第41話 チョコレートは嫌いなんだぁぁぁ

「エルビス君の魔法なんであんなに威力高いの?」


 俺たちは街に帰る途中雑談をしながら帰っていた。といっても俺が質問され続けただけだが……


「俺の持つスキルがイメージに合わせて勝手に魔力を持って行くんだよ。もう魔法=龍みたいなイメージが強くなちゃって癖ついてるんだ……しかも普段普通に魔法を使わないからどれくらい魔力を込めたら良いかわからないし」


「へー大変だね。そのスキル、でもイメージだけで魔法が発動できるならあの龍の魔法も納得できるよ」


「いや、まぁ別の手加減のスキルで威力調整できるから別にいいんだけどね? せっかく魔法が使えるならバリエーション増やしたいじゃないか」


 クラウドは同意を示すように首を何度も振る。


「わかるよ! やっぱり魔法を使うなら僕も使える種類を増やしたいな」


「ところでクラウドは試験パスできるのか?」


「僕魔眼持ちだからね!それだけで通れるよ!」


 クラウドは嬉しそうにどや顔になった。どうやら魔眼持ちは優遇があるらしい。若干羨ましいと思いながら、そのまま宿に入ると馬車酔いから復活したディーネが待機していた。


「マスターびしょびしょじゃないですか! ちょっと待ってください!」


 そう言ってオレの手荷物から布を出してごしごしと拭き始めた。何故か母親を思い出した。


「マスター魔法練習はどうでした? うまくできました?」


 ディーネは更に俺の服を脱がせようとしながら質問してきた。


「おい何してるんだ。ディーネ! 勝手に服を脱がさなくてもいいよ! それより宿のおっさんの娘さんは治したか?」


「治しましたよ! ちゃんと感謝されてきました。それよりもです。少しくらい服を脱がせたっていいじゃないですか! ところでマスター最近いい体してきましたね! もう少しで私好みのいい体になりますよ! もちろんマスターであるならばどんな体でも愛してみせます!」


 ディーネは俺の服をぐいぐい引っ張りながら言葉と行動のダブルパンチでセクハラしてくる。


「服を放せ! ディーネ伸びるだろ。変態!」


「いーやーでーす! 私が着替えさせます。私の仕事です」


 ディーネがしつこく服を引っ張る。そして『ビリっ』服が破れ俺の裸体が晒された。


「す、すみません。マスタ―破れてしまいました。調子に乗ってすみません」


「はぁ、しょうがない……新しい服買いに行くか」


「私もお供します。久しぶりの買い物ですね」


 ◇


 と言う訳で服を買いに来た。ついでにディーネの服を買っておこう。


「マスター私の服も買っていただけるのですか?」


「ああ、ついでにな……」


 ディーネは勝手に服を選び始めた。しばらく観察していると水色のワンピースのようなものを持ってきた。


「それ欲しいのか?」


 ディーネが本当に欲しそうにこくこくと頷く。まぁディーネが普段着ている服以外着ているのを見たことはないんだけどね。


「わかった、じゃあこれを一つと俺も服を選ぼう。」


「マスターのは私が選びます。」


 そう言ってディーネが俺の服を選び始めた。しばらく待っていると、はやりの服を持ってきた。ディーネが選んだのでそれを買うことにした。


 店を出て暫く歩くとパフェを売っている店があった。


「マスターあ、あのぱふぇとか言う商品とてもおいしそうです! ぜひ、ぜひお恵みください!」


 ディーネが俺の肩を掴みガタガタと揺らしながらお願いしてくる。


「わかった、わかったから! 揺らさないでくれ!」


「ほんとですか! 流石マスターです!」


 ディーネはニコニコしながら俺にちょこちょこと付いてきた。


「あ~何がいいんだ?」


「チョコレートパフェでお願いします。」


「はいはい、っていうかなんでパフェなんてあるんだよ・・・過去に転生者がいたのか?まあいいや、チョコレートパフェ1つください!」


 しばらく待つと懐かしいフォルムをした食べ物が出てきた。それをおいしそうに頬張るディーネ


「マスターもどうですか? 一口どうぞ!」


「あ、ごめんチョコ嫌いなんだ……」


 そう言うとしょんぼりした顔をし始めた。本当に嫌いなんだけどなぁ……


「いや、嘘だ! 一口貰おうかな」


「ほんとですか? ではどうぞ!」


 嬉しそうに俺にパフェを差し出すディーネ、一口食べるとチョコ独特の苦みと風味がしてきた。


「おいしいですか?」


「あ、ああ、お、おいしいと思うぞ!」


 顔を引きつらせながらオレは返答する。


「ではもう一口どうぞ!」


「い、いや!もういいかな!ディーネの分が無くなるだろ?俺なんか気にしないで食べてくれ」


「いえ!マスターあっての私です!ですのでマスターが食べてください!」


 そう言いながら俺の目の前にチョコレートが近づけられる。ああ、くらくらしてきた。そんな黒い物体近づけるな!


「いやいや!ディーネにはいつも世話になってるからな、ディーネに買ったものだぞ?俺に食べさせようとしないで一人で食べてくれ!俺はこれ以上絶対に一口も食べないからな!」


 ディーネが悲しそうな顔をする。ずるいだろそれは!


「じゃじゃあ、一口だけ、あと一口だけ貰おうかな?」


 そしてオレはチョコレートパフェを食べた。


「おいしいですか?」


「ああ、うまい」


 俺は、無心で答える


「帰ろうぜ、ディーネ」


 そしてオレはチョコの臭いと味にやられて、3日間寝込んだ・・・試験当日だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る