第18話 ギャルが実は……は定番。でも好き

 香帆と別れ、学校についた俺達が教室に入って席に着くと、ソレは起きた。


「あ、茜ちんさぁ……ちょ、ちょっといい?」

「えっ?」


 パリピ女子グループの一人、【金髪Gカップの紫織しおり】が茜の目の前に現れた。

 ちなみに本名は明乃あけの紫織しおりだ。パーマのかかった金髪ロングにゴテゴテの化粧。

 そして茜の事を陰キャ陰キャと馬鹿にしていたグループの筆頭。聞いた話だと、駅前にあるでかいビルの明乃不動産はこいつの親が経営していて、そのおかげでマンションに一人暮らしで週末はパーリナイらしい。

 まぁ、なんてふしだらっ! ってもホントかどうかはわからないけど。確証が無いことで騒ぐのは嫌いだしな。


 で、一体茜に何の用なんだ? そして動く度に胸がプルンタプンユサッと躍動するは何故だ? そこだけ重力の崩壊か?

 横目で凝視していると、明乃は長い髪を指でくるんくるんしながら茜の机に片手をつきながら口を開いた。おかけで胸元も開いて見える。黄緑か。中々可愛いの付けてるじゃないか。


「あ、あのさぁ……えっと……」

「う、うん」

「これっ! 昨日のお礼だからっ! あーしのパパのビルのテナントに入ってる店の無料券。お願いして貰ってきたからっ!」


 そう言ってポケットからなにやら券の束を出す。いや、厚くね? 一体何枚あんだよ。

 つーかそこは谷間から出すものかと思って期待した俺の気持ちをかえせ!


「えっ? えっ?」

「き、昨日あーしがヤバい男にホテル連れ込まれそうになってたの助けてくれたじゃん……」

「あ、あの泣いてる子、明乃さんだったの……。あれ? でも確か髪も黒くて長さも……」

「ふぇっ!? ……あぁっ! 昨日は だった! えっとえっと……昨日見たのは忘れて? お願いっ! あーしの威厳が……」

「うん、いいけど……」

「あ、ありがと……」


 ほう、【そっち】とな? いわゆる二面性ってやつかな? うん、嫌いじゃない。

 そして茜はいろいろ助けすぎ。なんでそんなに事件に巡り会うのか不思議でしょうがないんだけど。マンガとかアニメならともかく、ここは現実だぜ?

 そして明乃よ。なんでそんなに頬を染めてるんだ? 頼む、やめてくれ。まさかだよな? そんなハズはないよな? お前もメガネ外したバージョンの茜にはグイグイ行ってたけど、戻した途端に興味薄れたよな? おい、なんか言ってくれ!


「茜ちんってさ、強かったんだね……もやしっ子かと思ってたからびっくりしちゃったよ」

「え、いや、そんなことないよ。空手とかやってる姉さんに比べたら……」


 それはわかる。香澄さんまじでヤバい。一瞬で目の前から消えるからな……。


「だって、助けてくれる時に抱き抱えてくれたっしょ? その時腕とか胸元も固くて……あぁ、あーし守られてるんだなぁ……ってなったし……だから……」


 おいおいおい! 目がなんか潤ってきたんですけどぉ!? なんでモジモジしてるんですかぁ~!? 嘘でしょ!?

 つーか、だから……ってなんだよ! お前何言うつもりだ!?


「ホント……カッコよかった……今のままでも……」


 あぁぁぁぁぁっ!! 言いやがった! こいつも言いやがった! 昨日の二条と一緒じゃねぇか!


「えっ!?」


 その時、茜が驚くと同時に教室に他のパリピ女子が入ってきた。


「あれ? しおっち陰キャと何話してんの?」

「あえっ!? い、いや、何でもないって!」


 明乃はそいつらの方に体を向けて返事を返すと、茜の方に顔だけ向けてこう言った。


「じゃあ……まぁ、そういう事だからっ! 絶対その店来いよな! なんなら今日来てもいいからっ! じゃあ、あーしは行くから! 」

「え、あ、うん。ありがと」

「……ありがとはあーしのほうだっての……」


 明乃はそうボソッっと言うと、耳を真っ赤にして、ユッサユッサさせながら仲間の所に歩いて行った。

 なんだこれ。俺は何を見ている?

 茜、お前は一体昨日本屋で会うまでにどんな事してたんだ!?


 俺がその事を聞こうとした瞬間……


「あ、三枝君……おはよっ♪」


 入れ替わりで今度は二条がやってきた。

 ……なんだよこれ。

 アイドルの握手会かよ……。

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