第26話 とりあえず見た目でしょ

 はぁ……。わかんねぇ……。


【順序は守って下さい】ってどういう意味だ? キスの前に告白って事か? けど、冊子を押し付けながら言われたから委員会の作業の事か?

 まぁ、どっちも順序を守るのが普通なんだろうけどさぁ。

 ぶっちゃけ最初は顔で好きになったから、感動的な理由なんかないぞ?

 今は……まぁ色々と理由あるけどありふれたもんだ。可愛らしい仕草とか、一人でも委員の仕事をちゃんとやってる事とか、こんな俺にも懸命に丁寧に教えてくれたり……とかな。

 ラノベみたいに、人を好きになる度にそんな気持ちを試す事件とかが毎回あるわけがない。

 様々な試練を乗り越えてやっと通じ合った二人……なんてリアルで聞いたことないしな。どっかにはあるんだろうけど。

 俺的に、そういうのはイチャイチャ甘々本の中だけでよろしく。

 つーか、そもそも東雲さんは俺の事を好きなのか? キスした時、嫌がる素振りとか殴られたりとか無かったけど……。あ、【ばか】とは言われたか。果たして、あの【ばか】は、「もう……ばか……」なのか、それとも「ばかじゃないの?マジ最悪」の方なのか……。


 う~ん、考えても仕方がない! こんな時は本人に聞くのが一番だな! 明日の放課後にでも今日委員会の話し合いをした空き教室に来てもらって、気持ち伝えてみるか! ダメだったらその時はその時だ!

 伊達に、「深山は格好いいし面白いけど彼氏としては……ね?」や、「良い人には良い人なんだけど、好い人にはならないかな~?」ってフラれてきた訳じゃないっ! 男は度胸っ!


 さて、そうと決まったら早速メッセ送ってみるか。


『明日の放課後、今日行ったあの空き教室に来てくれる? 話したいことがある。今日の事も含めて』


 送信っと。

 よし、これで後はなんて返信が来るかだな。

 ……。

 ………。

 …………。

 来ないな。まぁ、まだ使い方に慣れてないだろうから仕方がないか。


 ピロンッ♪


 スマホの画面には【新着メッセージ 東雲千衣子】との表示。おっ、返信来た。どれ、なんてきたかな?


『おっけー』


 ……返信軽っ! そして普段の話し方とギャップがすごいっ! まじか。普段はこんな感じなのか。ギャップ萌えってやつかな? うん、嫌いじゃない。


 ピロンッ♪


 ん? なんか来た。相手は……東雲さんだ。なんだろ?


『さっきのは間違いです。なんでもないです。決まった言葉を打つといろんな顔文字が出てくるのを楽しんでたらつい送信ボタンに指が触れただけです。明日の放課後ですね? わかりました』


 うん。明日の告白、なんかダメそうな気がしてきた。


 ◇◇◇



 東雲さんのメッセを確認した後、スマホをポケットに突っ込んで家へと向かっていると、茜の姿が見えた。ついでに香帆も。なんであいつ茜と腕組んでんだ? つーか向かいにいる二人は……げっ! 二条と明乃かよ。なにしてんだあんなところで。


「何してんのお前ら」

「あっ! 翔平!」

「げっ! しょう兄ちゃん……」

「深山君……」

「あ、深山っち」


 おい香帆、げっ! ってなんだよ。あと明乃。深山っちって初めて聞いたぞ。なんだ? 俺、そう呼ばれてんの? びっくりだわ。


 んで、四人の話を聞いて俺が思ったことはただ一つ。

 茜、お前はいつからラブコメラノベの主人公になった? だった。

 うわぁ~これ、和野が聞いたら卒倒し……いや、大丈夫か。あいつ、無類のお姉さん好きだしな。同級生と年下は興味無いって言ってたし。

 それにしてもこの三人か……。改めて見てもみんなキャラ濃いなぁ。

 だけど、茜は美桜の事を好いてるんだよなぁ。

 なんか不憫。けど道路の真ん中で騒ぐのは良くない。

 ってなわけで、俺から出した提案はこれ。


「いや、話したいこと事あるならメッセでもいいじゃん。ID交換でもしたら?」

「しょ、翔平!?」

「「「あっ!!」」」


 茜はビックリした顔をして、既に連絡先を交換した二条以外の二人はその手があったか! みたいな顔をしている。

 いや、ここでごちゃごちゃ言い合ってても邪魔でしょうが。その為の妥協案だよ。

 それに適当に返事してれば三人ともそのうち飽きるだろうなぁ~? という希望的観測。


「三枝君、今日は頑張って撮って送るね!」

「茜ちん、他の衣装の写真とかも送ってあげよっか?」

「やたっ! 茜君のゲット♪ こないだの約束の連絡とかするからね?」

「は、はは……」


 ……えっと、早まった?

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