第45話 試験結果
翌日、俺とクラウドは魔術学校へ一級生徒の合格を確認しに向かった。昨日の受験者の多くが期待した目で合格の番号が書いてあるボードを眺めている。ボードを覗こうとしたが前にいる茶髪の双子の男の子が邪魔で見えない。身長高すぎ!
「ちしょーやっぱりないか~2級に期待だな!」
「三級ならどうする?」
「行くわけないだろ! 没落貴族が意地でも箔を付けたいとかそんな理由じゃない限り誰も行かないだろ!」
そんな会話を聞きながら男の子たちが退くのを待っているとようやく退けてくれた。
1252と1253番・・・・・期待してわくわくしながら探す。
「あ! エルビス君! エルビス君の番号あるよ! おめでとう!」
「え! 嘘! どこだ? どこどこ?」
クラウドの指す方向を見るとしっかりと1253番が書いてあった。
「よっしゃ! 無理だと思ったけど行けたか!」
「エルビス君が一級じゃなかったら誰が一級なんだ? って気はするけどね?僕の名前はなかったや明日また付き合ってくれるよね?」
「ああ、明日はクラウドが合格する番だ! 俺は、校舎に入って書類貰ってくるから先に帰っててくれ」
「わかった。魔法の練習でもしておくよ!」
クラウドを見送り俺は校舎に入った。下駄箱の前に何人か並んでおり、そこで書類を渡していた。
俺も列に並びしばらく待っていると俺の番が来た。
「1253番エルビスです!」
そう言うと、書類を配っていた男がこちらを見た。クシャっとした髪型で優しそうな風貌をした男性だ。
「そうか! 君がエルビス君か、カインさんを倒したとか聞いたよ。君は僕の担当するクラスだ! 名前はヴァリオンというんだ。よろしくな!」
そう言ってオレの手を握りぶんぶんと振る。面白い先生だ!期待できそうだ。俺は書類を受け取り宿に帰った。
宿の部屋に帰るとディーネが抱き着いてきた。
「マスター! おめでとうございます。やりましたね、私は信じていました!」
「ああ、ありがとうそう言えば、担任になる先生に会ったけど面白そうな先生だったよ」
「そうですか、それは良かったです。でも私はマスターが学校に行っている間寂しくなってしまします。」
しょんぼりとそんなことを言うディーネ
「そんなことはないだろ? 俺の剣に入っていればいいんじゃないか?」
「いいんですか?」
「いいに決まってるだろ?」
ディーネが嬉しそうにベッドに飛び込みゴロゴロし始めた。喜んでいるならよかった。
「今日はお祝いにどこかへ食べに行きましょう!」
ディーネが俺の手を引いて宿の外に出た。人の多い道を通り商店街を抜けたどり着いた店は、地球の料理によく似たものを出す店を見つけたのだ。
「マスター! 私このオムリャースを食べたいです。少し高しですけどよろしいですか?」
ディーネが赤い瞳をこちらにギラギラと向けてくる。
「ああ、いいよ。オムライスがどうしたらオムリャースなんて名前になるのかはわからないけど、オレは、ハンバーグだな」
「ハンヤークと書いてありますよ? マスター」
違います! ハンバーグです! 変な名前つけないでください!
心の中で地球と違う名前に反抗しながらオレは注文をした。しばらく待つとデミグラスソースのかかったオムライスとハンバーグが出てきた。
ディーネは生き急ぐようにおいしそうにもぐもぐ食べ始めた。俺も食べるとするか!
久しぶりに食べた地球の料理の味は懐かしくとても美味しかった。なんでこんな異世界に地球の料理があるんだろう?
いつか自分で作りたいと思いながらその日は帰宅した。
朝起きるとディーネの青い髪がガッリリオレの顔にかかっていた。くすぐったい..後いい匂いがする。
って変態みたいじゃないか! すぐに匂いを嗅ぐのをやめて立ち上がるとディーネが目を覚ました。
いつもはキリッとした可愛らしい目をしているが今はふにゃふゃっとした、だらけた目をしている。
「ディーネ? 髪の毛食べてるぞ?」
「あ、しゅみませんマスター」
そう言ってうつ伏せに倒れ込んだ。
「ディーネ? 眠いのか。俺そろそろクラウドの試験結果見に行くんだけどどうする?」
「今日は宿の部屋を警備します!」
ディーネは赤い瞳をゴシゴシと擦りながら起き上がってそう言った。口元によだれがついている。
ディーネを放置して部屋から出ると昨日と同じようにクラウドが待機していた。
「クラウド、お前今日寝癖ひどいぞ?その金髪ストレートもうちょっとちゃんと溶かしてこいよ」
「そ、そうだね! 僕も今日寝坊しちゃったと勘違いして準備あんまりできなかったんだ!」
クラウドの目を見ると青い瞳が若干充血している。
「もしあれなら、午後からにするか?」
「いや、緊張して寝れなかったから、今から寝直しても無駄だよそれよりさっさと見て寝たい」
クラウドがそういうので先にサリナール魔術学校は向かった。
張り紙の数が昨日より多い。当たり前だ。一級は10人2級は300人、3級は50人だ。
今日の張り紙が一番多くなるだろう。
俺とクラウドは2人で番号を探す。20分ほどして俺がクラウドの番号を見つけた。
「クラウド! あったぞ!ここだ!」
「ほんと! よかった。ないかと思って冷や冷やしてたんだよ!」
クラウドが金髪のサラサラヘアを揺らしながらこちらへ走ってくる。
クラウドは番号を見ると飛び跳ねて喜び書類を受け取りに行った。
俺は昨日書いた書類を提出にヴァリオン先生のところへ向かった。
ヴァリオン先生は机に顔を押し付け爆睡していた。
「先生? 起きてください」
何度か揺らして起こすと飛び跳ねて起きた。
「あぁ! すまない。なんだい? おや、エルビス君じゃないか。どうしたんだい?」
優しげな瞳で俺を見てくるヴァリオン先生この人の目は嫌いじゃない。
「昨日の書類を書いてきたので確認を・・・・」
ヴァリオン先生は5分ほど書類に目を通すとオッケーを出したのでそのまま帰った。
部屋に帰るとディーネがお洒落をしていた。貴族が着るような服ではなく冒険者が着そうな軽量化された服だ。
それでもディーネの清廉さは消えはしない。
「どうしたんだ? ディーネ?」
「保護者として入学式に参加しようと思いまして服を選んでいたんです!」
ディーネは自信満々にそう言った。
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