第17話 こうして無自覚モテ男は出来ていく

「おい偽乳」

「んあぁぁぁ!? いきなりそれっ!?」


 俺は家に帰って早々に香帆を自室に呼び出した。

 要件はもちろんアレ。茜の格好によって態度を変えてる件に関してだ。クラスのパリピガール達はわりとどうでもいいが、お前は許さん!


「なんで呼んだか分かるか?」

「う、うん……。もしかして……って思ってたけど……」

「そうか、なら話は早いな」

「うん。しょう兄ちゃんゴメンっ! 香帆が置いてきた雑誌買って来てくれたんでしょ? ホントありがとっ!」


 お前の頭の中にある花畑の花を全部むしってやろうか!?


「違う。アホか。かさ増し」

「一言余計なんだけどっ! じゃあなによ!」


 俺は声を落とし、マジトーンで言う。


「お前さ、本屋で茜に会った時なんであんなによそよそしかったんだ?」

「えっと……なんのことかしらかな?」

「もう一度言う。何でだ?」


 さらにワントーン落として聞くと、香帆は肩をビクつかせて視線を泳がせ始めた。


「しょ、しょう兄ちゃん? マジで怒ってる?」

「どうだと思う? ん?」

「ひっ!」


 もちろんホントにキレてはいない。

 少しは怒ってるけど。


「お前、朝はあんなにベッタリだったよな? お前は茜がそんなに別人に見えるのか?」

「だ、だって……今朝の茜君の方がイケメンなんだもん……」


 まぁ、そんなこったろうと思った。

 しかし、【茜君】か……。ふむ。前髪下ろしてメガネになっても陰キャ呼びに戻らないってことは、ホントに見た目だけで……って訳でもないのか? まぁ、小さい頃は一緒に遊んでたしな。


「俺にはどっちの茜も同じに見えるからお前らが騒ぐ理由がわからない。ホントに別人に見えてるのかもしれない。けど、茜は茜だ。中身はなんも変わっちゃいない。お前がホントに茜を好いてるのならそれはそれで構わない。ただな」

「ただ?」

「今日みたいな態度を変えるような事は二度とするな。お前の都合で傷つけるな。まぁ、茜は鈍感だからわかってなかったけどな」


 俺は香帆の目を見てハッキリと強く言う。

 すると香帆は何かを考え込む様な仕草をする。そして少し経ってから……


「うん。わかった」


 俺の目を見てしっかりと返事をした。

 これで良し。けど、とりあえず今日しでかしたことの制裁を加えてやらんとな。


「ってなわけで罰として……」

「ば、罰?」

「茜に普段のお前がパット何枚入れてるかバラす」

「お、鬼ぃぃぃぃぃぃっ!!」

「嫌なら少し減らせっ!」


 はっは! なんとでも言えいっ!

 さすがに片側三枚は入れ過ぎだ! 美帆さんが言ってたんだ! 「香帆の胸が毎日形変わってるんだけど学校では何か言われてないのかしら?」ってな! 少しは遠慮しろや!


 ◇◇◇


 そして翌朝、俺達は昨日のように三人で歩いている。ちなみに茜はいつも通りのメガネだ。


「姉さんが夜勤だったからね……はは」


 とは茜の言葉。

 そして……


「あ、茜君、昨日は急に帰っちゃってゴメンなさい」

「え? いいよいいよ。忘れ物あったんならしょうがないよ」

「ぐっ、胸が痛い……」


 胸は無いけどな。しかし、ちゃんと謝れたか。良き良き。


「だ、だからね、お礼に何か奢るから今度一緒に買い物行こうっ!」

「か、買い物?」

「うんっ! 香帆が茜君をコーディネートしますっ!」


 ……なるほど。そうきたか。

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