第7話 魔術支配の暴走
今日は、シルヴィの両親の家に行く、俺はよくシルヴィの家に行っていたのでリハビリも兼ねてという事だ。ちなみに、カインさんも一緒だ。
シルヴィは今日とても楽しそうだ。終始鼻歌を歌っている。
「ねぇ? エルビス君! 今日はいつもやってた魔法の練習ごっこやろ? 何か思い出すかもしれないし、魔法使えたらきっと楽しいよね!」
「お? エルビス魔法練習するのか。いいな魔法を習得して俺のパーティメンバーになってくれよ」
カインさんは本気か冗談かわからないノリでそんな事を言う。多分半分以上本気だろう。しかし魔法は適正があったけど使ったことはなかった。若干楽しみだ。
それにしてもシルヴィの家は貴族の家だけあってかなりでかい。だがこんな田舎に家を建てる意味がわからない。素直に理由を聞いてみるか。
「ねぇ、シルヴィなんでこんな所に貴族のシルヴィの家があるの?」
「え? 去年、エルビス君が川に流される前にたまたま、この村に来た私が、魔物に襲われてるところをエルビス君が助けてくれたんだけど……その時、服が破れて私の裸をエルビス君が見たから‥‥結婚するために」
どういうことだ? そんなことで結婚するならこの世の男どもは女の子の服を剥げば結婚できるじゃないか。
「ちょっと説明が雑っすね、シルヴィさん。いいか、エルビスこの世界にはな、運命神っていうのがいるんだ。その運命神ってのはいたずらが好きでたまに、運命のふたりが出会った瞬間にお前らは将来をと共にする運命にあるんだぞっていう印を見せることがあるんだ。
よくあるパターンとしては、男が間違えて女の裸を見てしまった時とかな、雰囲気最悪の状況でそんな印が出てみろ。そりゃあ気まずいだろ。それを見て楽しむのが運命神だ」
何だその運命神ってネタバレじゃないのか? 最悪だな
「まぁ、運命は変わるからな。確定じゃない。例えば、時間の流れが違う神域と呼ばれる空間に入ったときとかな。ああいう所に入ると神の定めた運命を外れる。昔の賢人には過去に戻って運命を変えようとしたやつもいるのさ。失敗して死んだらしいが。後は伝説ではあるが、精霊の泉ってところだなあそこも時間の流れが違うから運命から逸脱するらしい」
あらら、シルヴィさんおつかれっす! 俺そこに居たんですよ。とは絶対に口にはしないがニヤニヤしてしまう。これからの人生先がわかってるなんてつまんないからな。
「カインさんその印ってどんな形で現れるんですか?」
「おう、基本は女の体の一部に出てくるらしい。そして、その運命が確定するまで消えることはない」
「あ、シルヴィのお尻の……」
ついぽろっと声に出てしまった。シルヴィの反応は激しかった。その言葉を聞いた瞬間顔を、火を出しそうなくらいに真っ赤に染め上げ訳の分からない事をぼやき、ついに腕をバタバタと動かし暴れ始めた。
「責任とってね」
と一言言われた。んなバカな、子供時代に裸を見た程度で生涯を共にするのか? 断じて否だ! 12になったらシルヴィに黙って魔術学校に行ってその後は世界に旅立とう。そして今はとりあえずごまかそう!
「で? どんな魔法練習するの?」
そう切り出すとあの的に魔法を打とうと言う努力とフリをするだけ、必要なのは気合といった。単純すぎてつまらん子供の考えることは単純だな。
とりあえずやるか、と思っていると庭に知らないおじさんが来た。と言うかシルヴィの父親だった。
「はっ、儂の娘の裸を見た挙句風呂まで入ったエロガキじゃないか記憶を失ったと聞いたから婚約も解消だと思っていたのに‥‥こんな所でまたシルヴィとイチャイチャしてるとは……ほら魔法使い志望のエロガキお前の魔法見せてみろ……どうせできないだろうけどな」
ありえないくらい必死だな。娘を取られそうになったからって必死すぎだろ。むしろ哀れである。
「ほらいつもみたいにファイアードラゴン! とか言ってみろ! はっはっは。まぁ無理だと思うがな!」
シルヴィを見ると般若のように歪めたシルヴィと目が合った。こわ!! シルヴィは自分の父親をぶっ殺すぞと言いたげな目で見ている。
「殺す‥‥」
言っちゃった‥‥自分の父親に凄い暴言吐いたよ?そして言われた方は、真っ青な顔をしてご機嫌取りを始める。
「シ、シルヴィ?ほ、ほら俺はシルヴィのためを思って言ったのであってだな‥‥」
「うるさいお父さん少し黙って一生黙って」
あほらしくなったので、魔法の練習を始める。自分の魂から魔力を井戸のようにくみ上げる事を意識する。
いいぞ成功だ体に魔力が満ちる。おなじみのアナウンスが聞こえる。
《魔力自動回復 (小)獲得》
そしてくみ上げた魔力を体内で変換させる。体の中で魔力が渦巻くのを感じる。属性は水だ。本当は火を使ってファイアードラゴン()を出してやりたかったが変換に慣れてないせいもあり水属性に変換した。
やはり半年も水に浸かってい所為だろう。イメージが簡単だった。シルヴィの父親への意趣返しも含めてウォータードラゴンと名付けよう。この日、将来龍魔法と呼ばれることになる禁呪魔法が誕生した。
爆発的な魔力の膨れ上がりに気がついたのか、カインが周りに避難指示を出している。俺の方は強制的に魔力を引っ張られて止めることができない。
「にげろおおおおお」
カインさんの絶叫が村中に響いた。
『龍魔法:アクアドラゴン』
目の前に30メートルはある龍が生まれる。シルヴィとその父親は顎が外れそうな勢いで口を開け驚いている。カインさんは二人を安全な所に無理やり連れて行った。
龍の口に魔力の集約が始まった。恐ろしく高濃度の魔力により構成された水球が射出された。水球は、音を切り裂き遠くにあった山を粉々に吹き飛ばした。しばらくして衝撃波がこちらに飛んできた。
やりすぎちゃった(てへぺろ)....お、おかしいなぁ魔術に関するスキルってあったっけ?改めて確認する。
これだ《魔術支配 (中)》:魔術操作の進化系だったはず。回復の泉の中じゃあ使い道無かったから空気になってって忘れてた。この魔法が俺のイメージに合わせて強制的に魔力を持っていった。イメージから魔法を発動しているので威力調整ができない。そして魔術支配はパッシブスキルだ。これでは無詠唱のスキルが息をしていない。
「エルビス! やりすぎだ。見ろ向こうにあった山が無くなったぞ」
カインさんが俺に詰め寄ってくる。かなり怒っている当たり前か。
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