第62話 シャッターはとらえていた!その瞬間を!

 UFOキャッチャーで茜に惨敗した(別に勝負してないけどなんか負けた)後、俺達はメダルゲームをすることにした。そこで俺と千衣子はジャックポットを連続で引き、最初は百枚あったメダルが……なんということでしょう! 驚きの三千枚にまで増えた。

 茜と美桜に向かってドヤると、千衣子には笑いながら呆れられたりもした。その後、茜達もジャックポットで千枚まで増えた所でやめてメダルを預けることに。


「深山君、メダルって預けれるんですか?」


 千衣子が横からひょこっと顔を出して、珍しそうに預け入れマシーンを見ながらそんな事を言ってくる。

 そっか、ほとんど来たこと無いって言ってたもんな。なら知らないのもしょうがないか。


「一応三ヶ月の期限付きだけどな。こうして預けておけば、次に来た時にまた使えるんだよ。まぁ、引き出せる上限は決まってるけどな」

「じゃあ、無くなる前にまた来ないとですね?」

「そうだな。近いうちにまた来ようか。今度は二人きりで」

「そ、そうですね。二人……きりで……うぅ」


 自分で言ったことに照れてるし。

 そこで別の機械でメダルを預けてきた茜達が戻ってきた。なんとなくだけど、店に入って来た時より二人の距離が近い気がする。学校だけで会うより、プライベートで会うのはやっぱり違うからな。いい事だ。


「翔平、預け入れ終わった?」

「あぁ、今終わったところだ。で、どうする? そろそろ移動するか?」

「そうだね。そろそろお昼になるから、混む前にどこか見つけて入ろっか」

「ちょっ……ちょっと待って!」


 そして移動をしようとみんなで歩き出したところで、美桜が一人足を止めて俺達に声をかけてきた。


「どうした?」

「あ、あのさ? 二階まだ見てないから行ってみない?」

「二階? 格ゲーとプリクラくらいしか無いぞ?」

「…………っ! 深山君、私も見たいです」


 今度は千衣子までそんな事を言い出した。どうしたのかと思って隣を見るけど、千衣子は何故か美桜と見つめ合って頷きあっている。なんだ?

 まぁ、見たいって言うなら行かない選択肢はないのだけども。


 てなわけで二階に向かう。

 フロアの半分を占める格ゲーの筐体の前には、百円玉を積み上げて盛り上がってる中学生やスーツを着た人もいた。

 俺は苦手だからあんまやったことないんだけどな。

 そしてもう半分はプリクラの機械が並んでいた。

 美肌やら美白やらデカ目加工やら色々書いてあるけど、はっきり言ってどれも同じ様にしか思えない。そんなに変わるもんなのか? 香帆が撮ったのを見たことはあるけど、写りの違いがわからなくて馬鹿にされたしな。


「あ、あのさ! せっかくだからみんなで撮らない?」


 フロアを見て回っていると、美桜が唐突にそんな事を言ってくる。そして言いながら茜をチラチラ見ている。

 あぁ……そゆことね。それで二階に行きたいって言ったのか。ならば協力しないわけにはいかないな!


「そうだな。撮るか。茜も千衣子もいいか?」

「いいよ。撮るの久しぶりだなぁ。小学校の時に姉さんと撮った時以来かも」

「はい。大丈夫ですよ」


 そして四人で仲良く撮った後、落書きは女性陣に任せて終わり──な、わけが無い!


「じゃ、俺は千衣子と撮るから。その間待つのもアレだろ? お前らも撮ったら? いや、むしろ撮れ。んじゃ!」

「はぇ!? 深山君!? え? え?」

「ちょっ! 翔平!?」

「っ!!」


 んで俺は千衣子を連れて、適当に選んだ筐体にカーテンを開いて入ると財布から小銭を出す。


「さて、撮るか」

「えっ? ホントに撮るんですか!?」

「そりゃ撮るでしょ。イヤ?」

「い、嫌ってよりはむしろ……一緒に撮りたかったと言いますか……」

「なら良かった。よし、金入れたしもう撮影始まるぞ?」

「えっ、待っ! まだ心の準備が……〖ポーズをとってね!〗あぁっ! もう!?」


 そして撮影が始まり、八回シャッターが切られた所で終わった。後は撮った八枚の中から四枚を選ぶだけなんだが……。


「み、みみみ深山君! 私が選ぶので外で待ってて下さい!」

「え~? なんで? 俺だって選びたいんだけど。一緒に選ぼうよ」

「私も一緒がいいんですけど、でも、今回はちょっと! ほんとに!」


 なんだ? 嫌がってるってよりは、妙に焦ってる感じだな。変な顔で写っちゃったとか? どんな顔してても可愛いんだから気にしなくてもいいのに。

 ってほら、こんなやり取りしてる内に選択画面になったし。

 そして俺の視線が画面に向かったのに気づいたのか、千衣子は更に慌てた。


「んひゃ! み、見ないで見ないで!」

「どうした? 別に変な写真なんて一つも──おぉ?」

「ま、待ってください! これは違うの! 違うんです!」


 八枚のうち七枚は二人とも機械の指示通りに撮ったもの。だけど残りの一枚だけは違うものだった。

 俺はレンズに向かって目を瞑っている。確か、その時の指示が、〖目を瞑ってこわぁ~い!のポーズ!〗って言われたはず。だからその通りにしたんだけど、隣の千衣子はそのポーズはせずに、俺の頬にキスをしようとしている所を撮られていた。

 された記憶は無いから、恐らく途中で辞めたんだろう。


「千衣子?」

「…………です」

「ん?」

「お、お姉ちゃんのせいです! お姉ちゃんが恋人なら、ちゅうプリとか普通とか言うから! だからです! 私は悪くないです!」


 ……いや、さすがにその言い訳は厳しいんじゃないかなぁ~?

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