第58話 これでもかっ! って程のクリスマス夢オチ

 メッセを見て俺はすぐに電話をかけた。一秒たりとも千衣子を待たせるわけにはいかないっ!


 ~~♪


『はい……』

「俺も声聞きたかったっ!」

『んにゃっ!? い、いきなりですか!?』

「え、もちろん。あ、ビデオ通話できる?」

「も、もちろんなんですね……。嬉しいですけど……。ビデオ通話ですか? いいですよ──ってやっぱりちょっと待ってください!」


 この後、千衣子が眠くなるまで会話を続けた。俺も電話を切ってからすぐに眠気が襲ってきたし、今日は早めに寝ることにする。今日は色々あったしな。

 おやすみ~。


 ◇◇◇


 ──ガサゴソと音がして目が覚める。

 目は開けてみたけど、まだ暗さに慣れなくてよく見えないな。

 するとベッドの脇に人の気配。ようやく目が慣れてきたところで横を振り向くと、そこにいたのは──。


「ふふ、こんばんわ。深山君♪」

「……え? 千衣子?」

「はい、そうですよ。 ちなみにこの格好どうですか?」


 何故か千衣子がいた。しかも、そんな事言いながら見せつけてくる格好は、頭には赤と白を基調としたフワフワした三角帽子。上はその豊満な胸だけで支えられた赤いチューブトップで、可愛いヘソが見えている。さらに、下は赤いホットパンツで、そこからは白い足が伸びていた。


「サンタ千衣子でーす♪」


 そんな事を言いながら片足をピョコンと上げてポーズをとる千衣子。めっちゃ可愛い。

 けど、これはあれだな。夢だわ。だってクリスマスまで何ヶ月もあるんだし。

 つまり俺のやりたい放題。よし!


「千衣子ぉぉぉぉっ! いだっ! 何!?」


 千衣子に抱きつこうとしたら何故か弾かれる。見えない壁が邪魔をする。俺の夢なのに解せぬ!


「深山君ダメですよ? まだ未成年なんですから。だ・け・ど、私の出すクイズに正解する事ができたらちょっとだけならご褒美上げますよ?」

「よし、受けて立とう!」

「よ、欲望に忠実なんですね……」


 俺の夢なのに、なんで思い通りにいかないのか不思議だけど、ご褒美と聞けばやりましょう!

 さぁ! カモンッ!


「では第一問です! サンタさんはどこにいますか?」

「俺の目の前」

「ブブー! 間違えたのでペナルティです」


 サンタ千衣子がそう言うと、チューブトップの裾が伸びてヘソが隠れた。何故っ!?


「第二問です! サンタさんの発祥の地は?」

「北極」

「ハズレです。はい、ペナルティですっ♪」


 今度はホットパンツがハーフパンツになった。さらに、チューブトップには手首まで袖が付いてしまった。

 んぬぁあぁぁぁぁっ!? これ、俺が間違えるたびに肌の露出が減っていくのか!? 俺の夢なのに!?


「深山君全然ダメですね~。次が最終問題です! これに正解するとポイント五倍です!」

「何を基準に五倍なのかがわからないけど、さぁこいっ!」

「あなたの恋人は──だぁれ?」


 サービス問題きたぁぁ! そりゃそうだよな。俺の夢なんだもん。ここで終わるはずがないじゃん。さて、しっかり答えて五倍のご褒美を貰おうじゃないか。


「俺の最愛の恋人は、千衣子。お前だ」

「えへへ~♪ 大正解ですっ! それではご褒美でーす♪」


 その声と共に増えた布はどんどん減っていき……


 ピピピ ピピピ ピピピ


 そこで目覚ましが鳴る。うるさい。

 目覚ましを止めて再び千衣子を見ると、とうとうサンタカラーのビキニみたいになっていた。

 もう少しっ!


 ピピピ ピピピ ピピピ


 またか! あ、スヌーズか。

 俺は再び消して千衣子に目を向ける。

 すると千衣子の姿は見えず、見えない壁に文字が浮かんでいた。そこには──


【ここから先は十八歳以上だけですよ? 深山君は十八歳以上ですかぁ? YES NO】



 俺は泣く泣く【NO】をタッチした。

 そしてそこで目が覚める。


「……なんだこの夢」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る