第9話 承認欲求の塊チョロイン
風呂から上がって今は夕食。
今夜のメニューはお好み焼きらしい。見た目がもんじゃにしか見えないけど、美帆さんはお好み焼きって言ってたからお好み焼きだ。
なのに香帆がお好み焼き(仮)を指さして真実を告げた。
「お母さん、これもんじゃみたい」
あぁっ! 言っちゃった!
俺も言うの我慢してたのに!
「ちょっと失敗しちゃったのよ。いいから食べなさい。食材を無駄にしちゃダメよ」
美帆さんがそんな事を言う。
美帆さんは、パーマのかかったセミロングの髪で、おっとりとしたタレ目の優しそうな顔だ。ちなみに、ラノベによくある女子高生でも通用するような超美人っ! って感じではない。歳の割には綺麗だなぁ~って思うくらいの普通のお母さんだ。
ちなみに、何故香帆に遺伝しなかったのかが不思議な位の巨乳。今も付けているエプロンがたわんで谷間に挟まりそうになっている。
初めて再婚の話を聞かされた時、親父に一つだけ確認した事がある。再婚するって事は好きになったって事。ならちゃんと理由があるはずだ。
俺の本当の母親とは、俺がまだ小さい頃に別れたって聞いていた。これだから女はっ! って昔言ってたしな。
それが今になって再婚するってことは、余程惹かれたモノがあったんだろうと思って聞いてみたんだ。それに対しての親父の答えは、
「最初は、
「最初はグーみたいに言うなっ!」
さすが俺の親父。
俺はその後、おめでとうしか言えなくなったのを覚えている。
「しょう兄ちゃん、何お母さんの胸見てんの?」
「見てねーよ」
おっと、いかんいかん。
「うそ! 見てた! えっち!」
「アホか。自分の母親だぞ? そんな目で見るわけねーだろ。あえて思うことがあるとしたら……」
「したら?」
俺は思いっきり溜め、遠くを見ながらゆっくりと口を開いた。
「遺伝しなかったんだなぁ……と」
「ぶっ叩く!」
「香帆、食事中でしょ? 落ち着きなさい」
「だってぇ!!」
「香帆だってさっき翔平くんのお尻見たでしょ? それでおあいこよ?」
何がどうなっておあいこなのかは分からないけど適当に同意しておく。
「そうだそうだ。つーか俺に女の子扱いとか可愛いって思われてどうすんだよ。はっ! まさか俺の事好きなのか!? もしかして朝一緒に行きたがるのもそれか!?」
「馬鹿じゃないの? そんなわけないじゃない。私達兄妹なのよ? 頭おかしいんじゃない?」
お前さっき他人とか言ってなかったか? 手のひらクルンクルンはダメだぞ?
俺がそうツッコもうとすると、香帆が無い胸に手を当てて声高々に宣言した。
「私はね、みんなに可愛いって思われたいし、言われたいのよっ! それに朝一緒に行きたいのは、しょう兄ちゃん顔はイイから友達に自慢出来るもの! それ以外に理由なんて無いわっ!」
すげぇ……ここまで堂々と言う奴マンガ以外で初めて見たわ。
ほら、美帆さんも口ポカーンとしてるし。
「美帆さん……これ……」
「小さい頃から可愛い可愛い言いすぎたせいかしら?」
「いや、多分そういう問題じゃないと思いますよ。これは」
「「う~ん……」」
◇◇◇
そして次の日の朝。
──ピンポーン(以下略)
「じゃあ美帆さん、茜が来たんで行ってきます」
「えぇ、行ってらっしゃい」
「あ、私も行く!」
「なんでだよ」
「昨日見たのがあの陰キャなんて信じらんないもん。自分の目で見て確認しないと」
こいつは……。何も変わってないって昨日から何度も言ってんのに。
「はいはい。勝手にしろよ」
「言われなくても」
そうして俺達は一緒に玄関に行くと、昨日と同じ様に茜が立っていた。
「よう! おはようさん。なんだ? 昨日のまんまなのか?」
「翔平おはよ。なんかね、眼鏡に戻そうとしたら姉さんに止められたんだ。だからコンビニまではこのままで行くよ。そこで眼鏡に戻すつもり。あっ、香帆ちゃんもおはよう」
「…………」
返事がない。
「おい、あいさつぐらい返せよ……香帆?」
「……ヤバい……超ヤバい」
「はっ?」
「……超タイプ」
うそだろ!?
そこには頬を赤らめて、ポーっと茜を見つめる香帆の姿があった。
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