惚れるとデレちゃう隣のクラスの地味子ちゃん(旧題)陰キャ扱いされている俺の幼馴染みが眼鏡外して前髪上げたらイケメン扱いされてるけど、お前ら頭おかしいんじゃねぇの?
第75話 男の子が言われたいセリフ。ホントに言われるとどうしていいかわからないセリフ
第75話 男の子が言われたいセリフ。ホントに言われるとどうしていいかわからないセリフ
今日は金曜日。千衣子との約束の日は明日。俺の頭の中は千衣子のあの言葉を聞いて以来、常にピンク時々ピンク。水曜日の放課後に言われて今日まで二日間ずっとだ。
少し目を閉じるだけで想像できる。ビデオ通話で見たあのベッドの上に寝そべる千衣子。髪の毛はバラけて拡がり、頬を赤く染めた千衣子が恥ずかしそうによそ見をしながら小さく頷き、ボタンを一つずつゆっくりと外して──
「あぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!??」
だ、駄目だ! それ以上想像してはいけない。見たことないものを勝手に想像して汚してはいけない。
実際にこの目で見るまでは許されない。
これこそ愛! だから頭に浮かべるのは学校での千衣子の姿にしよう。
そう、あれはその日の夜の事だ。千衣子とはまるで何事も無かったかのように普通に電話で話した。夕飯は何を食べたかとか、テスト勉強はちゃんとしているかとか。
俺は少し拍子抜けして、もしかして千衣子の事が好きすぎるゆえの幻でも見たのかと思ったのに、電話を切る寸前、
『あと……二日ですね』
だって。
「あはぁぁぁぁぁっ!!!」
こ、これも思い出したらダメだ……。違うこと違うこと……あ、そうだ。学校でのことにしよう。
確か次の日は、なにか用事があるとかで千衣子が学校に来たのは午後からだったんだよな。その日は茜と帰る約束があったからほとんど会えなかったんだ。
そして今日。いつも通りに迎えに行ったら、普段は俺から繋ぐ手を千衣子から繋いできて、昼休みは珍しく一緒に食べたいって言うから花壇の所でアーンしてもらって、帰り道は何故かいつもより離れて歩いてるのが不思議で顔を覗いたら真っ赤になってて、理由と聞いたら──
「ふ、普通にしようと思ってたのに……ダメですね。どうしても色々考えちゃって顔が熱くなっちゃいます。明日……ですもんね。その……待ってますね?」
って言って走って駅に入っちゃったんだよな。
…………。
「色々って何を考えてたんですかねぇぇぇぇ!?!!??」
「ちょっとしょう兄ちゃん! さっきからうるさいんだけど何なの!? 推しの配信が全然聞こえないから静かにして!」
しまった。気持ちが昂りすぎて心の叫びが隣の部屋まで聞こえてたみたいだ。まぁ、香帆だからどうでもいいんだけど。
「ん? おぉ、すまん。ちょっと俺の俺が俺でな?」
「頭大丈夫?」
「お前よりはな」
「む、むかつく……!」
「つーかお前配信とか見てんのか? 何見てんの? 男か? お前じゃどう足掻いても付き合えないような男のか?」
「ち、違うし! モデルの女の子だし!」
「あ、俺トイレ行くからそこどいて?」
「また!? そっちから聞いたくせにスルーするの何回目だと思ってんの!? コラー! たまには構え〜!!」
お? 香帆が自分から構って欲しいって言うのすげぇ久しぶりだな。しょうがない。今日の俺は優しいから構ってやるか。少しだけな。
「カホ。オレ、アシタ、カエラナイ」
「…………へ? 帰らないって?」
「カエラナイ」
「もしかして茜くんの家に遊びに行くの? ズルい! 私も行く!」
「…………チガウ」
「え? もしかして……彼女の家、とか?」
「…………」
「ま、待って? 待って! 嘘でしょ!?」
「オヤスミ」
「あっ! ちょっ! なんで追い出すの!? なんで鍵閉めるの!? ちょっと!? なにか言ってよ!」
「あ、そうそう。茜なんだけどさ」
「あ、茜くんがどうしたのよ!?」
「先週彼女ん家泊まったってよ」
「う……嘘でしょぉぉぉぉ!? ふえぇん! お母さぁぁぁぁん!!」
よし、静かになった。明日の為に今日は早く寝よっと。
◇◇◇
そして翌朝。俺は泊まるための物を詰めたバッグを持って千衣子の家の近くの駅で降りた。
「深山くん!」
するとすぐに声をかけられ、振り返るとそこには──
「えっ?」
「ど、どうですか? この前学校を午前中休んだのは実は……コレを買うためだったんです」
いつも結っている髪を下ろし、普段はしない化粧をした、メガネをかけていない千衣子が立っていた。
「え、あ、えと……すげぇ可愛い……」
「ふふ、ありがとうございます♪ 良かったぁ」
「コンタクト、買ったんだな」
「はい♪ だって今日は──えっと……その……」
「あ〜うん。わかってる」
「あぅ……。ではその……行きます……か?」
「う、うん」
そのまま何となく無言のまま歩く。そして千衣子の家が見えてきたところで隣から袖を引っ張られた。
「どした?」
「あの……お母さんもお姉ちゃんも明日の夜まで帰ってこないんです」
「……うん」
「だから……それまで一緒にいてくださいね?」
ヤバい。顔が……熱い。
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