第22話 その谷間に埋もれた(かった)
「いや……凄かったな……」
「うん……」
「あの胸はヤバかった。埋まりたい」
「そこなの!?」
俺と茜は帰りながらコスプレ喫茶での事を思い出しながら話していた。
ちなみに明乃の身の上話は聞いてない。ちょうどそこで頼んでた料理が届いて、食べ終わった頃に茜の姉さんから電話が来たせいですぐに帰ってきたからだ。
まるで測ったかの様なタイミングだった。
まぁ、ぶっちゃけ下手に聞いて厄介事とか勘弁だしな。そういうのは青春活劇でおなしゃす!
っても結局巻き込まれそうだけどな。茜が。と、いうわけでだ!
「なぁ茜~」
「なに?」
「二条といい明乃といいさぁ、明らかにお前には好意持ってるけどどうすんの?」
「えぇ!? そうなの!?」
はい来たこの鈍感っ子。
だと思ったよ。だから俺は気付かせる。
ラノベでよく見る、「俺はコイツが選んだ事を信じる」なーんて見守るタイプの、人が良い友人枠なんてありきたりでつまらないだろ? だから俺は見守りつつ、面白い方にシフトする!
さて、どう答える? 選べなくてハーレムみたいなのだけは止めるからな。さぁ、どう答える!?
「え、えっとさ……。翔平、ちょっと聞いて欲しい話があるんだけどいいかな?」
「ん? いいけど?」
「僕さ……」
な、なんだ? やたらと神妙な顔して。
「進藤さんの事が……ね? 気になってるっていうか好きって言うか……」
…………………は?
茜が進藤を? ってこないだの昼休みの変な雰囲気ってガチだったのか!?
「だから、ありえないとは思うけど、もしホントに二人が僕に好意を持っててくれたとしても、どうしたらいいのか……」
さすがにこれは予想外過ぎて俺もどうすればいいのか……。
「あ~そうかぁ~。お前が進藤をねぇ~。でもなんでだ? なんかキッカケでもあった?」
「キッカケがあったとかじゃないけど、ちゃんと僕の話も聞いてくれるところとかかな? そして、こないだ冗談で僕に付き合う? みたいな事言ってきたじゃん? それで、もしホントに付き合えたらなぁ~なんて思っちゃって。はは、相手にされるわけないとは思うんだけどね」
なるほどね。よし、ならば俺は全力で応援しようじゃないか! だけど、どうすればいいんだ? 無理にくっつけたりするのも違う気がするしな……。う~む。
「まぁ、そんな考え込まないでよ。聞いて欲しかっただけだからさ」
「ん~そうか? まぁ、俺に出来る事があるならなんでも言えよ?」
「うん、ありがと」
◇◇◇
そしてその夜、俺のスマホに着信がきた。
表示は【進藤 美桜】なんつータイムリーな。
「あいよ、どうした?」
『あのさ……。三枝と二条っていい感じなのかな? なんかちょっと気になっちゃって……』
いや、まさか……お前も!? 俺、何もする事なくない!?
なんでお前らそんなラブコメやってんの!?
ずるい!
◇◇◇
そして翌日。その日は香帆が寝坊して一緒に歩く事は無かった。
更に、学校に着くまでも特に誰にも会わず、そのまま教室に入る。
また二条と明乃が茜の所に来るかと思ったけど、何故か二人とも距離をとっている。
なんだ? 二人とも昨日の強引さはどこいった? その時、
「あ、二人ともおっはよー!」
「おう!」
「おはよう。進藤さん」
変わらないのは美桜だけか。昨日あんな事言ってたから少し態度に変化が出るかと思ったけど、そんなこと無くてよかった……のか?
と、そこで廊下から声がする。
「深山くん」
東雲さんだ。俺は茜達に一言かけてから東雲さんの元に向かう。しかし、
「おはよう東雲さん。どうした……おわっ!」
突然横から出てきた足につまづくと、そのままバランスを崩して東雲さんに向かって……
「ぐっ!」
「へ!?」
しっかりとその胸に……鼻先が触れる程度の所で何とか踏みとどまる。
あっぶな……。あぁ、でもちょっと惜しいことしたかも? な気持ちもあるのは否定しない……。東雲さんも結構おっきいもんな。あれにつつまれたら……っとそれどころじゃねえや。
「ご、ごめん。コケた。ちょっと当たっちゃったけど……大丈夫?」
「は、はい。大丈夫……です」
「なら良かった。要件はなんだった?」
「あ、それですけど、今日の放課後委員会だそうです。けど場所わからないですよね? 授業終わったら迎えに来ますから、教室で待っててください」
「おっけ。ありがとね」
「いえ、それでは」
東雲さんがいなくなると俺はすぐに横を向いた。そこに居たのは取り巻きと笑顔で話す二条。廊下側一番前の席はこいつの席だからな。
「なぁ二条、そうやって足出してると危ないぞ? 踏まれるかもしんないし」
「ふぇっ? あっ、ごめんね深山君。ついウッカリ……大丈夫だった? 教えてくれてありがとう」
「どいたま~」
それだけ言って俺は自分の席に戻る。
……ホントにウッカリか? あのタイミングで?
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