第97話 海に来たよ!

 目の前に広がる青い世界が俺の視界を埋め尽くす。

 そう、海だ。海に来た。


「ううっ……ふぐっ……」

「ちょっ! 翔平なんで泣いてるの!?」


 隣の茜が涙を流す俺に心配そうな──いや、これは呆れてるな。まぁそんな感じで声をかけてくる。

 なんて失礼な親友なんだ。


「茜、お前にはわからないのか。男子高校生の夢である【彼女と海にくる】という偉業を成し遂げた俺の気持ちが」

「それはわからないでもないけど、そんな滂沱の涙を流す程じゃ……」

「あーそうか! そうですか! さっすが前日から来てお泊まりした奴は言うことが違いますねぇ!」

「だ、だからそれには色々理由があったって言ったじゃない!」


 そうなのだ。実は茜と美桜は前日から来ていたのだ。

 話を聞いたところによると、元々みんなで遊ぶ約束をしていたのが今日。

 だけど美桜がその前に二人きりで行きたいとのことで、昨日は二人で来たらしい。

 そして時間を忘れて遊びに遊んで夜に花火をして、いざ帰ろうとしたら電車が無い。迎えを呼ぼうとしたらちょうど二人ともスマホのバッテリーが無くなり、たまたまポツンと一軒だけ建っている宿を見つけ、そこで電話を借りたところで停電になり、どうしようか困っていると、宿の人からの一人用の部屋が一つだけ余っているからそこに今夜は泊まっていってはどうか? という提案。茜と美桜は悩んだ結果、しょうがなく、ほんっとーにしょうがなく、その宿で一夜を過ごしたとか。


 いや、あの、これ、ホントにさぁ……。


「ラブコメか!」

「え?」

「え? じゃないが? なんだその使い回されてるけども未だに愛される伝説の夏の古き良きドッキドキお泊まり今夜は離さないでねシチュエーションは!」

「ちょっと何言ってるのかわかんないよ!?」

「ドチクショウー! お前なんて砂浜で足の裏火傷しやがれ!」

「なんてこと言うんだよまったく!」

「で、愛しの愛しの彼女はどうした? 姿が見えないけど」

「急に普通に戻んないでよ。美桜ちゃんはまだ宿で寝てるよ。ちょっと疲れちゃったみたい」


 あ、察した。


「この性欲モンスターめ」

「さっきから僕の扱い酷くない!? 僕のことはもういいから東雲さんは? 一緒に来たんでしょ?」

「ん? あぁ千衣子なら美帆さんと香帆と一緒に更衣室に行ってる。めっちゃ混んでたからまだもう少しかかるだろ」


 今日来た海は地元から離れている所だから美帆さんの運転で来たんだが、美帆さんと千衣子の谷間にシートベルトが埋まってる姿を見て香帆が白目剥いてたのが実に愉快だった。


「翔平くん、お待たせしました」

「更衣室マジ混みすぎなんですけどー」

「こ〜ら、香帆、言葉遣い悪いわよ〜?」


 声が聞こえて振り向くと、そこには水着の上にラッシュガードを羽織った千衣子。

 その隣には少しムスッとした香帆。

 そして……明らかに布面積の少ないグリーンのビキニを着てその肢体を惜しみなく周囲に見せつけている美帆さんの姿。


 いや、ちょっと、美帆さん? さすがに際どすぎじゃないですかね?

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惚れるとデレちゃう隣のクラスの地味子ちゃん(旧題)陰キャ扱いされている俺の幼馴染みが眼鏡外して前髪上げたらイケメン扱いされてるけど、お前ら頭おかしいんじゃねぇの? あゆう @kujiayuu

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