第125話
その後は、彩音が恥ずかしがることも減り、無事に勉強会及び制服対決は終了することができました。
楓と紅葉は先に帰って、そこから結果発表となります。悠花はメイドたちが集計した楓の目線回数を回収して、皆の前に戻りました。
「……それでは、第1回目の制服対決の結果を発表したいと思います。」
ここで明確にされた『第1回』という言葉に、千和・渉美・沙織は戦慄を覚えます。ただ、その中に少しだけ女の意地として負けたくない感情も働いてしまい複雑な心境ではありました。
「まず、ブレザー組の私が25回、千和さんが27回、沙織さんが24回となり、合計が76回でした。そして、セーラー服組の彩音さんが22回、澪さんが24回、渉美さんが26回となり、合計が72回でした。」
「……計算しているかのように均等になっているんですね。」
澪が率直な感想を述べる。
「ええ、私も驚きました。これでは、どちらが優勢なのか全く分からない状態になっているんです。」
ただ、僅差であっても最下位になってしまった彩音は不満そうな顔を見せています。途中まで恥ずかしがって後ろに隠れていたことを後悔していました。
「楓さんって、すごく気遣いの出来る人なんでしょうか?」
全員を均等に見ていた楓に対して、沙織は妙に感心していました。不公平にならないように接してくれていたことを数値化されてしまい、楓本人には恥ずかしい結果でした。
「……ですが、今回は気になる結果が別に出てしまったんです。」
彩音が、『別な結果ですか?』と神妙な面持ちで聞きました。
「はい。『セーラー服』と『ブレザー』の対決に割って入る存在になるかもしれません。」
この2つ以外で制服対決に割り込める存在を誰も知りませんでした。澪が『それは何でしょう?』と悠花に答えを促します。
「……それは、『メイド服』ですわ。……今回、楓さんの目線をメイドに確認してもらっておりましたが、メイドたちが楓さんとよく目が合うことに気付いたんです。」
驚いた反応を見せている彩音と澪を別にして、他の3人は悠花の答えに疑問を呈します。
「あのぅ、悠花さん、『メイド服』は学校に着ていく制服ではないので割って入ることはないと思いますが……。」
「そうですわ。『メイド服』を入れてしまうことになれば、様々な制服が対象になってしまいます。」
「今回のテーマは、楓さんに進学する意欲を持ってもらうためと聞いているので、『メイド服』は絶対に違うと思います。」
まだ『セーラー服』や『ブレザー』を着ることは許容範囲として参加していましたが、このままでは『メイド服』を着せられることになりかねません。
「いいえ、盲点でした。……もしかすると、この気付きが突破口になってくれるかもしれません。」
楓がメイドを見ていた理由は、『カチカチ』と音を立てて何をしているのか気になっていたためでした。その回数が増えていけば、真剣な表情で自分を見ているメイドたちの存在が気になって、見てしまう回数が増えただけのことです。
怯える3人とは違い、彩音と澪は真面目に悠花の話を聞いています。
「……突破口ですか?」
「はい。……確かに千和さんたちがおっしゃったように『メイド服』で学校に通うわけにはまいりません。それに、私たちが『メイド服』を着たとしても意味がないんです。」
「私たちが『メイド服』を着てはダメなのですか?」
千和たち3人は『メイド服』を着させられることにはならないことで安心しました。ただし、話は続いています。
「制服だけが問題ではなかったのかもしれないのです。楓さんにとって、彩音さんが最も魅力的に見える『属性』が必要になってくるとも考えております。」
いよいよ訳の分からない領域に入ってきてしまい。誰もが黙って聞いているほかありません。彩音にしてみれば、自分が魅力的に見られる話になっているので真剣です。
「もし、楓さんが『メイド服』に関心があるとすれば、身の回りのお世話をしてくれるメイドが着ていることに意味があるのかもしれません。」
「……『メイド服』を着ていれば誰でもいいというわけではないのですね?」
「はい。メイドとして働いている人が着てこその『メイド服』なんです。」
「ですが、『セーラー服』も『ブレザー』も学生が身につけるべき物で、私たちは学生ですわ。」
「その通りです。……ですから『属性』が必要になるんです。」
悠花は力強く断言しました。
彩音と澪は悠花の話しに聞き入っていましたが、他の3人は早く帰りたくなっています。
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