第4話 陰キャ(美)少女

 さて、今は昼休みだ。

 いつもなら茜を含めた仲が良いメンバーと数人で飯を食うんだが……。


「三枝君髪切ったんだね! イイと思うよぉ!」

「え、えっと……」

「メガネはどうしたの? 無くても大丈夫?」

「コ、コンタクトを……」

「まさかお前がこんなイケメンだったとはなぁ」

「い、いや、そんな……」

「ねぇねぇ……」


 茜の周りには人だかりが出来ていた。それはもう机の周りにうじゃうじゃと。割合的には男三割、女七割ってところか?

 昨日までは見向きもしてなかったくせにな。

 ちなみに俺の友達もその集団に交ざって行ったから、俺は一人でコーヒー飲みながらその風景を眺めていた。


 ちなみに教室のどこにいても聞こえてくる声は全て茜の話題。他のクラスや上級生にも伝わってるみたいで、廊下から覗く奴もいるくらいだ。まぁ、ほとんど女だが。

 アイドル扱いかよっ! って感じ。


 それにしてもうるせぇなぁ。

 そう思ってふて寝でもしようと思ったその時、俺に声をかけてきた奴がいた。


「あの……」


 あぁ!? なんだよっ! って……え?

 ちょっと待て……。

 なんだこの子。すげー可愛いんだけど……。いや、美人か? やっぱ可愛いか? あーもうどっちでもいいや!


 黒く長い髪。それを二つに結って前に垂らしている。眼鏡の奥に見える大きくクリっとした目。制服の上からでもわかるスタイルの良さ。身長は俺より頭一つ分低いか? 150ちょいくらいかな。

 そして小さな桃色の唇。そこから漏れ出す控えめだけど耳に残る声……。ヤバい。こんな子居たのか!? この高校に入学してから二ヶ月経つけど初めて見たぞ。


「あの……聞こえてます?」


 俺は目の前の彼女に見とれてしまい、コクコクとひたすらに頷く事しか出来ない。


「そう……ですか。あの、同じ委員会ですよね? 今日、私と当番なので放課後宜しくお願いしますね。場所は校舎脇の倉庫です」


 コクコク


 俺はまた頷く。彼女はそれを確認した後、「そう……よね。私なんかと話したくもないよね」って小さく呟くと、軽く会釈をして教室から出ていった。

 その時フワリと香る匂いにまたしても心を奪われる。あの子……誰なんだ?


 つーか違うんだっ! 話したくないんじゃない! ただ見とれてただけなんだよ! これは放課後ちゃんと説明して謝らないと……。でもなんて説明すればいいんだ? 『見とれてました!』じゃただのナンパ野郎だしな……。おぉ? これはまじでどうしよう……。


 俺がそんな事を考えていると、また訳分からん声が聞こえる。


「ねえ、今のおさげ眼鏡地味子誰?」

「さあ~? ウチらのクラスじゃないよね?」

「前髪長すぎウケる! 陰キャ女子じゃん」

「ね~!」

「確か隣のクラスじゃなかった? うろ覚えだけどさぁ~」


 ……は? ちょっと待て。茜だけじゃなくて、あの子もそういう扱いなのか? お前らの目はどうなってんだ?


 いや、それは後で考えよう。俺はしっかり聞いたぞ。あの子は隣のクラスか。まだ名前も知らないけど、放課後の作業通じて仲良くなれるといいんだけどなぁ……。



 あれ? 俺の委員会ってなんだっけ??



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