第20話 ポイズンゴブリン
シルヴィにはお守りの効果がなかった。それどころか負の効果すら与えているらしい。
理由は分からないがマイナス効果しかないなら持たない方がいいだろう。
「シルヴィには、そのお守り悪い効果しか与えないみたいだから、そのお守りは俺が預かるよ。」
そう言うとシルヴィは全力で拒否した。大切そうにお守りうを抱きしめ俺から距離を取る。
「いや! いやだぁ!」
そう言って走ってどこかへ行こうとする。逃がすわけにはいかない! 力が抜けるとか危険極まりない。意地でも回収させてもらう!
「待て!シルヴィ!逃げるな!」
俺たちは、全力で走りながらいつもの裏山まで来た。速度上昇がついている俺より早い……というよりシルヴィが細かく動くせいで加速した俺は毎回ブレーキを掛けなくてはいけなくて捕まらない。
シルヴィを見失ったあと、頭にアナウンスが流れる。
『持久力増加 (中)』
俺は思わず地面を叩いた。もっと早くほしかった! いつもそうだスキルの獲得タイミングが遅い。シルヴィはどこに行ったんだろう?
「シルヴィーあーそーぼ!」
どこへ行ったか分からないので大声で遊びの催促をかけてみた。
「いーいーよ」
と遠くから聞こえるあいつアホだ。俺はにやりとしながら全力で声のした方へ走った。
声のした方の木の上にシルヴィがいた。
「シルヴィ!逃げなくていい俺は心配なんだ。シルヴィそのお守り持つと力抜けるんだろ?」
そうなだめるように言ってみた。
「いやだ!エルビスから貰った初めてのプレゼントだもん! 絶対渡さない!」
「今度街に一緒に行こう!その時好きなもの……っていうか好きなアクセサリー買ってあげるから!」
そう言うとピタッと暴れるのをやめた。
「ほんと? それなら返す」
そう言って素直にお守りを渡してくれた。このお守りどうしよう……カインさんにでも渡しておくか親にでも渡しておこう。
「ほんとに買ってよ?」
シルヴィがしつこくそう言った。
「わかってるって、じゃあ俺そろそろ魔物討伐の時間だから」
そう言って村の門付近まで行く。シルヴィが付いてくる。そしてカインさんは先に戦っていた。
「おい、遅いぞエルビス!」
「すみません! あのシルヴィさん危ないので来ないでもらえますでしょうか?」
「いえいえ、エルビスさんがいるので大丈夫だと思います。あとカインさんもいるから大丈夫」
そう言って付いてきた。最近強めの魔物出てくるから本当に危ないんだけどな。
早速黒いゴブリンが出てきた。あれはあのオーガと同じ黒魔種だ! 取り敢えずあいつらは異様に強い警戒しておこう。
「シルヴィ!下がってろ!」
シルヴィは頷き後方に逃げる。そのスキに俺は剣に火の剣圧を宿した。この剣になってから火属性の剣圧だけを宿して剣を振れるようになった。
燃えることがない剣は良い。剣圧を斬撃波としてゴブリンに当てた。黒ゴブリンに着弾したが大して効いていない。俺はゴブリンに詰め寄り首をはねた。こいつはまだ弱い方だったようだ。この間のオークほど固くないのでこれくらいで倒せる。
カインさんは森の方から来た黒魔種のオークと戦っている。カバーに向かおうとした瞬間
「きゃあああ」
シルヴィの悲鳴がした。振り返ると先ほどのゴブリンと同じ種類の魔物が3匹まずい!
俺の速度上昇じゃ間に合わない。
「シルヴィ!火魔法を使え!」
俺はシルヴィに駆け寄りながらそう言った。
シルヴィは爆炎を生み出し敵をひるませた。その火の中に俺は飛び込む!
「シルヴィは一体だけ相手を頼む! 俺が二体やる!」
一体に向けて火の斬撃波を当て目くらましをしている間に子龍魔法を発動して剣に火の剣圧と直接魔法で火を纏わせた。
剣圧は所詮剣のスキルの発展系直接火を纏わせた方が火力は高い。火の斬撃波を飛ばしゴブリンを後方に吹き飛ばしたあと。剣圧が再び貯まるまでの間に燃え盛った剣でゴブリンの胸を突き刺した。
後、2体! そのままもう一体の首を吹き飛ばそうとしたがナイフで受け止められる。それでも高熱の剣に触れナイフが溶け始めた。
剣圧のリチャージが終わった。そのまま剣に力を込めナイフを破壊してゴブリンを切りつけた。だがまだ死んでいない。
俺はゴブリンを蹴り飛ばす! そのまま剣で切りつけたが手元が狂い腕一本しか切れなかった。
反撃と言わんばかりにゴブリンが火を吐いてきた。嘘だろ! 火が吐けたのか! 吐けたなら最初っから吐け!
っく! 手が大やけどだ。俺のスキルには状態異常に対するスキルはないんだ!
今度こそ首を切り飛ばす。後一体!シルヴィ!振り返ると黒ゴブリンのナイフがシルヴィに当たる直前だった。
間に合え!間に合え!そう心からそう願い斬撃波を飛ばしたが遅かった。黒ゴブリンの鋭いナイフがシルヴィを切り裂く。その瞬間俺の飛ばした斬撃波にゴブリンは当たり吹き飛んだ。
「てめぇぇぇぇ」
理性を半分失いかけながらゴブリンに切りかかる。
「死ねぇぇ! くそが!」
そのまま詰め寄り心臓を一突きにした。
「シルヴィ!」
俺はシルヴィの元まで走る。肩から腹までザックリと切れている。森の奥からカインさんが入ってくる。
「大丈夫か! すまねぇ俺がオークに手間取ったせいで」
「カインさんのせいじゃないです。シルヴィ今すぐ治療する!」
俺は手に回復の水球を纏わせ傷口を撫でるようになぞり回復させていく。
傷が残るかもしれない。いや残った、黒い切り傷が痛々しく。
「こいつは黒魔種のポイズンゴブリンだな。通常のポイズンゴブリンの毒でもかなり強い毒なんだが回復魔法や解毒草で治るが……黒魔種の毒は俺にもわからねぇ。エルビスのその水は治癒効果があるんだよな? 現状維持はできるみたいだな。飲ませておけば命は繋げるはずだ。俺も解毒の手段を探しにいくぞ。しばらく村を出る」
カインさんは俺とシルヴィを安全地帯まで運ぶと村をでていった。そして脳内に無慈悲なアナウンスが聞こえる。
『超加速:獲得しました』
超加速:10分間5倍の速度で動ける。 リキャスト時間10分
そこから一か月シルヴィは目覚めることがない。さらに傷口から呪いのように黒い部分が増えていく。俺には何もできなかった。
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