第30話 残念美人と生徒会室
ちょっと待った。
まじでこの人誰? 全く面識ないんだけど!
リボンの色を見ると二年生のカラー。ってことは先輩か。なんでこんな所に?
つーか可愛いって言ったのは東雲さんの事であって、この人の事じゃないんだけど!?
「あはは! どうやら混乱しているみたいだね。どうしてこんな美人が自分のところに? って顔かな? そうそう、君が私の事を先輩だと認識しているのはわかっているよ。なぜなら今、君の視線の先は私の胸元のリボンに向いていたからね! つまり、君は私の豊満で形のいい胸を見ていたという事だ!」
いや、見てねぇよ。
どうでもいいけどさっきから自画自賛がすげぇなぁ、おい。
確かに美人だし、胸もでかいとは思うけどさ。それよりもキャラの濃さの方が目立つわ。
「あ、いえ、全然」
「否定されると泣きたくなる」
めんどくせぇな!!
「まぁいい。深山君、私は君に話があって来たんだ」
「俺に?」
「そう、君だ。ちなみに昼休みは何か用事があるかな? 無かったら生徒会室に来てくれ。あっても来てくれ」
「用事を聞いた意味は……」
「ないねっ!」
おぉ……なんかやべぇ先輩だ。残念美人ってこういう人の事を言うのかもしれん。てか、俺の名前知ってるのか。
「はぁ。まぁ、行けたら行きます」
「うん、よろしく頼むよ。じゃあまた!」
そう言うとその先輩は手で何度も髪をたなびかせながら去っていった。手動かよ。
「なぁ茜、あの人知ってるか? 生徒会室とか言ってたけど」
「ぼ、僕もわかんない。確か会長は男の人だったと思ったけど……」
「つーか、名前も名乗らずに行ったな……」
「そうだねぇ……」
さっきの三人衆といい今の先輩といい、変わった奴が多いなぁ……。
◇◇◇
ってわけで昼休み。
俺はチャチャッと弁当を食べて席を立った。
「あ、翔平もう行くの?」
「ん、一応な。相手は先輩だし」
「そっか……」
「あ~まぁ、頑張れ?」
「うぅ……」
俺が何を頑張れと言ったのか。それは茜の現在の境遇にだ。
俺が抜けると、ここには茜以外には美桜と二条。そして今日から参戦してきた明乃を入れての四人だけになる。
ちなみに和野は明乃が来た瞬間に「ギャル怖い」って言って逃げた。昔付きまとわれたのがトラウマになってるらしい。
俺も明乃が来た時はビックリした。明乃の友達もびっくりしてた。
だけど、さすがに二条みたいにいきなり手作り弁当なんていう暴挙はしなかったな。というより、二条も明乃も茜と一緒に食べる為に来た割には眠そうにしていてあまり喋らない。そりゃあ三時過ぎまで起きてりゃそうなるよな。
元気なのは美桜だけなんだが、
「「あの……」」とか、「「えっと……」」とかって茜と同時に口を開くもんだから、お互いにどうぞどうぞになって会話が進まない。
お前ら昨日までは普通に話してたよね? なにそのラブコメな感じ。俺、経験した事ないんだけど!
というわけで、相手が先輩だからという理由で俺は逃げる。すまん親友! 応援はするけど、ちょっとそのカオス空間は無理!
◇◇◇
そしてやって来ました生徒会室。
とりあえずノックをすると、返事はすぐに返ってきた。
「入りたまえ。鍵はあいているよ」
「失礼しまーす」
言われたまま中に入る。
生徒会室の中は特に特別な作りになってる訳でもなく、四つの長テーブルが正方形になるように置かれていた。その内三つにはパイプ椅子がいくつかあり、一番奥のテーブルにはちょっと良さげな背もたれ付きの回転する椅子がある。きっとそれが会長用の椅子なんだろう。
声の主は俺に背を向けてその椅子に座っていた。
そして、椅子を回してこちらを振り向くとちょっとドヤ顔でこう言った。
「ようこそ生徒会室へ。よく来てくれたね」
「はぁ、呼ばれたんで」
「そうだったね。ところで……どうだった?」
「え、何がすか?」
「何がって、今の私の演出だよ! ほら、学園物のドラマとかアニメでよく見るシーンみたいだったろう? それっぽく無かったかな? ちょっと憧れてたんだ」
あぁ、どおりで全部演技くさかったのか。
「まぁ、いいんじゃないっすか?」
「君は私の心を遠慮なしにへし折ってくるね。泣くよ?」
知らんがな。
「ところで、生徒会室に呼ぶってことは、先輩は生徒会役員なんすか? その席って多分会長用とかっすよね?」
「いや、全然。会長でも役員でもないよ」
「え?」
何? どゆこと?
「生徒会室に来てくれ、ってセリフを言ってみたかっただけだ! 確かに私は容姿端麗で成績優秀な生徒だけど、二年から会長とかやるわけないだろ? マンガじゃあるまいし。ちなみに鍵は職員室から勝手に借りてきた」
だめだ。多分問題児だこの人。
「あ~えっと……、ならなんで俺を呼んだんすか? 後、先輩の名前もわかんないんすけど」
「その説明は、もう一人呼んであるからそれからだね」
もう一人? 誰だ?
その時、部屋をノックする音がした。
「おや、来たみたいだね。鍵はあいているよ!」
「失礼します。……っ! み、深山君!?」
中に入ってきたのは東雲さんだった。
東雲さんが俺を見てびっくりしたような顔をする。昨日のキスの後だからちょっと気まずい。
「え、東雲さん!?」
「なんで深山君が?」「なんだね?」
何故か後ろからも返事が聞こえる。
「いや、先輩じゃなくて東雲さんに言ってるんすけど……」
「だから、なんだね?」
なんだこの人。
「いやだから──」
俺がちょっと文句を言おうとした時だ。
先輩が立ち上がり、腰に手を当てて胸を張りながらこう言った。
「さて、改めて自己紹介をしよう。私は二年の【
……え? 俺は思わず東雲さんを見る。すると、
「私の……お姉ちゃんです……」
うそ~ん……。
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