第40話 一方その頃(シルヴィside)
『ズゴーン』という爆発音と共に領主の家であるローレン家の壁は吹き飛んだ。
その犯人であるシルヴィは喜びの声を上げ地面にぶっ倒れている。
「えへへへへやったぁーついに完成したぁー」
地面とキスしながらシルヴィは呻いた。シルヴィはエルビスがよく使う龍魔法を使いたいと昔から考えておりずっと練習していたのだ。
エルビスの使う龍魔法は魔術支配によりイメージから強制的に魔力を引き上げ発動する魔法であり、魔術支配の下位互換のスキルすら持っていないシルヴィには発動できないはずだ。
しかしシルヴィはそこで諦めなかった。長く長くエルビスと会えないこの6年シルヴィのエルビス愛は爆発寸前であった。
その結果スキル、エルビスへの愛を一段階進化させた。その結果がこれだ。
スキル:エルビスへの愛:(追加効果)エルビスの使用可能な魔法の一部を使用することが可能になる。
このスキルの進化によりシルヴィは龍魔法を使用可能になったわけだが、龍魔法最大の欠点の強制的に大量の魔力を消費する事にシルヴィの魔力では耐えられずにず、地面とキスをしていた。
「ふふふ、これでグレワール魔術学校でエルビスにあったら驚かせてあげるからふふふふふ」
...エルビスはシルヴィにサリナール魔術学校に行くと伝えていなかった。その結果、悲しいかなエルビスの住んでいたマージャスにあるグレワール魔術学校が進学先だと勘違いしたのだった。
数時間後外出用の服を着て玄関にシルヴィは立った。
「じゃあお父さん!私行ってくるね!」
そんな笑顔いっぱいの娘を見送るゼオンの顔はやつれていた。
「ああ、この6年キツかった。可愛いのは可愛いんだがエルビス君がいないシルヴィがあんなに反抗的だなんて....これで落ち着きのある元のシルヴィに戻ってくれるよな」
走って玄関を出て行った娘をゼオンは見送りながらポツリと独り言を漏らした。
馬車に揺られ4日間、シルヴィはエルビスの家の前にいた。試験の3日前だ。
今のシルヴィは発狂したいほどの喜びで心を満たされていた。やっとエルビスに会える!その一心でドアをノックする。
「はーい?」
シルヴィの期待を裏切り出てきたのはレイラだった。
「あ、レイラちゃん久しぶり!エルビスは?どこ!どこ!」
嬉しそうに家の中をきょろきょろするシルヴィを見てレイラは生まれて初めて心を痛めた。その結果
「あ、えっとお兄ちゃんは今いないかなぁ?す、すぐ帰ってくると思いますけど、どうでしょう?」
と誤魔化した。この時点でレイラが心を痛めなければシルヴィはエルビスと同じ学校へ行けていたのだ。
「そっか!わかった!じゃあ家の中で待ってていい?」
「ぐぅぅぅ!はいぞうぞ。」
レイラが心の痛みに耐えかねて呻きをあげながら了承する。
「あ、私料理作るね!」
家に上がってルンルンと鼻歌を歌いながらシルヴィは料理を作り始めた。シルヴィはエルビスに好きと言ってもらいたくて、この数年間料理を頑張っていた。
「今日は勝負の日よ!シルヴィ!エルビスに一発好きって言わせるもん!」
気合い満々のシルヴィを見てレイラは発狂しながら家を飛び出た。兄がいなくなり寂しい気持ちを抱えていたレイラにはシルヴィの気持ちが理解できてしまったのだ。
「無理無理無理!なんでお兄ちゃんシルヴィさんにサリナール魔術学校に言ってないの!ばかぁぁぁ」
レイラはシルヴィの聞こえないところまで走って全力で叫ぶ。
レイラが家に帰るとシルヴィは既に料理を作り終えていた。椅子に座り準備満々のシルヴィ、そしてそれを見て苦しむレイラ
「あ、兄ちゃんもしかしてわかっててこれやった?お兄ちゃんサイコパスなの?ぐずん」
「どうしたの?レイラちゃん大丈夫?」
「私今日は何処かに行ってきます!」
レイラは逃げた。
翌日一人寂しく部屋の隅で泣くシルヴィを見つけとうとうレイラは真実を語り出した。
「シルヴィさん、お兄ちゃんは遠くに行って帰ってきません。昨日は言えずにごめんなさい!」
レイラの話を聞き現実を受け入れられないシルヴィは、フリーズしてしまった。
「え、エルビスは?」
「いません」
「ん?あれぇ?エルビスは?」
「ごめんなさい!いません!」
「うにゃああああ!」
シルヴィは走って、どこかへ行ってしまった。
「うぅ心が痛い、癒す為に動物実験してこよ」
レイラも自分の実験室に引きこもった。
次に傷心中のシルヴィの元にエルビスの情報が入ってくるのは半年後である。
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