第5話 陽キャの土いじりギャップ萌え
さて、放課後だ。
つーわけで俺は今、あの子に言われた場所である校舎脇の倉庫に来ている。
まだ俺一人だ。チャイム鳴ってすぐ来たからな。早すぎたか?
ちなみに自分が入ってる委員会がわからなくて担任に聞きに行ったら(説教付き)、どうやら美化委員とのこと。一体どんな作業するのか検討もつかない。
美化ってなんぞ? 美しく化けるのか? そんな事を考えながらぼーっと立っていると後ろから声がかかる。あの子だ。
「……来たんですね」
「あぁ。来いって言われたからな」
「……言われなきゃ来ないんですか?」
「あ、いや、そういう訳じゃなくてだな……」
「別にいいですよ。他の委員の人もやったって言いながらやったフリとかで、まともに作業してるの私くらいですし」
彼女はそう言いながら倉庫の扉に手をかける。手をかけて……動かない。どうしたんだ?
「どうした? 開かないのか?」
横から覗いてみると……俯きながら唇をキュッと結び、顔を赤くしてプルプルしていた。え、なにコレ可愛いんだけど。
「か、鍵を忘れました……。今取ってきます」
そう小さく呟いて職員室の方に向かおうとする。ん? ちょっと待てよ? 鍵……
「あっ!」
「ひぅっ! な、なんですか!?」
俺は自分のポケットの中を漁り、変なキーホルダーの付いた鍵を出す。そう言えば担任から渡されてたんだった。
「えっと、もしかして鍵ってこれか?」
「あ……それです。なんで持ってるんですか?」
「いや、来る時に担任に渡されてな。今思い出した。なんでだろうな?」
「……それは、深山君の担任の先生が美化委員の担当だからですよ。そんなこともわかってなかったんですか?」
ジロリと睨まれる。う~ん、睨んでるんだろうけど、身長差もあってか上目遣いに見えて可愛いと思ってしまう。この子の仕草がいちいち反則。
「あの……」
すると彼女はそう言いながら手を出してくる。
「ん?」
「鍵、貸してください」
「あ、あぁ悪い悪い。はいどーぞ」
俺が鍵を渡すと、すぐに倉庫を開けて中から小さなスコップを出した。
「なぁ、何やるんだ?」
「今日は花壇から鉢植えに花を移すんです。その後土をならして、新しい苗を花壇に植えます」
「うへぇ……」
「そんな嫌な顔してもダメです。来たんですからちゃんと作業してください」
「わーかってるって。ほら、腕まくりもしたしな」
「……じゃあそこの花をお願いします。あまり根っこを傷つけないように」
「へいへーい」
そこからしばらく無言での作業が続いた。花を掘っては鉢植えに入れ替えて、空いた穴に新しく土を入れて慣らす。初めてやる作業だったのもあってか、なんか面白かった。
「意外ですね……」
「ん~? なにが~?」
突然かけられた声に手を止めて横を向くと、彼女は俺の手元を見ていた視線を少し上げて話しかけてくる。ちなみに目は合わせてくれない。
「深山君はもっとイヤイヤやるのかと思ってました」
「いやぁ~これが中々面白くてな! なんつーの? 子供の頃の砂遊び的な? わかる?」
「その感覚はわかりませんけど、面白いって言うのは同意します。手をかければかけた分答えてくれますから……」
「そういうものかね?」
「そういうものです」
あ、そういえば……。
「あのさ、ちょっといい?」
「な、なんですか?」
「名前教えて?」
「……はい?」
おや? 何やら怒ってるオーラが伝わってくるような? 気のせい?
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