第77話 第三階層

 8時間ほどグッスリ寝たあと目を覚ました。俺の作った世界は外との時間の流れと違い二倍の速度で時間が流れている。まだ全然眠いが起きて戦う準備を始めた。


「ディーネちょっと話をしないか? 精霊の涙の件そんなに気にしなくて良いんだぞ?」


「マスター許してくれるんですか? こんなゴミな私を……」


 あ、なんかすっごい落ち込んでいらっしゃる。


「大丈夫だ……ほらディーネに求めてるのは戦うような活躍じゃないから! 初めから求めてないから期待してないから俺は一切に気してないぞ!」


「主様よ、励まそうとしてなかなかえげつない一言を言っておるぞ。後全く見当違いな励ましはかなり無理がある……もうディーネ息しておらんぞ……たぶん」


 ディーネを見ると地面に突っ伏してぶつぶつと何かつぶやいていた。


「ディーネごめんってちょっと間違えただけだから気にしないでくれ」


「マスター! 間違ったってなんですか! 間違えてないですよ。しっかり私の心にトドメを刺しに来てましたよ! えぇ確かに精霊の涙の件については気にならなくなりましたとも! その代わり別のところが気になりまくりです!」


 ディーネが手をブンブン振って怒っている。


「ごめんってば事故だからほら、飴あげるから」


「あ、ありがとうございます。あ、これ美味しいですね」


「で……もう良いのか? エルビスお前もう少し慰めるならちゃんと考えて慰めろよ」


 カインさんが冷めた目で俺達のことを見ていた。


「あ、はい……じゃあそろそろ戻りますか」


 再び元の大部屋に帰ってきた。しかし昨日とは違い迷宮の二階層は魔物で溢れていた。そしてディーネが剣に戻ることもせず俺のサブの剣をブンブン振って魔物と戦っている。そんなに俺が言ったこと気にしているのか?


「ディーネ、そこどいてくれ……魔物を倒せない」


「そんなに私が邪魔なんですか。うわ~ん」


 泣きだしたディーネに飛びかかる魔物を蹴飛ばしてディーネを立ち上がらせた。


「カインさん上の階に登りましょう」


「おうよ!」


 上の階に登ると魔物は壁があるように登ってこなくなった。


「ディーネ……お前戦闘能力無いんだから大人しくしてろよ」


「すみません。マスター水の泉を早く見つけてください。絶対に役に立つので」


 そう言って剣に戻った。ノータは剣に戻らずディーネが置いていった剣を手にとった。


「ここからは妾の出番じゃな。妾は戦闘できるからの」


「そうなのか? 何ができるんだ?」


 そういた瞬間俺に向かってノータは闇魔法を飛ばした魔法は俺を通り過ぎ後ろに飛んでいった。背後を見るとアリのような魔物がこちらに大量に迫ってきていた。


「こいつら……はバグアントだろうな。数の力で他の神話生物と対抗してきたらしい。個の力は弱い。その精霊の子と一緒に戦えばなんとかなるだろ」


「主様よ……妾が侵入を妨害するから一列に並んだアント達を殺ってくれ」


「任せろ」


 アリたちが侵入してくる大きい通路に闇の壁が出現した。アリはこちらに一匹ずつ来ることになった。最初の一匹目はカインさんが倒した。俺はその間に普通の火魔法を通路に向けて放った。闇の壁の間を通り抜け通路の奥の蟻たちを焼き殺す。それでも次々とアリは出現する。


「思ったより弱いようだな、エルビス俺に任せろ」


 そう言ってカインさんは魔法の袋を取り出し中から赤い剣を取り出した。その剣をカインさんが試し振りしている。剣の通った空間に火が残り続けた。一度斬った場所はしばらく燃えるらしい。


「おらあああああ」


 カインさんが叫びならら剣を振ると斬撃波が飛び、廊下を轟々と燃やし始めた。そんな燃えた廊下をアリは走ってくる。そのままメラメラ燃えて力尽きる。


 そんな光景を数時間ほど見ていると何か別のものがこちらに来た。


「エルビス出番だぞ! 女王のお出ましだ!」


 こちらに歩いてきたのは巨大なアリだった。


「キシャアアアアアアアアアア」


 他のアリを複数連れコチラに突撃してきたがノータの生成した壁に思いっきり激突した。


『中龍魔法:ダークスピア』


 太さが1メートル近くある槍がノータの作った壁と巨大アリを貫き更に塔の壁を破壊した。すぐに塔の壁がふさがっていく。


「終わりました。早く行きましょう」


「待て、今の魔法を使えば近道できるんじゃないか? 天井に撃ってみろよ、大丈夫だ。どうせ今みたいにすぐ塞がる」


「そうですね、わかりました。行きます! 『ダークスピア』」


 激しい轟音とともに天井が崩れ上から8つの首を持った魔物が落ちてきた。


「ヒュドラだ! やばいぞまさか落ちてくるなんて思ってなかった。エルビス通路を進むんだ! この通路をやつは通れない」


 カインさんが蟻が通ってきた通路を走り抜けるのを見て俺も追いかけた。俺を追いかけようとしたヒュドラは通路に引っかかり叫んでいる。


「危なかったな。でもこれで上の階には何もいねぇ俺らの勝ちだな。早く上に登ろうぜアリたちにかなり時間を取られた」


 少し焦ったようにカインさんは早足で先に進み始めた。第二階層はアリの巣のような形状をしているのでどこが上の階に繋がる道がわからない。


「主様よ……闇の魔法を探索魔法の代わりに使ってみてはどうじゃ?」


「あ、それで思い出した。俺探索魔法を付与した、魔術石があったんだった。これ使ってやろう。そこそこ高いんだぞこれ」


 カインさんが魔法の袋から白い石を取り出すとそれを掲げ魔法を発動した。


「おーおーなるほどなこういう構造をしていたんだな、こっちだ付いてこい」


 カインさんがヒュドラのいた方向に逆走し始めた。


「ちょ、戦うんですか?」


「んなわけ無いだろ……アリが通路を隠してたんだよ。通路を破壊しないと見つからない様になっているな」


 そう言って壁を蹴っ飛ばした瞬間ガラガラと壁が崩れ中から階段が出現した。第三階層クリアだ。

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