第74話 その日は家族いないって言っても絶対に邪魔が入るやつ。え?違うの?

 そして昼休み。俺はどうしても気になってしょうが無かったことを聞いてしまった。


「なぁ、茜。お前ら戻ってくるまでに何してきたんだ?」

「な、ななな何って?」

「な、ななななにもしてないよ!? ね? 茜くん?」

「そ、そうだよ! 何言ってるんだよ翔平! まったく……なにもしてないよね? 美桜ちゃん」

「うん! うん! 全然なにも……な……にも……あぅ」


 おぅふ……。聞くんじゃなかった。砂糖吐きそう。絶対ナニかしたんじゃん。

 なんだお前ら。心配したのが馬鹿みたいじゃねぇか。末永く幸せになりやがれ!



「っていうことがあってさ。あいつらのイチャイチャっぷりにピンクの煙吐くところだったや」

「す、すごいですね……。付き合ったばかりなのに……」

「展開の速さにさすがの俺もついていけなくなってきたよ。まぁ、無事くっついたから後はあいつら次第だな」


 そして今は放課後。いつもの教室で委員会の仕事をしながら俺は千衣子と話していた。


「深山くんもその……」

「ん?」

「三枝くん達みたいに……その……いちゃいちゃしたいですか?」

「ん〜? 憧れはあるけど、別にそこまでじゃなくなったかな? 茜達をみて思い直したから。それに千衣子とはココで充分にイチャつけるし?」

「…………」

「千衣子?」


 どうしたんだ? 下を向いて黙っちゃったけど。


「……深山くん。膝に座ってもいいですか?」

「っ! え、あ、い、いいけど」


 なんだ? どうしたんだ? いつもは滅多に自分からそういう事言ってこないのに。


「失礼します」


 そして千衣子は俺の膝の上に座ると、背中を俺に軽く預けてきた。


「私、深山君のこと本当に好きです」

「お、おう」

「深山くんも私の事、好きなんです……よね?」

「当たり前だろ?」

「本当の本当の本当に好きだって信じていいんですよね?」

「ち、千衣子? どうした?」

「それなら……キスしてください。今すぐ」

「え、えぇ?」

「早く!」


 振り向きながら真剣な顔でそう言う千衣子。俺はそれに応えるようにキスをした。


「うん……大丈夫。きっと大丈夫……」

「どうしたんだ? いきなり」

「…………深山くん、今週の土曜日はなにか予定ありますか?」

「いや、なにもないけど」

「なら。それなら……その日、私の家に来ませんか?」

「家に? あ、前に言ってた夕飯のお誘いとか?」

「それも……あります」

「ん? それも?」


 すると千衣子は立ち上がり、カバンを持ってドアの近くまで行って足を止めた。


「その日、お姉ちゃんもお母さんもいないんです」

「……へ?」

「私、今のキスで覚悟できましたから……」

「え、ちょっ……覚悟って……」

「私を全部深山くんにあげる覚悟です」

「っ!?」


 え? へ? 待て待て待て! それって……


「今日は先に帰ります。土曜日、待って……ますね」

「あ……」


 千衣子はそれだけ言うと教室から出ていってしまった。僅かに見えた頬と耳を真っ赤にしながら。



「……………………まじで?」

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