第76話 命がけの戦い

「ギリギリだったな……もうここは完全な迷宮だ。足元にも気をつけろ今回みたいなことが起きたら次はどうなるかわからん。ほら、俺のサイズだが無いよりマシだろ新しい靴だ。って魔法の靴があったからこれでいいや」


 カインさんが新しい靴を魔法の袋から取り出した。


「ほらエルビス履け」


 靴を履いた瞬間俺の足のサイズにしっかり靴のほうが合わせてきた。何度か地面を踏んで確認した後部屋の奥に進み始めた。


「カインさんなんでこんな迷宮化してるんですかね?」


「煉獄の門の自動防衛機能だ、それよりも目の前の魔物を何とかしようぜ」


 カインさんが俺の方を向きながら後ろを指差した。そこには5mくらいの大きさ、赤黒い色をした四足の魔物がいた。皮膚が硬そうな魔物はこちらに叫びながら突撃していた。


 魔物は硬そうな爪を振りカインさんはその攻撃を大剣で受け止めた。そのまま無理やり大剣で押し返した。


「援護行きます」


 俺は剣圧に火の魔力を付与して斬り飛ばした。直撃した魔物は一瞬怯んだ。


『龍魔法:ダークバレッド』


 ここは迷宮だからおそらく崩壊しないだろうという判断をして魔物の背中に魔法を撃った。魔物の硬い皮膚がボコボコ凹み紫色の血が出てきた。


「良いぞ! エルビス、あとは任せろ。おらぁ」


 カインさんが振った剣が魔物の背中に当たり大きな音を立てて魔物は倒れた。


「初めて見る魔物ですね。カインさんはこの魔物知ってますか?」


「ああ、グランドロスって言う魔物だな……これも神話の魔物だ、神話のオンパレードだなホントに」


「神話の魔物にしては弱くないですか?」


「お前狙って背中を破壊したんじゃないのか? こいつの背中には魔術回路が入ってて一回魔法を通すと神撃でやっと破壊できる硬度になるらしいぞ? 知ってたから真っ先に背中を破壊したのかと思ったんだけど偶然か」


「まぁ良いこの先も神話の生物が出るならもしかしたらケルベロスとかヒュドラとかエグいのがいっぱい出てくるぞ」


 そこら辺は知っている。まぁカインさんが討伐方法を知っているだろう。


「カインさん! 階段です。これで2階にいけますね。この塔は10階有ったのでまだまだありますよ」


「はぁ長いな。早く行くぞ。こいつ売ったらめっちゃ高いのにな」


 カインさんが名残惜しそうにグランドロスを見ている。カインさんの背中を押して俺たちは先に歩き始めた。


 二階は大部屋だけだった奥に階段が見える。


「エルビス気をつけろ。とんでもないのが来るぞ」


 カインさんの言葉に引かれたように目の前の何もない場所から黒いブラックホールのような物が出現した。


「これは、デスウィスパーだ……気をつけろヤツの口から発される攻撃に掠りでもしたら一撃で死ぬぞ、あと触れたものは例え非生物でも概念的なモノでも死をもたらすぞ」


 即死系だと! 俺のスキルにこれの対処法はないやるしか無いようだ。カインさんが説明をしている途中で暗闇の中から完全に出てきた。骸骨がローブを被りこちらに歩いてきた。

 デスウィスパーが突然俺の目の前に出現した。とっさに回避したが本当に危なかった。


「エルビス! 概念的なものも死ぬって言ったろ! 空間だって殺せるんだ。いきなり目の前に出現するものだと思ってろ!」


「そういうのは先に行ってください」


 俺は斬撃波を飛ばしたがデスウィスパーに触れる瞬間霧散した。こんなのどうやって倒せっていうんだ!


「エルビス神話の中ではこいつは倒せなくて封印したんだ。なんとかできないか?」


(主様よ。妾のとっておきの魔法を教えてやろう。普通に使うのは難しいから魔術支配を経由して発動するのじゃ)


 ノータがそういった瞬間脳内に新しい魔法の技術が入り込んできた。


「ちょっとカインさん時間を稼いでください」


「任せろ」


 カインさんがデスウィスパーの元に走りかなりアクロバティックに攻撃を回避し始めた。かなりギリギリ回避している。急いで魔法を完成させなくては


『闇龍魔法:永久監獄』


 恐ろしい勢いで魔力を奪われていく龍魔法詠唱時に持っていった魔力では足りないらしい。俺の体周りに恐ろしい位の量の魔力が集約し始めた。すべて俺の体から出てきたのもだ。


「カインさん行きます。離れてください」


 俺はデスウィスパーに手を突き出した。それに連動して俺の体の周りにオーラのように集まっていた魔力がデスウィスパーの方に移動した。


『封印』


 拳を握りしめた瞬間漂っていた魔力が物質化してデスウィスパーを囲んだ。そのまま暗黒空間にゆっくり移動させた。まじ怖かった。命の危機なんて転生してからほとんど経験してなかったから本当に怖かった。


「カインさんポージョンありませんか? 魔力が完全に無くなりました」


「あ、ああ、まじかよあれを封印するとはな……俺正直ここで死んだかと思ったよ。ほらいくらでも飲め」


 カインさんが高級ポーションを渡してくれた。飲んだことはないがかなり美味しいらしい。軽くひと口のんだ。


「おお、これ美味しいですね。噂は本当だったのか……ハマりそう」


「それ一本100万だからな」


「ぶふぉ、けほけほ! ヤバ100万が出ちゃった」


「おい勿体ないだろしっかり飲め、今日はここにで休憩して明日から登るか? 俺もかなり疲れたぞ、ちょっとでも触れたら死ぬなんて精神的に良くねぇよ」


 本当にその通りだ。目の前にデスウィスパーが出た時心臓が止まるかと思ったしな物理的に……


「ふぅ、やっと休憩じゃの妾は特に何もしてないが主のストレスが妾にもダイレクトで伝わってきたぞ」


 ノータが俺の目の前に出現した。そういえばディーネを見てないぞ?


「ディーネは気軽に精霊の涙を渡したことを反省して自粛中じゃ主様が危なくならん限り出てこんと思うぞ?」


「さっきが一番危なかったんだけど……そうだ。迷宮は心が落ち着かないし新しく世界を作るか」


 カインさんの高級ポーションを大量に飲んで(カインさんは号泣していた)俺は新しい世界を作った。


「これ、お前が作ったのか? すげーな確かにここなら安全そうだ。ここで4時間休憩したらあとは止まらずに登るぞ」

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