第57話 寂しがり彼女
「じゃあ、また明日学校でな。俺は明日も千衣子の迎えに行く予定だからさ」
「いいなぁ。僕もいつかそんなセリフ言ってみたいよ」
俺は今、玄関で茜を見送っている。
ちなみに野村はあの後すぐに帰った。帰ったというか、母親に連れて行かれたんだ。
その理由なんだが、俺達が挨拶を終えて二階に戻ろうとすると、野村マザァが俺と茜に「二人とも彼女は出来たの~?」って聞いてきた。
それに対して俺はもちろん【いる】って答えたんだけど、茜は【彼女はいないけど同じ学校に好きな人はいます】って答えた。
その途端、野村は白目向きながら「アバババババ」って震え始めた為、その姿に大笑いした野村マザァに連れていかれたんだ。
さらば野村。同じ高校じゃないからあまり関わりはないかもしれないけど、文化祭とかにでも遊びに来てくれ。
もう茜の周りは定員オーバーだ。しかもどこぞのラブコメ主人公と違って、ちゃんと自分の意思が決まってるしな。
間違っても茜の家に突撃とかしないように。
「まぁ、頑張れ! 何か協力出来ることあればするからよ。あ、そうだ! ダブルデートでもしてみるか?」
「ダブルデート!?」
「まぁ、千衣子が良いって言えばだけどな。恥ずかしがって無理って言いそうだけど」
「あ、またノロケだ」
「許せ。俺は今調子に乗っている。しかもビッグウェーブに」
しょうがない。こればっかりはしょうがないんだ。しばらくは許してくれ。
ほら、彼女できても「ふっ、別にいつもと変わんないさ」とか気取って言う奴よりはマシだろ?
「ビックウェーブの使い方それ合ってるの? まぁいっか。じゃあ僕は帰るね」
「おう!」
茜が出ていった後、鍵をしめてリビングに行くと、香帆がソファーの上で変に怯えている。
頭の上からブランケットを被り、ソファーの背もたれから顔の半分だけ出してこっちを見ていた。
「お前なにしてんの?」
「……あの人ホント苦手なの。あのオホホ高笑いが頭に残ってるの。ヤなの。……ふぇ」
……おぉ? 何故か香帆が可愛いんだが? にしてもこれほどまでにトラウマを植え付けるとは……すげぇなまちこ。
とりあえず慰めておくか。普段生意気でも可愛い妹だしな。
俺は香帆の頭に手を乗せて撫でながら言ってやった。
「まぁ、大丈夫だ。そんなに関わる事もないだろしさ。それにお前も昔とはちが──」
「ぬ……」
ぬ?
「ぬ、抜け駆けして出来た彼女の乳やら尻やらを撫で回した手で香帆の頭を撫でるなぁぁぁ!! ──あぁっ! 痛い痛い痛い! アイアンクローはお辞めになってぇぇぇ! あっ! このまま続けてもらえば小顔になれる!? あ、嘘嘘! ごめんなさいぃぃ~!」
「おいこら。茜も一緒に飯食ってる時にも静かだと思ったら今これかコラ」
「だってぇ……茜くんが見てるから大きな口開けて食べれないしぃ?」
「全身下着姿晒して俺の部屋で叫んでおいて何を今更言ってんだ?」
「……そんな記憶はございません」
こ、この野郎っ!!
◇◇◇
結局、香帆にはデコピン二発かまして充電していたスマホを取りに自室に上がってきた。
まったく……都合のいい記憶だなぁ。
ん? 新着メッセが二件と着信が一件。しかも全部千衣子だな。なんかあったのか?
そして千衣子からのメッセを開くとそこには、
『深山君は今何してますか? 私は今お風呂上がりました。ちょっと長湯しすぎてのぼせそうですけど』
『東雲 千衣子から着信』
『あ、えと……もし寝てたらごめんなさい。あの、ちょっと声が聞きたくなっただけなんです。あの……明日も一緒に学校いけます……か?』
あぁぁぁぁぁぁ!! 好きぃぃぃぃぃっ!!
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