第16話 ゆるふわ巨乳と手のひらクルックル義妹

 連絡先交換失敗の帰り道、ちょっと欲しい本もあって少し駅前に寄り道して帰ることにした。

 いつもは何人か行くんだけど、たまには一人でゆっくりと、ってな。

 とりあえず本屋にでも行くか。

 いつも買ってるファッション誌がそろそろ出てるはず。時計も欲しいんだよなぁ~。


「げっ、しょう兄ちゃん!」

「……」


 おっ、これにしよ。好きなブランドの服も乗ってるし、靴も時計も特集組んであるじゃん。


「無視すんなっ!」

「……なんだよ。声かけんなよ。後その手に持ってる本置いてこい。俺は買わねぇぞ」

「え、いいじゃん。買ってよ」


 さて、次はマンガでも見に行くか。


「ちょいちょい無視するなし!」


 うるせぇな。いや、ホントうるせぇな。自分の本くらい自分で買えや。さっさと会計して帰ろ。

 と、思った時だ。


「香帆ちゃん誰と話してるのぉ~? 彼氏~?」

「あ、彩月さつき。違う違う! ほら、前に言ったじゃん。香帆の義理のお兄ちゃんだよ」

「あぁ~」


 ……ほう。この微妙にのんびりしてる子は彩月ちゃんというのか。香帆と友達ってことは中三かぁ。

 ウェーブのかかった長い髪にタレ目。唇は少し厚いけどぷるっとしていて可愛らしい。

 それにしても中々のモノをお持ちのようで……。うん、ハッキリ言うとでかい。何が? もちろん胸がだ。少しふくよかな体型だが、それを抜きにしても目を引く。美桜は絶対に勝てない。下手したら東雲さん並? 将来有望でなりより。さて、


「こんにちは。えっと、彩月ちゃん……でいいのかな? 俺はコイツの兄の深山翔平。よろしくね? 兄って言っても義理のだけど。はは」

「はい、よろしくです~」

「うわぁ、キモい。無駄に顔が良いけどキモい」


 はっはっは。お前帰ったら覚えてろよ。


「香帆ちゃんのお兄さんカッコイイねぇ」

「ぐっ、否定はしないけど……」

「ありがとね。彩月ちゃんも可愛いよ。コイツは生意気だけど」

「香帆ちゃん~! あたしの事可愛いだって~!」

「あ~うん、良かったね」


 あ、こいつ会話すること諦めやがった。

 どれ、ちょっといい兄貴ムーブでも見せておくか。


「ほら香帆、それよこしな。一緒に会計してくるからさ」

「あ、おねがい……しないっ! こ、断るっ!」

「ん? なんでだ?」

「これで買って貰ったらなんか負けた気がするもんっ!」


 ちっ、するどいな。まぁいい。金が浮いたのは確かだしな。さて、会計会計~。


「あれ? 翔平?」


 ん? この声は……


「こ、この声は茜きゅんっ! って……げっ!」


 振り向いた香帆の表情が固まる。うわぁ、露骨。


「あ、香帆ちゃんもいたんだ。学校帰り?」

「あぁ~はい、そうです……ね」


 おい、なんでちょっと引き気味に話してんだよ。ほらほら、俺が聞いたことが無い甘ったるい声で今朝の登校中に話してた茜だぞ? ん?


「そうなんだ。僕も今帰りなんだ。今週の土日に読む本買ってたんだ」

「そ、そうですか~。あ、私ちょっと買い忘れあるんでした。彩月、いこっ」

「あっ、香帆ちゃん~? そっちは~……」


 香帆は手に持ってた本を棚に戻すと、彩月ちゃんの手をひいて近くのエスカレーターに乗って上に上がって行った。

 買い忘れ? 上は確か紳士服売り場だぞ?

 ……アイツ逃げたな? はぁ……。


「翔平は委員会終わったんだね。おつかれ」

「あぁ、ホントに疲れたよ。今な」

「今? なんかあったの?」

「帰ってからの事を考えると……な」

「?」


 香帆は帰ったら説教だな。

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