第23話 シルヴィVSディーネと世界最強の始まり

「シルヴィ! 大丈夫か!」


 俺はシルヴィの部屋に入った瞬間大声で叫んだ。


「おい! エルビス君しばらく出るとは聞いていたが一週間は長いぞ! もう水が無くなりかけていた。帰って来て良かった。」


「一週間? そんな馬鹿な数時間のはず。まぁいい特殊な回復の水を持ってきました。」


 俺は袋に入れていた回復の泉の水の入った瓶を取り出しシルヴィに飲ませた……だが効果はなくシルヴィの症状は変わらない。


「お、おい。エルビス……効いてないぞ。どうなってる?」


 なんで……なんでだ? 窒息死ができないくらいの回復力を生み出す回復の泉の水のはずなのに俺の生み出す水魔法の方が回復している。


 そんな疑問を持っているとディーネの宿った剣からディーネが出てくる。


「それは、回復の泉の水、それ自体には回復効果がないからですよ。マスター、私がいたから回復できていたんです。なのでマスターが溺れていた泉のあった場所は今普通の泉です。」


 自信満々にお役に立てました? というという顔をするディーネが今の俺にはイラっと来る。


「じゃあシルヴィは救えないのか? なら契約は無しだ。帰ってくれ、そこにシルヴィ連れてく」


 急にあたふたと焦りだすディーネ


「ま、待ってください! 治せます。私の力で治せますから! 見ててくださいよ。マスター!」


 俺がガチトーンで帰れと言ったので半泣きになりながらディーネはそう言った。


 ディーネがシルヴィの傷口に触れるとみるみるうちに、傷が綺麗になった。よかった。


「これでシルヴィは目を覚ますのか?」


「はい、シルヴィさんの生命力を吸収していた元はしっかり消しました。マスター!」


 俺は眉をひそめる。生命力を吸収していた?つまり、あの黒魔種は何かしらの生物の生命力を吸収しているからあそこまでの強さを持っているという事かな?


 それにしても疲れた……この一か月いや……一か月と一週間か、まともに寝てない。泉にいた間に跳んだ一週間の謎はあとで聞くとして寝よう……


「主様……私の膝でお眠りください。」


 そう言うのを聞きながら人の太ももではありえない柔らかさを体感しながら安らかに眠った。


「……た……れ……エルビ……よ!」


 何だ? 喧嘩か? もう少し……寝よう


 そう思ってるとシルヴィの声がしっかりと聞こえる。


「エルビスからはなれろ~はなれろはなれろ!」


 そう言いながらディーネをぺしぺしと叩くシルヴィが目に映る。


「ダメです! マスターは寝ています! 黙ってください!


「ますたーますたーってなに! さっき言ったじゃん剣に宿っただけでまだ契約できてないって!」


 シルヴィは地団駄を踏みながらそう言った。


「先ほどマスターは回復の波動を獲得しましたーだから目を覚ましたらすぐ契約できます~」


 そんな二人の喧嘩をぼんやりと眺めているとシルヴィと目が合った。


「あ、エルビス! 起きた? 久しぶり!」


 俺はシルヴィに抱き着く。よかった。


「え、エルビス……恥ずかしいってば……えへへ」


 声を上擦らせながらシルヴィはそう言った。その後ろでディーネが歯をぎりぎり言わせて突っ立っている。


「ねぇねぇエルビス。あそぼ、なんかしようよ!」


「そうしたいのは山々だけど今日はおとなしく寝てほしい」


 そう言ってシルヴィをベッドに寝かせた。


「じゃあ私たちは契約しましょ!」


 そう言ってディーネは俺に抱き着いてきた。


「にゃあああああ! エルビスに触るなあああ! へぶっ」


 シルヴィは激しく怒りディーネに飛び掛かったが布団に引っかかって転んだ。


「大丈夫か? シルヴィ?」


「う、うんだいじょうびゅ」


 噛んだ……


「じゃあ行きましょうね!」


 そう言ってディーネは俺の手を引き裏山まで引っ張った。


「じゃあ契約しましょう!」


 おいおいいきなりだな。


「先ほどマスターは回復の波動を獲得したので契約を始めます。」


 そう言ってディーネが俺にキスをしてきた。口に……


 その瞬間体に別のエネルギーが入り込むのを感じる。脳内に普段とは違う声色のアナウンスが聞こえる


『警告! 警告これ以上の力の流入は人智を超え人外の領域にまで到達する可能性があります。今すぐ契約を中断してください。今すぐ契約を中断してください。』


 そしてそのあとすぐ普段のアナウンスの音が聞こえる。


『回復の秘術を獲得しました。』


 回復の秘術:失ったものを回復という形で取り戻す。取り戻すものによっては使用制限や対価がかかる。


 頭に大量の情報が流れ爆発しそうだ。先ほどの警告がやばい、頭が割れる。しかも獲得したスキルは使い道がよくわからない。


 そのまま、俺の意識はフェイドアウトした。


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