第107話 間話『誘拐されたお姫様」

彼女が目を覚ますと辺りは深い深い森の中に建てられた巨大な石塔の中。


「っ……。ここ何処?」


 着ていたはずのドレスは無様に破け白く綺麗な足が大きく露出している。

 そんな彼女の隣の牢屋には『人族』のドレスを着た少女が一人。人族の少女はまだ意識がないようでぐったりと倒れている。


 そんな人族の少女を見て恐らく彼女も高貴な身分なのだろうと判断した少女は人族の少女に声をかける。


「ねぇ。あなた。起きてっ」


 少女が何度か声をかけると人族の少女がぼんやりとした目をしながら瞼を開き、段々と理性の光が灯っていく。

 その瞬間人族の少女の顔が絶望に染まった。


「ま、魔族! 来ないでまだ死にたくないの! いやあああああああ」


 取り乱した様子で暴れる人族の少女。

 一方で魔族と呼ばれた少女は複雑な顔をしたまま人族の少女を見つけた。


「あ、あの? 見て魔封じの腕輪つけられてるから私は貴方に害を与える事は出来ないよ」


 そう言いながら魔族の少女は自らを束縛している腕輪を全面に突き出す。

 すると人族の少女の顔に落ち着きの色が現れた。


「ほ、本当だ……。えっと……貴方が私を捕まえたんじゃないの?」

「違うよ。私も捕まったの。原因は人族の行った黒錬金術禁止令」

「え? な、なんで?」


「あの法令のせいで一気に世界全体もちろん人以外の様々な種族が黒錬金術に対して、一旦距離を置くようになったの。この世界で多種族との繋がりを切るのは難しいからね。勇者さんが繋いでくれた国通しの繋がりだし、簡単に捨てる事は出来ないの」


 一般人が知らない情報を捲し立てる魔族の少女を見て人族の少女の顔色に少々変化が生まれた。


「も、もしかして……魔王……様の娘さん?」

「そうだよ。あっ……先代魔王とは何の関係もないから安心して私達は穏健派だから、人とも仲良くしたいの」

「そ、そっか……どうしてここにいるか。分かる?」


「そりゃー人質だよ。今の世の中は黒錬金術に優しいとは言えないからね。黒錬金術を行使するには物流が必要不可欠だし、話を有利にすすめる為の餌だよ」


「そ、それじゃあ私達が逃げないとお父さんたちの話し合いが不利になるって事だよね?」

「そうだね。何とかして逃げないと」

 

 魔族の少女が檻の脆い場所を探し動き始める。

 そんな魔族の少女をしばらく見つめていた人族の少女も何か自分にも出来ないかと辺りをキョロキョロ探し始めた。


 ──しばらくして。


「ね、ねぇこれ使えない?」


 人族の少女が魔族の少女に拳の大きさ程度の石を突き出した。


「この檻私の両手くらいなら入るから、この石であなたの魔封じの腕輪を破壊する。ど、どう?」

「いいの? 私が魔法を使える様になっても。襲うかもしれないよ?」


 魔族の少女がそう言った瞬間、人族の少女の顔が一瞬ひきつる。


「だ、大丈夫。信じる」

「そっか……じゃあお願い」


 魔族の少女が人族の少女に魔封じの腕輪を突き出した。


 ──二時間後。

「さぁ。行くよ! 私の手に捕まってエリシア」


 魔族の少女が大きく捻じ曲がった鉄の檻の隙間から身を乗り出し、人族の少女に手を伸ばした。


「うん。逃げよう!」


 人族の少女が魔族の少女の手を掴んだ途端、魔族の少女が石塔の壁を魔法で破壊し、日が傾き始めていた空に飛び出した。


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投稿が遅れてすみません。これから週二のペースに戻しますのでよろしくおねがいします。


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