第40話 一目惚れ?いんや、二目惚れか三目惚れ?

 千衣子が話を続ける。


「その日、私は一番上のお姉ちゃんとショッピングモールに買い物に行ってたんです。あ、今日あった姉の上にも、もう一人姉がいるんです。それで、買い物終わって帰る時に見たのが、深山君のクラスの二条さんがなんか怖い人達に絡まれてるところでした」


 三姉妹!? 今日会った先輩はキャラが濃かったけど、もう一人はどうなんだろ?

 んで、モールの話って事はあの時か。あの時の茜は凄まじかった。

 三人相手に一撃も貰わずに昏倒させてたもんな。全員アゴに貰って立てなくなってたっけ。けど、それがなんの関係が? 俺、なんも活躍してないけど?


「それでメガネを掛けた人があっという間に倒してしまいました」

「茜……だな」

「ですね。それを知るのは後からでしたけど」

「後から?」

「はい。私はそのメガネの人より、一緒にいたもう一人の人の事が気になってたんです」

「……俺?」

「そうです。あの時、深山君は三枝君に倒された人達の事もちゃんと介抱してたじゃないですか? それにすぐに店の人を呼んでの事情説明に、二条さんと一緒に絡まれて怯えてた子達の事も気にかけて、変なポーズとかとって笑わせてたりしましたよね?」


 ……介抱出来たのは、慣れてたからなんだよな。あれが初めてじゃなかったし。

 つーか……あの勢いでやったやつを見られてたのか!? 泣きそうだったから必死だったんだよ! 恥ずかしいっ! そういや、助けたのが二条ってのは最近知ったけど、一緒にいた二人は未だにわからんな。他の高校か?


「それを見て、手際も良くて優しい人だなぁって思ってたんです。あのポーズ……ふふっ。今思い出しても面白くて」


 止めて。恥ずか死ぬ。


「それで次の週学校に行った時に、廊下で深山君を見かけて、「あっ! あの人だ!」ってなったんです。それから少し気になってるところに先生から委員会の仕事の話を聞いて、もう一人の一年生の名前もそこで聞きました。それで顔がわからなくて更に聞いたら、集合写真を見せてもらって、それが深山君だってわかったんです」

「そうだったのか……」


 まじか。


「そして、本当は一人で委員の作業するつもりだったんですけど……」

「けど?」

「深山君と話をしてみたくて、頑張って誘ってみたんです」

「そっかぁ。それが無かったら今みたいに話してる事も無かったんだな」

「そうですよ? だからあの日の放課後、倉庫の前まで行って深山君の姿を見た時は嬉しかったんです。来てくれないと思ってたから……」

「行かないはずが無い! だって俺は、その話をしに来た時の千衣子に一目惚れしたようなもんだからなぁ」

「……へっ!? だ、だってあの時の私、ちゃんと喋れてなかったし、深山君も頷くだけだったし……」


 確かにそうだった。あぁ、そう言えばその事ちゃんと説明してなかったな。言ったらどうなるかな? またきっと慌てるんだろうな。

 だけど俺は敢えて言う。思ってる事はまずは言わなきゃ伝わらないからな。


「それは千衣子に見惚れてたから」

「は、はいぃっ!?」

「いきなり目の前にめっちゃ好みの美少女が現れたもんだからなぁ。その姿に見惚れて返事出来なかったんだ。それで、頷く事しか出来なかったんだ」

「えっ、あっ! その……そんな事……あぅ」


 そんな言葉にならない言葉の後にバフっ! て音が聞こえると、千衣子は小さな声でこう言った。


「あ、ありがとうございまふぅ……」

「いえいえ。てかなんか声が妙にぼやけて聞こえるような?」

「は、恥ずかしくて布団被ったんですっ! もう顔が熱くて……。こんなの見せられない……」

「もうビデオ通話じゃないから見えないって」

「…………はっ! そうでした!」


 あーもう! 可愛いなぁ!

 どんな顔してるのか見て見たかったや。ビデオ通話の事言わなきゃ良かったかも? いや、それはダメか……。と、思ってたら思わぬチャンスが来た。


「そ、そうですよ! そうでした! 私だけ見られてたの不公平じゃないですかっ! 深山君も見せてくださいっ!」


 いや、言い方言い方! それじゃなんか変な意味にとらえちゃうって! まぁ、俺は別にいいけどさ。


「じゃあ今から切り替えるよ」

「え? あ、今のは冗だ──」


 千衣子がなんか言ってる間に切り替えた。


「どう? ちゃんとうつってる?」

「ん゛んっ!!」


 な、なんだ今の声は……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る