第36話 〇。〇〇ブルドーザー

 ~美桜視点~


 あ~ぁ、どうしてこうなっちゃったんだろ?



 深山が昼休みに入ってすぐに抜けちゃってからずっと、目の前の空気が殺伐としててやな感じ。

 二条さんも明乃さんも三枝が困ってるのなんで気付かないのかな?


 そんな二人同時にアーンとかしたって、食べれるわけないじゃん。周りの目とかもあるんだよ?

 ……って思ってはみるけど、ホントはちょっと羨ましい。美桜にはそんなことできないもん。


 昨日だって一緒に帰れるかも? って思ってたらこの二人が来て三枝を捕まえちゃった。そこに交ざる勇気もないから帰っちゃったけど……。


 それにこの二人、ホントに見た目しか見てない感じ。三枝の話とか全然聞いてなくて、二言目には「メガネ外さないの?」 「髪型やってあげようか?」とかで、後はずっと自分の事ばっかり。アピールするのはいいと思うけど、ちゃんと話も聞いてあげてよ。


 って美桜も人の事言えないけど。

 確かにメガネ外して前髪上げたときの三枝はカッコよかったんだよね。どうして今まで気づかなかったんだろう? ってくらいに。

 それを見てトキメいたのもホント。

 ただ、またメガネ姿に戻ってもカッコよく見えるようになった。

 だけど結局、美桜も他のみんなみたいに見た目で判断してたのかな? って思うと、自分が嫌になって気が引けちゃう。


 でも、前から話しやすくて、同じスマホのゲームもやってたからその話とかをするのは楽しかったし。たまに休んだりすると、つまんないなー? って思ったし。

 ……なんだか言い訳してるみたい。ホントやだ。

 これなんだろ? 美桜、三枝の事好きなのかな? 違うのかな? あーもうわかんないっ!


 そんな事考えて頭ぐるぐるしてたら、二条さんが箸を置いて、口元に人差し指当てながら首を傾げて(こんな仕草ホントにやる人いたんだ……)三枝にこんな事を聞いたの。


「三枝君って好きな人が……いたりするの?」


 って。

 もうね、凄かった。明乃さんなんて前のめりになりすぎて机におっぱい乗ってお弁当箱押してたもん。 ここに深山がいたら【おっぱいブルドーザーだ!】とかって言いそうだけど。

 美桜のじゃどんなに頑張っても無理だし。いいなぁ。

 ……あれ? あれれ? もしかして好きとか以前に美桜じゃ全然勝ち目ない!? 二条さんは胸は美桜と同じくらいだけど色白で、凄い髪も綺麗で可愛いし、明乃さんは綺麗でおっぱい大きいし……。

 美桜も髪……伸ばしてみよっかなぁ? 今日はなんとな~くお気に入りのシュシュでサイドテールにしてみたけど誰も何も言ってくれないし。

 ちょっとショボンな気分。


 ってそうじゃないっ! 三枝の好きな人、やっぱり美桜も気になる! いるの? いないの?


「す、好きっていうか、気になる人なら……」


 あ……いるんだ……。そっか。そっかぁ……。


「え!? 誰々!? 茜ちん教えてよぉ~! あ、ちなみにこのクラス!?」

「三枝君、私も気になるなぁ~」


 美桜も気になる。


「あ、いや、それはちょっと……言えないよ」


 ん? 今、美桜の方見た? もしかして……美桜の知ってる人なのかな? そういえば深山が、最近妹も一緒に途中まで来るようになったとか言ってたけど、もしかして好きな人って深山の妹さん? 前にちょっとだけ見たことあるけど、確かに可愛かったよね。昔からの知り合いなら好きになっててもおかしくない……か。


「ふぅ~ん。ってことはその相手があーしかもしれないって事もありえるよね?」

「明乃さん、言えないって言ってるんだからそんなにしつこく聞くの辞めたら? 」


 最初に聞いたの二条さんじゃん……。ほら、三枝の顔が引きっつってるの見えないの?


「はいは~い。まっ、あーしは茜ちんの趣味に理解あるからね? それだけは言っておくよん」

「私だってなんでも受け入れられるもの」


 はぁ……。また始まった。

 ホントに好きなら、好きな人にこんな顔させちゃダメじゃん。


「ねぇねぇ二人ともさ、そろそろお昼終わっちゃうよん? 次の授業、選択科目だよ? 二条さんも明乃さんも友達待ってるけど大丈夫かね?」

「「あっ!」」


 美桜がいつもみたいに少しふざけたような感じで言うと、二人とも同時に気づいて動き出す。


「じゃあ三枝君またね。今日は用事あるから一緒に帰れなくて残念だなぁ」

「茜ちんばいばい~♪ あーしも今日はバイトだや。あ、店にいつでも来ていいかんね? へへっ」


 そう言って二人とも席から離れていった。

 残ったのが美桜と三枝だけになると、三枝は大きく溜息を吐いてからこう言ったの。


「進藤さん、ありがとね」


 っ! な、なんで!?


「ん~? なんの事かなぁ? それにしてもすごいねぇ。あの二人はさ。三枝モテモテじゃん?」


 ほら、また美桜はこういう言い方しか出来ない。


「僕が困ってるの助けてくれたでしょ? だってまだ少し時間あるもの」

「ん、ん~? た、たまたまじゃないかな~?」

「あはっ、じゃあそういうことにしとくよ。そういえばさ、今日の髪型いつもと違うよね。 か、可愛いと思うよ?」

「……!」


 な、なんで変なとこだけ気づくかなぁ! そして髪型の事、今のタイミングで言うっ!? もうっ! ホントにもうっ! 顔があっついじゃん……。ズルいよ……。


 ◇◇◇


 そして放課後、二条さんも明乃さんもすぐに教室を出ていった。深山も和野もなんか無駄に真剣な顔してすぐに出ていっちゃって、残ったのは美桜と三枝だけ。


「あ、えっと……進藤さん部活頑張って。また……明日」


 そう言って教室を出ようとする三枝。

 その姿を見た瞬間、いつの間にか三枝の制服の裾を掴むなんていう、自分でも信じられない事をしていた。……え?


「し、進藤さん? どうしたの?」


 え、ちょっと待って。なんて言おう……。何を言えばいいの?

 思考がまとまらないままで出た言葉は──


「あ……えと……今日さ? あの……今日も部活無いんだけど……良かったら一緒に……帰ろ?」

「あ、うん……。じゃあ……一緒に帰ろっか?」


 ~~~~~~!


 ねぇ、どうしよ? 顔が……見れないよ……。



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