第67話 コンタクトレンズ。メガネの分の距離すらもどかしい

 ダブルデートのダブルが取れて、今からは俺と千衣子の二人きりのデートになった。

 よくよく考えれば、ちゃんとしたデートは初めてになる。この前のは髪切った後のオマケみたいなものだったからな。


 という訳で、二人手を繋いでやって来たのは巨大ショッピングモール。服や飯から映画や小物まで、ここに来れば全てが揃っている。

 とりあえず今日はここで楽しむとしますか!


「千衣子はなんか見たい映画とかある?」

「映画ですか? ん~今やってるのでは特にないかもですね」

「そっか。俺もそんな興味引く映画が無いから、今日はぶらっと色々見て歩こうか」

「ですね」


 まず最初に入ったのは、千衣子がショーウィンドウの前で足を止めたちょっとしたインテリアに使えそうな小物が置いてある店。手作りで凝った物が多く、少しだけお高いけど見ていて飽きない物がたくさんあった。もちろんただ見るだけじゃない。千衣子が一番釘付けになった物の名前と形、それに値段も覚えた。もちろんサプライズでプレゼントする為にな!


 そしてその店を出てから少し歩くと、メガネ屋があり、店頭でコンタクトレンズの割引クーポンを配っていた。そこの店は眼科も一緒になっていて、診察から度数の調整、販売までここ一ヶ所で全てが済むらしい。

 普段は通り過ぎるんだけど、千衣子が少し気になってるみたいだから話だけ聞いてみることにした。


 なんでも店舗の拡大と、このショッピングモールに店を出してから五周年記念って事で半額セールをしてる最中との事。しかも学生なら、生徒手帳を見せることで更な学割も使えるらしい。

 そんな話を千衣子はすごく真面目に最後まで聞き、帰り際にパンプレットとコンタクトレンズのカタログを貰って店を出てきた。


「コンタクト買うの?」

「えと、あの……ですね? その……学校以外の二人きりの時だけ付けてみようかな? って。せっかくこんなに安いので」

「二人きりの時だけ?」

「あ、いえ、な、なんでもないですっ!」

「え~! そういう言いかけって一番気になるんだけどなぁ~」

「うぅぅぅ……」

「で、なになに?」

「えっと……ですね? キ、キスの時にメガネがぶつからない分、もっと近くにいけるかも? って……思っちゃいましたぁ……」


 ……ちょっと待て。それってもしかして?


「メガネをかけてる学校でもキスしてる前提で話してたりする?」

「~~っ! だ、だから言いたく無かったんですよう!」


 そう言って怒りながら手にしたパンフレットで俺の腕を叩いてくる千衣子。ちょっ! それ地味に痛いぞ!?


「待て待て待て! 叩くなって! でもそれならメガネ外せばいいんじゃないのか?」

「そ、そんな事したら、いかにもキスを待ってるみたいじゃないですか!」

「あ、確かに」

「確かにじゃないですよぉぉ!」

「じゃあしない?」

「…………するぅ」

「来週が楽しみだなぁ♪」

「…………」


 あれ? 反応がない。もしかして怒ったかな?

 そう思って隣を見ると、千衣子は下を向いたままボソッとこう言った。


「……だ、誰も見てない所なら私はいつでも……して欲しいです」


 ──そうきたか。

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