第84話 とある義妹の観察と考察と発狂
どうも皆さんこんにちは。
私はあのデリカシー無し男、しょう兄ちゃんこと深山翔平の超スーパースペシャル超絶オメガ可愛い義理の妹、深山香帆です。
お母さんは中学の頃にはもうDカップだったと聞いてたから、私もそうなると思って買っておいたサイズのブラジャーはまだタンスの中です。
でもこの前、しょう兄ちゃんがそれを見つけて「どうせ使う機会なんてねえのに無駄遣いしてんじゃねぇよ。このブラを買う金があったら本当のサイズのやつを二つくらい買えるだろうが。キッズコーナーで」って無表情で、真顔で、なんの感情もない声で言ってきたのは絶対忘れない。こんな可愛い義妹がいるのに、全然女の子として見てこないのも許さない。絶対彼女さんにこのこと言ってやる!
と、言うわけで! 今日はしょう兄ちゃんの彼女にそんな悪事をバラしてやろう作戦の計画を練ることにします。でもその前にまずはその彼女さんのことを知らないといけません。
性格はともかく顔はまぁまぁイイのに今まで彼女が出来なかったあの兄にやっと出来た彼女。どんな人なのでしょうか?
まぁ、私より可愛いってことはないと思うけど〜。
てなわけで朝から頭おかしいんじゃないかってくらいにウキウキしているしょう兄ちゃんを見て、「これはデートだ!」と確信した私、名探偵香帆はすぐに着替えて尾行の用意。可愛い服を着ると可愛い私は目立っちゃうから地味なジーンズにジップパーカーという地味な格好で。それでも溢れ出る可愛さは隠れてなんとかするしかないけど。
「ふっふっふ。逃がさないからね〜。絶対その顔を拝んでやるわ!」
「あら香帆、そんな奇抜な格好してどこに行くのかしら」
「しーっ! お母さん? これは大事なミッションなの。香帆の義姉になるかもしれない人を見極めないとなの」
「…………そうなのね〜。がんばって」
ん? なんかお母さんの声から感情を感じないけど……あ、そっか。私に合わせてくれたんだ。さすがお母さん!
「まかせて! じゃっ!」
それだけ言うと私は、しょう兄ちゃんを見失わない程度の距離を保ちながら後を付いて行った。
「向かってるのは駅? そういえばどこかの割引券眺めてたよーな? まぁいっか」
同じ電車に乗って様子を伺う。
ちなみにしょう兄ちゃんの彼女の名前は東雲千衣子さんっていうみたい。苗字の読み方は【しののめ】名前は【ちいこ】で、彩月ちゃんに名前の漢字を見せてもらった時に読んだ【ひがしくもせん・ころもこ】じゃなかった。
この情報は私の親友の彩月ちゃんが教えてくれた。なんで彩月ちゃんが知ってるのかはわからないけど。
そういえば彩月ちゃん、兄ちゃんのことをすごい聞いてくるんだよね。なんでだろ。
そんなことを考えているうちに電車を降りた兄ちゃんの後を追う。
そしてどこかの店に入っていく。遠目にしか見れないけど、なんとか看板の文字は見えたからすぐにスマホで検索。
「イーストクラウド? え、ここ美容院じゃん。えーデートじゃないじゃん。つまんなーい」
デートだと思ってお小遣いから電車賃まで出して尾行してきたのに、まさかのオシャレムーブを見ただけなことに凹んだ私はトボトボと歩く。
トボトボと歩いた先になんかオシャレなカフェがあったから、こういうお店知ってると学校で自慢できると思って中へ。
そして一番安いジュースとドーナツを食べていると来客のベルが鳴り、なんとなく入口に目を向けるとそこには──
「んひっ!?」
めちゃくちゃ清楚系眼鏡美人な女の人と一緒に店内に入ってくるしょう兄ちゃんの姿! なんなの!? 変な声出たんですけど!
ってゆーかなにそのお互いモジモジしてる感じ!
え、兄ちゃんキモっ! キモーーーい!!
ってゆーか………
「でっっっっか……」
しょう兄ちゃんの彼女らしき女の人の、私とは天と地の差があるその大きな胸を見て、思わずそこに釘付けになってしまった。
「なにあれ。まじマウンテンじゃん。彩月ちゃん並じゃん。なんなの。やっぱり胸なの? 男は胸なの!?」
胸囲格差という現実にドーナツの味を失いかけた時、さらに私を襲う衝撃的光景。
それは……
「いくら義理の兄妹でも、自分の兄の『あーん♡』姿は見たくないよぉ……」
そこから先の記憶はありません。
気が付いたら家にいました。そして無意識のうちに今日の出来事を話したであろう私の目の前で微笑むお母さん。
その手にはスマホがあり、その画面にはとある動画が。
【自宅で出来る豊胸ストレッチ】
泣いた。
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