第44話 本屋に寄ったら事故った件について
「マスター落ち込まないでください。魔術学校がマスターを落とすなら所詮その程度だったんですよ! それで何があったんですか?」
「試験が終わってないのに追い返された。はぁ。ちょっと調子乗ったかもしれなけど……まぁやりすぎたから仕方がないかなぁ。昔カインさんが教えてくれた詠唱でもしとけば良かった」
「一回ちゃんと詠唱魔法について学んでみたらどうですか?」
ディーネの提案は至極真っ当だ。俺には明らかに基礎が足りない。練習はちゃんとするべきだった。
「すこし本屋に行って魔術の本でも買ってみるかな」
「それがいいです。マスター」
という訳で俺達は街の本屋に向かった。この街の一番大きい本屋に向かった。店自体は大きかったので割と早く見つかり中に入った。
「駄目ですね。魔法の本が一切置いてないですね」
「そうだなぁ。魔法の本の扱いってどうなってるんだ?」
「魔術本は姉妹店にありますよ? ここの隣の店です」
俺とディーネの話を聞いていた店員が会話に割り込んで教えてくれた。店員さんにお礼を言って店から出て隣の店に入った。隣の店には魔法の本しか無かった。
「おぉ、同じ様な本しかないですね。しかも書いてる内容は微妙……」
ディーネの感想を聞いた体格のデカイ店員がディーネに向かって歩いていっているが本人は全く気が付かずに批評を続けている。
「嬢ちゃん。今なんて言った?」
「なんですか! 私は事実しか……ひっ!」
好戦的に店員を見たディーネは山のような大男の店員を見て言葉を失った。更に後ずさり本棚にぶつかった。ディーネの頭に本が数冊落ちてきた。
「おいおい、何してるんだ。本は大切にしろ」
「はい! すみません!」
「それでウチの店の本を馬鹿にしてるのか?」
「いえ! していないです」
嘘ついたぞ。あいつ今嘘ついたぞ。見た目でビビるなら初めから言わなきゃいいのに……
「お? おい落ちた本紙が折れてるじゃねぇか……コレ弁償だからな」
「へっ? ううぅぅぅぅぅマスタ~」
ディーネがこちらをうるうるとした目で見てくる。やめろこっち見んな。関係ないです。店員がこちらをギロリと見てきたのでとっさに近くの本棚から本を引っ張り出して見ているふりをする。
「お前何処見てるんだ? 人の話はちゃんと聞け!」
「すみません!」
「ちょっと奥に来てもらおうか。話があるからよ」
そしてディーネは店の奥に引っ張られていった。俺はごまかす為に手にとった本の表紙を見た。
『黒錬金術の発展と栄光』
軽く覗いて見ると黒錬金術の誕生により生まれた新技術や発見された物理現象などの軌跡について書かれていた。
「すみませんすみません!」
店の奥からディーネの必死の謝罪が聞こえてきた。そろそろ助けるかな。俺は店の奥に入り込んだ。俺が入ってくるのを見た店員さんがこっちに来た。
「お客さんこっちは立ち入り禁止ですよ」
「すみません。彼女は俺の連れなので弁償あたりは俺がしますので開放してやってくれませんか?」
「ふむ……そうですか。わかりました。じゃあ今から会計しますね」
暫く待つと金額を書いた神をこちらに持ってきた。紙を見ると20万リートと書かれていた。本高い……ほんの数冊で20万か……活版印刷機もない手書きの本だとコレくらいの値段になるんだろうな。
「はい。金貨2枚で大丈夫ですよね?」
「大丈夫です。お買い上げありがとうございました」
「ディーネ。行くぞ」
「マズターなんでさっき見捨てたんですか!」
涙グズグズでディーネが俺に突撃してきた。涙と鼻水が汚いのでとっさに避けると壁にディーネが突撃した。
「マズター……痛いです。なんで避けるんですか~」
鼻血を垂らしたディーネがこちらを見てきた。
「い、いいから店を出るぞ。目的とはぜんぜん違うもの買っちゃったし」
「うぅ……マスター酷いです」
ぐずるディーネを連れ宿に戻ってきた。買った本を取り敢えず読むことにした。中には『黒錬金術の発展と栄光』が入っていた。それ以外にも『各属性を司る神の神話』と言った本など複数あった。
「あ、各属性を司る神の神話って私です私」
「嘘つけよ。ディーネは精霊だろ。面白いことを言うなぁ。しかも神には会ったことあるしな」
「エスカトーレですか? すごいですね。何処であったんですか?」
「さぁな。エスカトーレって神がこの世界の神様の名前だったんんだなぁ。あまりにも興味がなさ過ぎて調べようともしたことがなかった」
「そういえばマスター珍しいですよね……全く宗教に興味がないと言うか、そういえば昔からそうでしたね。親御さんが教会に向かってもひとり行かなかったり」
「そうだなぁ」
転生前に住んでた国がそういう国だったなんてどんな顔して言えばいいんだろうか? 言えないよなぁ
「マスター本どうします? 今日はコレ全部読みますか?」
「いいね全部は無理だけど一冊くらいなら余裕かな。その黒錬金術の本はディーネ読んでいいぞ。後で要約して教えてくれ」
その日は丸一日本を読んで終わった。
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