第10話
定期的に会議を開くにしても、三人は習い事などで意外に忙しくて予定を合わせる必要がありました。
これから先、このまま過ごしていたとしても何も起こらないかもしれませんが、何もせずに過ごすことは3年間を不安な気持ちを消せないことを意味します。
長いようで短くもある3年間を有効に使うことで、悔いのない時間にすることを選びました。
ただ、彩音には気になっていることがあります。
二人が気付いていて口に出していないだけなのか、まだ気が付いていないのかは分かりません。いずれはハッキリさせなければならないことですが、せっかく前向きになれている時に聞くことではないと考えて先送りにしてしまいました。
「彩音様、定例会議についですが、火曜日と金曜日でいかがでしょうか?」
最初の会議後に都合の調整をしてくれていた澪が彩音に相談してきました。
「えっ、週に2回もで大丈夫なんですか?」
「もちろんですわ。これからのことがかかっているんですから、寧ろ少ないくらいです。」
「私は大丈夫だと思いますが、悠花さんのご都合は?」
「私も問題ございません。他の予定をキャンセルしてでも優先させますわ。」
悠花も力強く答えてくれました。提案者である彩音も、他の予定を全てキャンセルする予定で考えていたので二人が乗り気になってくれていることに嬉しくなってしまいます。
「今日が木曜日ですので……、明日の金曜日からでよろしいでしょうか?」
彩音の問い掛けにも、躊躇うこともなく『はい』と返してくれます。
「……場所は?……順番に変えていった方がよいでしょうか?」
澪が少しだけ不思議そうな表情をして彩音の話を聞いていました。そして、悠花と顔を見合わせてから、
「彩音様がご迷惑でなければ、彩音様のお部屋にお伺いしようと思っているのですが、ダメでしょうか?」
「いいえ、ダメなんてことはありません。……ですが、お二人にばかり負担をかけてしまうのではありませんか?」
「負担なんてありませんわ。すぐ近くではありませんか。」
今度は悠花が微笑みながら答えてくれました。確かに、車で移動してしまえば10分ほどの距離ではあるので大した労力にはならないかもしれません。
「……それでは、明日の放課後に集合ということで決まりですね。」
彩音は澪が見せた表情を気にしつつも、明日を待つことになりました。先日に見せていた不安げな表情とは違う、『?』が顔の横にあるような表情です。
三人は幼稚園からの仲です。父親の会社も関係性が強く、同い年でもあったことから共に過ごすことが当たり前になっていました。それでも、学校以外で積極的に集まることも少なかったので新鮮な気持ちになっています。
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金曜日、学校が終わり三人は集合しました。
「それでは、よろしくお願いいたします。」
変な感じではありましたが、彩音は改まって挨拶をします。こんな時、どう声をかけるべきなのかは分かりません。
「……あれから、お二人は何か思い出したことがありますか?」
「いいえ、まだ何も新しいことは……。」
「私も、まだ……。彩音様は、何か思い出されたことはありますか?」
悠花も澪も新情報はなかったようですが、彩音も同じです。
「……父の会社関係で、過去に起こった事件や事故を調べてみたのですが、気になるようなものもありませんでした。」
悠花が、そんなことまでしてくれていたことに驚きました。彩音は前世のことばかり考えて、この世界の過去から得られる情報のことを忘れていました。
「私も、父に最近気になっていることはないか聞いてみたのですが、島崎さんの件以外で問題は特にないそうです。」
こちらは澪の発言になります。二人は、ちゃんと情報収集のための行動を起こしていたらしいのです。
「……会議を提案したのは私なのに……。何もお役に立てなくて、情けないです。」
彩音は前世のことで落ち込むよりも、現世の行動力のなさで落ち込むことになってしまいました。
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