第78話 第五階層

とあるお話が入ってきました。まだ具体的に決めてはいませんがもしかしたら投稿頻度が下がるかもしれません

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 第四階層は再び大きな部屋になっていた。しかし先程ヒュドラは下の階に落としたので全く障害にはならず反対側の階段に登るだけの時間しか掛からなかった。


「いやぁ第四階層は楽すぎたな。はやく第五階層もこーりゃーくーすーるーぞー」


 急にカインさんの話し方がおかしくなった。スローモーションを掛けたようにゆっくりとした動きだ。ちょうど第五階層の階段を登り切った場所からだ、俺はまだ四階層と五階層の中間の階段にいる。時間の流れが違うらしい。


 俺は五階層に入るとすぐにカインさんに今見たことを話した。


「つまり第四階層と第五階層の時間の流れが違うんだな。タイムイーターだな。この階層は早く出よう。長居すると俺らの時間感覚と外の時間がずれる。下手したらここから出たらもう煉獄の門が完成してるという状況もありえるぞ」


 俺はふと壁を見た。そこには小さい虫がうねうねと這い回っていた。


「きも! カインさん壁の中から虫が出てきてますよ!」


「だからタイムイーターって言ってるだろ。ここまで登った侵入者は力じゃ止められないと防衛機能が判断したんだろうな。時間稼ぎに手段を変更しやがった」


 第五階層は迷宮迷路のようになっていてかなり時間を奪われる。魔物のたぐいは一切は出て来ないがかなり複雑で全く出られない。


「クソ! また入り口だ。もういい! エルビス。壁ぶっ壊せ」


「でも上の階段の方向がわからないと魔法の無駄打ちになりますよ?」


「じゃあ探索魔法使うか……あんまり魔法を使いたくはなかったんだけどな。こんな魔物もいない場所で魔法なんて勿体ないな」


『我が目指す正しい道を示せ:サーチ』


 カインさんがサーチの魔法を使った。カインさんを中心に波紋状の魔力が放出された。サーチの魔法は魔力を体から一定間隔で放出して跳ね返ってきた魔力の波で周囲を索敵する魔法だ。故に魔力消費が激しい本当は俺が使うべきだったのだが少しめんどくさかったので任せてしまった。


「はぁ? 何だこの構造……ブッ殺すぞ!」


 カインさんが怒り心頭といった感じでプンプン怒り初めた一体どんなものを見たんだろうか?


「こっちだ、まずこの壁を壊す。エルビスやってくれ」


『子龍魔法:ダークショック』


 手乗りサイズの龍の口元に魔力が集まり衝撃波が飛んだ。そして壁がガラガラ崩れた。その奥に光の入っていない通路が出現した。


「なんですか? この迷路もしかして壁壊さないと延々とくるくる回り続けるとかそういうことですか?」


「そうだよ……手段が時間稼ぎになっているんだからさっさと気が付くべきっだった」


 暗い通路を進むと再び行き止まりにたどり着いた。


「次はこっちだ。ここを破壊してくれ」


 カインさんに指示を受けた場所を破壊すると更に通路が出てきた。そんな事を十回ほど繰り返すと階段をやっと見つけた。


「階段在りましたよ! カインさん。かなり時間を取られましたね。体感時間は3時間くらいですけど12時間は経ってると思います」


「そうか、先を急ぐか、半分を超えたぞ! 第6階層だ」


 階段を登り見えたのは広大な緑と草原だった。ノータが作り出した世界に近い形をしている。


「何だこの世界……迷路の次は広大な世界と来たか……しかも天井が見えねぇ近道はできないようだな」


「この階層の階段はどこに在るんですかね? 取り敢えず進みましょう」


「いや、このパターン俺は空か地下に階段があると見た!」


「なるほど、空は怪しいですね。少し見てみますか……『風の力よ、我が羽になりて我を地のくびきから開放せよ:飛翔』」


 俺の体が宙に舞い上がった。


「ちょっと見てきます」


 風になったような体の軽さを感じながら空を飛んだ。だが何も見当たらないので速度を上げるといきなり壁に激突した。


「いっだぁ、壁があるのか……見えないけどここに壁があるな」


 見渡す限りの青い空はどうやら途中で仕切られているようだ。意外と狭かった。つまり空には階段はない。地下に埋もれている可能性がある。カインさんのところに戻ろう。


 カインさんのところまで戻るとカインさんは地面に探索魔法を放っていた。


「どうですか見つかりましたか?」


 いきなり空から声をかけるとカインさんが驚いて体をビクリと震えさせた。


「びっくりした。エルビスか……どうだ? ってその調子だと駄目だったっぽいな。こっちも外れだ」


「マジですか……じゃあどこなんですかね?」


「そうだな……今はこの階層は朝なわけだが夜になったら開くとかそっちの線かもしれないな」


「そうだ、この階層ちゃんと壁がありましたよ? どうです、天井破壊して上に行きませんか?」


「なんだ、天井が在るのか、じゃあ近道しよう」


『龍魔法:シャイニングレイ』


 極大の光光線が天井を貫き綺麗で、大きな穴を作り出した。その穴からギラリと大きな目が覗く。そのまま俺の開けた穴から龍が這い出てきた。


「穴をあけるところまで想定されてたらしいな。戦闘の始まりだ! 準備しろエルビス」

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