第76話 一緒にお風呂って……一緒にお風呂ってなんだ!?

 千衣子に案内されて勝手口から家の中に入る。前に来た時は、客として店内にしか入ったことなかったから変な感じだ。


「どうぞ、あがってください」

「おじゃまします」

「えっと、とりあえず私の部屋に行きます……か?」

「あ、はい」

「ふふっ、なんでそんなに畏まってるんですか?」

「いや、女の子の部屋に入るのって初めてでさ。なんか緊張するんだよ」

「そんなこと言われると私も緊張しちゃうじゃないですかぁ」


 そう言いながら髪をクシュっと握る千衣子。可愛い。もうヤバい。耐えろ俺。


「私の部屋、こっちです。少し階段が急なので気を付けてくださいね」

「りょ〜かい」


 俺を惑わせる罠は階段にもあった。俺の前を登る千衣子のスカートがひらりひらりと揺れ、中が見えそうで見えない。かといって覗く訳にもいかない。付き合ってるから見ても許してくれそうな気もするけど、それはまだ早い。だけどチラチラ見える太ももからは目が離せない。もうホントズルい。


「ここです。あの、中に入ってもあんまりキョロキョロ見ないでくださいね? 急いで片付けたから所々適当になってるかも……」


 ドアが開けられた瞬間、いい匂いが鼻をかすめる。これは千衣子を抱きしめた時の匂いと一緒だな。

 中に入るとビデオ通話の時に後ろに写ってる小物や棚が見えた。いつも画面越しに見てた場所に自分の足で立ってるって思うと、なんか嬉しい。


「全然綺麗じゃん。俺も千衣子を部屋に呼ぶ前に掃除しないとなぁ」

「あ、それだったら私、掃除手伝いますよ?」

「まじで? ならお願いするかな〜……あ、いや、待った」

「なんでですか〜?」

「いや、その……」

「見られたくない本とかあるんですね? ソレ、浮気ですよ?」

「いっ!? 別に浮気ってわけじゃ……え? まじで?」

「冗談で〜す♪ あ、私飲み物とか持ってきますね。そこに座って待っててください」

「へ? あ、うん」


 さて、千衣子が下に降りていって現在この部屋には俺一人。この家には俺と千衣子の二人きり。視線はどうしてもベッドに向いてしまう。


「今夜、ここで……いやいやいや! まだそうと決まった訳じゃないよな。うん。……でも全部あげる覚悟って言ってたしな……。あーくそっ! 静まれ俺の煩悩!」

「深山くん……」

「うおっ! いつの間に……」

「あの……全部聞こえてますよぉ……」

「…………」

「…………」


 ヤバい。めっちゃ気まずい。千衣子なんか耳まで真っ赤だ。どうしようコレ。


「えっと……コーヒーとお菓子です」

「あ、うん」

「もう少ししたら、お昼ご飯食べにいきませんか?」


 ナイス提案! このまま部屋にいたら色々ヤバそうだ。主に俺が!


「そうだな! まだ夜までは時間あるし」

「よ、夜……ですか……」


 あ……。



 ◇◇◇



 それから微妙な空気のまま二人でコーヒーを飲み、ちょうど昼になった所で家を出た。


 昼食は前にも行ったことのある店。少しからかわれたけど、混んできたこともあって俺たちに構う暇が無くなったらしい。助かった。


 食べてるうちにさっきまでの気まずさは無くなっていつも通りに。家に戻ってきてからはリビングでネット配信の映画を見たり、夕飯を作る千衣子の姿を見て過ごした。

 手伝おうかと思ったけど、自分一人で作ったのを食べて欲しいという可愛いお願いに俺は死にそうになった。


「えっと……おかずは出来たんですけど、ご飯炊くのを忘れてました。なので、さっきちょうどお風呂湧いたので先に入りませんか?」

「あ、うん。でも俺が先に入っちゃっていいの?」

「いえ、あの……えっと……一緒に、入りませんか?」

「あぁ、一緒にね。わかった。いいよ……ん? 一緒に? え?」

「…………はぃ」



 ……………えぇっ!?





 ★★★

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