第96話 ベッド
俺達を不審者のように追いかけていたのはカインさんだった。
一体なんなんだろうか? 何か用があるなら話しかければいいのに。
少し驚かせてやろうか。
そう考えた俺はカインさんがゲートに背を向けた瞬間にゲートから出て彼の方を叩いた。
「どわああああああ!」
俺に驚いたカインさんは前につんのめりバランスを崩して壁に頭をぶつけた。ゴツンという鈍い音が夜の路地裏に響く。
頭を強打したカインさんは俺を一瞬俺を憎々しい目で見た次の瞬間普段の目で俺を見てきた。
「え、エルビスか。何のようだエルビス」
何故か追跡していた人間が何用かと問う。誤魔化す気満々だ。
「それを聞きたいのはこっちですよ。カインさん。どうして不審者みたいな行動をしていたんですか? ハーミラに居たはずじゃ。というか今ここに居るって事は俺とほとんど同時期にハーミラから出ましたよね?」
「ふっ。何のことやら。俺はここに用があっただけだぜ」
「なるほど。で? ちなみに何の用ですか?」
「そらー……秘密だ」
「そうですか。まぁ良いです。どうせ王様に挨拶しなくちゃいけないのに忘れてたとか。シルヴィ辺りに心配されて監視してこいって言われたとか俺が王様にとんでもないことをやらかすのか心配だったとかそんな所でしょ」
「な、何で分かってんだよ。読んだか? オレの心を読んだのか?」
適当にそれっぽことを言っただけなのだが玉があたったらしい。どの玉が当たったんだろうか?
「カインさんの心なんて読んでませんよ。ちなみにどれが当たったんですか? 参考までに教えて下さい」
「全部当たってるんだよ! だから心を読んだか聞いたんだよ」
おっと驚いた。全弾ヒットしていたのか。と言うかとんでもない事をやらかさないか心配されるって俺……そんな変なことしたかな?
人に失礼を働いた事なんて無かったはず──たぶん。
「じゃあカインさん。俺と一緒に王城に行きますか?」
「いや、今日は行かない。もう夜遅いしな」
「そうですか。じゃあ俺は王城に戻るのでまた明日ですかね? また明日会いましょう」
「おう。じゃあな」
俺はカインさんに別れを告げるとそのまま王城に向かって歩き始めた。そろそろシャリアさんもご飯を食べ終わった頃だろう。
王城に帰ったら人目につかない所で向こうの世界から連れ出すとしよう。
そのまま俺は大通りを通りすっかり俺の顔を覚えた門番さんに挨拶をして王城に戻った。城の前で人目が無いことを確認して俺はゲートを開きシャリアさんを用意した世界から連れ出した。
「あ……あれ? ここは」
「シャリアさんまだ食べてましたか? 邪魔したならすみません」
「い、いえ。もう食べ終わっていましたので大丈夫です。わざわざお気を使って頂いてありがとうございます。ではこちらにエルビス様のお部屋はご用意させて頂いているので、付いてきて下さい」
そう言って先導して歩いてくれるシャリアさんに付いていくと俺は一室の豪華な部屋にたどり着いた。
「こちら客間です。しばらくはここがエルビス様の部屋になるので自由にして下さいね。あっでも部屋を汚しすぎると私が怒られるので気を付けてくださいね。あとエルビス様が滞在している間私の部屋はこの部屋の隣になるのでよろしくお願いします」
そう言ってシャリアさんは俺に割り当てられた部屋の隣の部屋に入った。
その様子を見た後俺は自分の部屋に入った。広い馬鹿広い。前世の部屋の数倍はある。
そしてそんな部屋の大きなベットにはディーネが寝ていた。
早い……。別に一人寝た所で問題ないくらいにベットは大きいので構わないが、剣の中の部屋は豪華だったはず。
わざわざこっちで寝る意味も無いと思うのだが、もしかしたら精霊の寝るベットとは硬いのだろうか?
そんな事を考えながら俺はベットに向かって歩きそのまま布団に潜った。その瞬間その衝撃に全身に電流が流れたような感覚を覚えた。
なぜならそのベットは俺が知っているどんなベットもやわらかく、暖かく入った瞬間に疲れという疲れを全て持っていく。こんなベッドがあるのならいくらでも出して買いたいそう思う良いベッドだ。
そのせいであっという間に俺は夢の世界に旅立った。
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