第96話 女の戦い
「つーわけでこいつが俺の妹の香帆。んで、その隣の子が香帆の友達の彩月ちゃんだ」
そう言って俺は千衣子に二人を紹介した。香帆はまた顔を掴まれないか俺を警戒している。もうやらないって。
だって次は千衣子のターンだからだ。
「で、こっちが俺のマイスウィートハニー東雲千衣子だ!」
「っ!?」
俺は胸を張り、自信満々にそう告げる。その瞬間隣の千衣子から「どんな紹介の仕方ですか!」って睨まれるがもう遅い。……後で謝るから許して。
「まったく……。香帆ちゃんに彩月ちゃん初めまして。東雲千衣子です。えっと、香帆ちゃんのお兄さんとはお付き合いをさせてもらってます。よろしくお願いしますね?」
「あ、こんにちは! 香帆です。こちらこそよろしくお願いして欲しいです!」
うむ。彼女と義妹との邂逅。実に素晴らしい。
よく見るパターンだと、ヒロインと義妹は主人公を取り合うライバル関係になったりするが、俺は主人公じゃないからな。香帆に妹以上の感情は持ってないし、なによりも揺るがない程に千衣子Loveだから。
しかーし、問題はここからだ。
全くもって考えの読めない彩月ちゃん。以前、俺に対して好きとか抱いてとか都合のいい女にしてとか、ちょっと倫理観ライン越えしてる事を言ってきた子。
ちゃんとフったのに感じるこの不安はなんなんだ?
「こんにちは〜私は以前翔平さんに告白した彩月です〜。ちなみに15歳でカップはGなんですよ〜?」
「………っ!」
そう言って腕を組みながら胸を持ち上げ、挑発するような表情で千衣子を見る彩月ちゃん。この子……やりやがった!
「ちょ、ちょっと彩月ちゃん!? いきなり何言ってんの!? もう兄ちゃんにはフラれたのになんで突然巨乳自慢してるの!?」
俺より先に突っ込む香帆。さすが俺の妹。成長したな。
って感心してる場合じゃない。俺以外に恋愛経験のない千衣子じゃこんな状況の対処法が分かるはずがない。ラノベや漫画で知識を得た俺がなんとかしないと。
と思ったら千衣子がずいっと彩月ちゃんに向かって前に出た。
「あ、私の彼氏の翔平くんに告白したのは彩月ちゃん貴女だったんですね。前に聞いてました。ところでそんなに大きいと大変じゃないですか? 私もまぁまぁ大きい方なのでわかります。ウエストは61ですけど」
「〜〜〜っ!」
自分の腰周りを手で抑えながら悔しそうな顔をする彩月ちゃん。そんな彼女に対して更に一歩近づく千衣子。あまりにも近すぎてお互いの胸を押し付け合い、柔らかさのあまり形を変えて密着してまるで乳勾玉のようだ。
「なんて迫力だ……」
その迫力に仲裁することも忘れていると、隣で少し涙目な香帆が自身の胸に手を当てながら呟いた。
「あはは……ねぇお兄ちゃん、この二人、胸囲が脅威だね」
「あはははは! お前にしては面白いな! よし、泣いていいぞ……」
「格差社会つらたんだよぉ〜!」
大丈夫だ香帆。母さんに似ればきっと多分お前も……いや、これ以上は何も言うまい。
無造作にリビングに投げ捨てられている、香帆のブラのサイズを思い出して俺は心の中で慰めた。
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