第81話 復活のS(sisterのパンツ)

「えっと……昨夜のことって、もしかして……」

「はい……」


 詳しく聞かなくても千衣子の声のトーンで全てを察した俺は愕然とする。なんてこった。娘の初めてを奪った男として認定されたってことじゃないか! どうしよう。次会った時どんな顔して会えばいいんだ!? 朝の感じだと歓迎はされてるっぽいけど……。


「そ、それで、お母さんはなんて?」

「若いおばあちゃんになりたいから、翔平くんが店を継いでくれるなら卒業したらすぐに子供作ってもいいって言ってました……。だからそれまではちゃんと避妊しなさいって……」

「まさかの将来設計提案!?」

「もう恥ずかしすぎて無理なんですよぉ〜! いつの間にかお姉ちゃん達にも言っちゃってるんですよ!? 信じられます!?」

「ちょっと待った。お姉ちゃん? ってことはまさかのにも?」

「はい……」


 嘘だろオイ。絶対ウザイくらいにからかって来るのが目に見えてんだけど。


「なぁ千衣子。俺、学校行くの怖くなってきたんだけど」

「諦めてください。私はもう諦めました……」

「おおぅ……」


 お互いに初めてを済ませたのに、東雲家の暴走のせいで甘い空気にならないまま、「また明日」で電話は終わった。

 それから無性に喉が渇いて飲み物を取りに行こうと下に降りると、二人はまだ喧嘩している。


「私だって彩月がそんな趣味だったなんて知らなかったし! なにその略奪趣味! あっ……だからこの前も隣のクラスの子にわざわざ教科書借りに行ってたの!?」

「違うよ〜! あれは本当に忘れただけだも〜ん! なのに勝手に好きになられて困ってたんだからぁ〜。それに〜? 香帆ちゃんだって〜? みんなからなんて呼ばれてるのか知ってるの〜?」

「知ってるわよ! 超可愛いとか超天使とかでしょ!?」

「ぶっぶ〜! いっつもみんなに良い顔して鏡見てるから【万華鏡白雪姫】って呼ばれてるだよ〜!」

「なにそれ最悪!」


 え、ちょっとカッコイイじゃん。俺、兄ちゃんだからここは敵として立ち塞がるべきか?

 ……やっぱりやめとこ。とりあえずこの二人は放っておこう。

 今はそれどころじゃない。千衣子の姉、芽衣子さんへの対処を考えなくては……。



 ◇◇◇



 そして朝が来た。

 いつも通りに迎えに行き、少し歩き方がぎこちない千衣子の体を気遣いながらゆっくりと学校へ向かった。

 学校見えてきた所で辺りを警戒して、芽衣子さんの姿が見えないのを確認してから校門をくぐろうとしたその時だ。


「あはははははは! おはよう深山くん! いや、義弟くんと言った方がいいかな?」


 突然聞こえた声。ふっと上を見ると、校門の上に立って俺たちを見下ろす芽衣子さん。

 朝イチから絡んできやがったか。しかもパンツ見えてるし。水色でリボンが付いててやたら可愛らしい。意外だ。


「今日のパンツは紫のレースだよ義弟くん! 存分に見てもいいんだよ……あ、ちょっと待って。ゴメン、水色だったみたいだ」


 おいコラやめろ。目の前で捲って確認すんな。

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