魔術学校編(一年生編後編)
第56話 第三章 プロローグ (罰則:魔術図書館)
俺とクラウドとサレンは今罰則を受けていた。罰則の内容は学校にある魔術図書館の禁書庫エリアの整理だ。
名前だけ聞くと楽そうかもしれない。だが内容は、まさに罰則と言った感じだ。なぜなら本が魔法を撃ってくるからだ。どうして魔法を撃ってくるかと言えば、魔導本の原本は精霊が宿っているのだ。
「ちょっと待ってよ~」
クラウドが本棚に戻りたくないと逃げ回る本を追いかけている。彼の捕獲率は未だ0%だ。今追いかけている本に気に入られたようでかれこれ1時間ああやって追いかけっこを繰り広げている。
「こっち……いい子」
ほぼ無言で脅威の捕獲率と叩き出しているのはサレンさんだ。あの子の周りには本が寄って来ている。後は勝手によってくる魔導本を捕獲するだけだ。
そして俺は、なぜか本と戦っていた。3日前には黒魔種のバジリスクと死闘を演じていたのになぜか今は本と本気で戦っている。
なぜかと言えばディーネのせいだ。以前泉シリーズは強力だみたいなことを言っていたが、それ故に優越感でもあるのだろう。この部屋に入った瞬間に『マスターに整理整頓させて貰えるんです。感謝して下さい』と言ったことが本に宿る精霊の機嫌を損ねたようだ。
「こら! マスターに迷惑を掛けないで下さい! あだっ」
怒りながら本を追いかけるディーネは突如足元に飛んできた本に躓きすっ転んだ。そして100冊を超える本に袋叩きにされている。
「ます、マスター助けて下さい~」
「すまん無理だ! 目を離したら俺もやられる!」
俺は、この禁書庫のボスのような存在1mもある聖魔法について書かれた聖書と戦闘中である。
「ますたー、私が手伝う‥‥」
以前ディーネと同化した幼女ディーネが出てきた。
「お前、同化したから出られないんじゃなかったのか?」
本の猛攻を避けながら質問した。するとなんでも無いように質問に答えた。
「一時的……あそこでボコボコにされてるディーネが自分の意志で一時的に分離させた。マスターの護衛が目的」
そう言って小さい体で自分の身長と同じくらいの大きさの本と戦闘を始めた。1mの本はデカすぎで動いているだけで怖い。それが俺たちを挟んで叩き潰そうとしているのだから恐怖でしか無い。
「ますたー冊つかまえた! しばって」
幼女ディーネが一人で巨体魔術本を捕獲した。俺は幼女ディーネに駆け寄り捕獲用の縄で本を縛り付けた。精霊が宿っているので多少乱暴に扱っても傷つきはしない。というかある程度無理をしないと捕まらない。
もちろん普通の本でこんな事をやったら一瞬でボロボロになるから絶対にやってはだめだけどな。本好きとしては心が痛むが仕方がない。
「ゴメンな……ありがとな、後は小物を片付けるだけだ」
「マスタ~助けうぐっ! いたっ! あひっ」
大きい方のディーネを助けないと……俺は捕獲用の網を振り回す。網に入った本は自動的にぐるぐるに縄で巻かれる。少女ディーネが自由になったので幼女ディーネが少女ディーネの元に戻っていった。
「はぁはぁマスターありがとうございました。助かりました。」
ディーネを助けると100冊の本が一斉にこちらに飛んできた。数が多いいので適当に捕獲用網を振り回す。網に入った本がどんどん縛られ地面に落ちていく。ちなみに俺達の仕事は飛んでいる本の捕獲ではなく、禁書庫の整理なのでまだスタートすらしていない。
「マスターこれでは埒が明きません! 麻痺を付与した煙幕があります! ヴァリオン先生とやらからかっさらってきました」
ディーネが俺にスモークグレネードのようなものを渡してきた。っていうか先生からパクってくるな! 俺が罰則を喰らうだろ。
とは思ったがいつまで立っても禁書庫の整理が始まらないここは煙幕を使うべきだろう。
俺はスモークグレネードのようなものを投げる。辺り一帯に触れると麻痺する白い煙が立ち込める。
煙に触れた本がポトポト地面に落ちて行く。煙が落ち着いてからディーネが出てきてゆっくりと本を回収し始めた。
「やった! やっと捕まえた!」
クラウドの嬉しそうな声が遠くから聞こえる。やっと一冊捕まえたようだ。
そこから3時間ほど掛けようやく片付けが終わった。みんな既にヘロヘロだ。そんな俺達のもとにヴァリオン先生が来た。
「やぁおつかれ、いやいや助かったよ。暴れる本の禁書庫なんて誰も掃除したがらないからそろそろ職員が突撃して片付けるって話が上がっていたんだよ、前に突撃させられた職員は全治3ヶ月の怪我をして帰ってきたからね」
生徒に罰則とは言えどんな事やらせてるんだ!
「じゃあ明日から、クラスの授業に参加するように、クラウド君は今から補修だ。半年分一気に詰め込むから楽しみにしたまえ」
そういって半泣きのクラウドを見送ろうとした時ヴァリオン先生が黒い手帳を落とした。その手帳には心当たりがあった。6年前に村を襲撃した黒ローブの持っていた手帳に似ているのだ……
「おっと……落としちゃった」
そう言って手帳を大切そうに拾ってクラウドを連れて歩き始めた。まさか……あのヴァリオン先生が? 信じられない……驚きのあまり俺は固まってサレンさんと二人になっていることに気が付かなかった。
「エルビス君暇なら魔法教えて……」
唐突にそして無感情に彼女はそう言った。今のこの不安を紛らわせる為に彼女に魔法を教えることにする。いくらなんでもこのタイミングでクラウドを襲うことはないだろう。だが警戒はするべきだ。
「いいけど、サレンさんが使える魔法って何?」
「土と無属性」
無属性……サレンさんにぴったりだ。何がとは言わないが……
「土魔法なら教えられるけど?」
サレンさんがコクコクと頷いた。あんまり使ったこと無いけど教えるしか無いようだ。
……何を教えればいいんだろう? 彼女は既に一級生徒になるくらいの魔術も十分に使えるだろう。
「どうしたの?」
サレンさんが無言で固まる俺の顔を覗き込む。もういいや! 適当に無詠唱でも教えてみることにしよう! 俺はスキルで無詠唱を使っているが俺が教えたシルヴィも無詠唱は使えたし
そこからわずか五分彼女は無詠唱を習得した。天才だ。そして彼女は俺を尊敬した目で見ている。更に教えて欲しいことがあるようだ。もうなにもないぞ! 教えたら5分で技術習得するサレンさんに一日付き合った。
シルヴィ襲撃まで後3日
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます