くありませんでした。
――さきほどは楓さんを巻き込むことに否定的でしたのに……。
巻き込むつもりがなければ、お茶会への参加を促す必要などないはずです。紅葉が何を悩んでいたのかも気になりますが、澪や悠花の態度が変化したことも気になってしまいます。
――どうしてしまったんでしょう?……少しモヤモヤします。……理事長の言ったことが気になっているんでしょうか?
スッキリとしない感覚も残りましたが、次への展開が期待できる状況は生れたので、彩音はそのことを喜ぶことにしました。
澪と悠花が彩音の方を見てニッコリと微笑んでいたので、彩音も笑顔を返しました。彩音の笑顔には僅かばかりの不自然さが出てしまいますが、澪も悠花も彩音の反応を楽しんでいます。
「……だったら、学校が落ち着いたくらいの時期でもいいかな?」
この状況を回避することを諦めた楓は彩音に質問しました。
「もちろんですわ。……あのぅ、ご連絡先を教えておいていただけませんか?」
楓は手帳に連絡先を書き込んで、切り取った紙を彩音に差し出しました。彩音は嬉しそうに受け取りましたが、もう一枚の紙を澪に渡したのを見てしまいます。
紙を受け取った澪と悠花が並んで彩音の傍まで来て、
「……ミケーラ学園長のことも気になるので、この後も少しお話しさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「そうでしたわね。……私も、お聞きしたいことがありますので……。」
普段とは少し違った彩音の迫力に澪と悠花はドキッとさせられてしましました。彩音としても紅葉との会話の中身を聞き出すまでは二人を帰すつもりはありませんでした。
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