第13話 料理上手(え、そんなことないよぉ)

 そして昼休み。

 俺は茜と美桜と一緒に弁当を食べていた。

 いつもはもう一人いるんだが今日はいない。多分、彼女のとこに言ってるんだろう。確か、「二年生のバインバインお姉様をつかまえたぞぉー!」とか言ってたな。ずるい。


「ちょいちょい三枝さぁ、どうするつもりなの? 二条さんからめっちゃアプローチかけられてんじゃん!」


 美桜が豆パンを頬張りながら茜にそんな事を言ってくる。ちなみに俺と茜は手持ちの弁当だ。お金大事。購買危険。


「ど、どうって……。お礼って言ってたからそんなんじゃないと思うけど……」

「いんや、あれは絶対気があるねっ! 美桜の情報によると、休みの日にショッピングモール行って探したりしてたみたい!」


 だからその情報どっから来てんだよ。その内、メモ帳出してペン先をペロッと舐めそうで怖いわっ!

 それにしてもわざわざ探しにねぇ……。すげぇ美少女ムーブだな。アニメのOPとかにありそう。あれだろ? 胸に手を当てながらキョロキョロ探して風が吹いて空見上げる感じだろ?


「えぇ、まさかぁ……」

「いや、でも二条さんの気持ちも分からないでもないのよね! ぶっちゃけ、美桜も昨日の三枝見た時ドキッとしたもん! あっ、なんなら美桜と付き合っちゃう? 」

「えっ! 進藤さんと!? そ、そんな……でも……えっと……」


 ん? んん? 何だこの感じ。


「なーんて冗談だってば! あはははは 」

「あ、そ、そうだよね。はは……」


 んんんんんん~~~~?? これはどうゆうこっちゃ? いや、まさか……えぇ~~?


 俺が今考えついたことに自分で納得行かずに一人で悶々としていると、奴が現れた。


「あの……私も一緒に食べてもいいかな?」


 そう、クラスのアイドルだ! おそらく弁当が入ってると思われる可愛らしい巾着を手に、俺達の席に侵攻してきたのだ。おい! 普段の友達はどうした!? ……あ、なんか後ろの方でガンバっ! って感じのポーズとってる。ホントにそんなポーズとる人類いたのか。


「あ、二条さんじゃん! いいよいいよ! 美桜の隣空いてるから座って~」

「ふふ、ありがとう進藤さん。三枝君もよろしくね。深山君も」

「あ、うん」


 その言い方だと俺はお・ま・け!!


「おう」


 一応返事はするけどさ。

 そして俺達の返事を聞くと、奴は巾着を開いて弁当を取り出した。

 蓋を開くと、中身は俺なら二口で終わりそうなミニおにぎりと、卵焼きに鶏ササミのサラダ、ミニトマト、ミニハンバーグ。

 ミニだらけ! なんという女子力! 美桜は豆パンとウグイスパンだぞ!

 俺が驚愕していると、その弁当を見た美桜が禁忌のセリフを言った。


「うわぁ~凄い! ねぇ二条さん、もしかして手作り? 料理得意なの?」


 あぁっ! それは! それは言ってはいけない! そんな質問したら……


「「え、そんな事ないよ? お母さんに手伝ってもらったの」」


 ……やっべ。セリフ丸かぶりした。


「えっ!?」


 二条が驚いた様な顔をして俺を見る。


「はは、適当に言ったら当たっちゃったな~。はは~」


 笑って誤魔化す。


「そ、そうなんだ。うん、そういう時もあるよね。うん、よくあるよくある。深山君凄いね!」


 ねぇよ。あってたまるかよ。


「翔平すごいね」

「あっはっは。そうだろう? なんてな。さて、俺はもう食い終わったからちょっとコーヒーでも買ってくるわ」


 俺は逃げる。このままこの場所にいたら、【良かったらおかず交換する? 】【おいしい?】【良かったぁ。これだけは私が作ったの】 【あの、良かったら……今度作ってこようか?】のオンパレードを聞いてしまうかもしれん。そんなの俺は耐えられない。


 サラバダー。


 さて、コーヒー買うついでに昨日の花壇でも見に行ってみますかね?

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