第11話 彼女はクラスのアイドル……ブハッ(笑)

 それにしても、コンビニ着く前に連れ去られるとは……茜もツイてないな。

 さて、問題はこっちだ。


「し、東雲さん? なんかものすご〜くご機嫌ナナメ?」

「……何がですか?」


 あ、これナナメどころじゃないわ。直角だわ。


「どうかした? あいつがなんかした?」

「いえ、深山君のお友達じゃなくて……」

「あー、あいつらか……」


 俺がそう言うと、彼女はコクリと頷く。


「あの人達、人にぶつかったりしても謝らないんです。むしろ相手側が謝ってくるのが当たり前みたいな態度までとって……」


 そう言いながら自身のお下げをギュッと握った。


「あいつら、自分が世界の中心みたいなところあるからな……。あっ、ちなみに俺はちゃんと謝るよ?」

「知ってます」


 知ってる? ん? どーゆーこっちゃ?


「それに、あの態度もなんなんですか? 三枝君の見た目がちょっと変わったくらいであんな池の鯉みたいに群がって……」


 池の鯉って! 上手いこと言うなぁ~。

 てか、


「茜の事知ってんの?」

「はい、いつも深山君と一緒にいるじゃないですか」

「うん。まぁ確かに一緒にいるけど……。見られてたのか……」

「……っ! み、見てたっていうかその……えっとですね? あ~えっと……」


 なんか言いづらそうだな……。


「まぁ、俺達もまぁまぁ騒ぐから目に入ってもしゃあないか」

「そ、そうです! そうなんです! 騒いでます!」


 そこまで力強く言わなくてもいいんじゃないかな? いや、まぁ否定はしないけどさ。


「とりあえず、俺のクラスの下駄箱こっちだからまたな」

「え? あ、もう学校着いたんだ……。はい、では放課後に」


 東雲さんと別れて自分の教室に入ると、いきなり小さな影が飛び込んでくる。


「みーやまー! ちょっと誰? 朝一緒に来てた子はー!」

「おい待て。離れろ美桜みお

「らじゃ!」


 今、俺に飛び込んで来たのは同クラの進藤しんどう 美桜みお。活発そうなショートカットで猫みたいな目。肌は陸上部だからなのか少し日に焼けている。身長は144センチの小柄のロリっ子だ。ちなみに猫みたいだけど決して語尾に【にゃ】とかつけない。

 マンガとかでよく見るけど、そんなん付けてたらイタすぎだろ。実際にいたら引くわ。

 後、自分で「美桜はCカップだ!」って言ってたな。


「ふぅ。おっ、茜も来てんな」


 茜の席を見ると、いつもの眼鏡姿に戻っている。なんかすっげぇ疲れてるっぽいけど。

 にしても、今は席に一人っきりだな。昨日は人が群がってたのに。


「みやまー。美桜はいつまで待てばいいのだね?」

「ずっと」

「この外道がっ!」

「嘘だよ。で、さっきの質問だけど、朝一緒に来てたのは隣のクラスの東雲さんだ。委員会が一緒でな。たまたま一緒になっただけだ」

「しののめ? 聞いた事ないや」

「まぁ……だろうな」


 お前とは正反対だからな。


「で、俺からも質問。茜の奴、なんであんなに疲れてんだ?」

「それはあれだよ深山君。学校に着いた途端、地味眼鏡に戻っちゃったからね。それに一部の女子が猛反対したんだけど、使い捨てコンタクトだったらしくて、メガネじゃないと無理って三枝が言ったらサーッとみんな離れていったのだよ」


 いや、お前はどこの探偵だよ。


「まーじか。どんだけだよ。たいして変わんねーだろーが」

「みやまはそう言うけどね。実際、美桜もトキメキかけた事は黙っておこう」

「言ってんじゃねぇか」

「てへっ!」


 俺とつるんでるからコイツも茜とは接点あるんだけどな。それでもコレか。

 とりあえず声かけてチョコでもわけてやるか。


 そして俺が一歩踏み出した時だ。


「あの……三枝君?」

「……へ?」


 机に突っ伏している茜の目の前に、一人の女子が立って声をかけていた。あれは……


「おやおや? あれは二条にじょう 綾芽あやめちゃん。 ウチのクラスのアイドルだね! 」


 横から美桜がボソッと言った。


 ……ブハッ! ひぃ~! アイドルって! 今どきクラスのアイドルって!!

 まじで言ってんのか!? まじか! そんなのいたのか!? 腹痛てぇ!!




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