第69話 クラス対抗戦

 翌日、学校に行くとヴァリオン先生に呼び出された。


「ああ、来たね。黒の魔窟について聞きたいんだけど……」


 あ、完全に忘れてた。黒の魔窟探索後のことの方が衝撃的だったから……


「い、一応ありますけど……」


 俺は、渋々黒の魔窟で拾った日記を渡した。


「おお、これはなんなんだい?」


「日記ですね」


「日記か……錬金術の本はなかったんだね……」


 いや、あったけど燃やしました。なんて言えるわけもなく無言で話を押し通す。


「そう言えばこの精霊に涙なんだけど校長がすごく欲しがっているんだ。高額で買い取るとか言っているけどどうする?」


 そう言って、俺が先生に渡した精霊の涙を俺に手渡ししてくれた。


「君が決めたまえ」


「じゃあ売ります」


 俺は、受け取った精霊の涙をそのまま押し返した。


「そうか、わかった。じゃあ教室に帰ってクラス対抗戦の準備をしておいてくれ」


「ん?」


「あれ? 言ったよね。今日がクラス対抗戦だって」


 知らん、聞き逃したかもしれん。


「あ、わかりました。教室に戻って準備しておきます」


「主様よ。そのクラス対抗戦とらや妾も暴れて良いかの?」


「人間相手に暴れるのか?」


「任せてくれ! 妾が主様を優勝させるのじゃ」


「いや、遠慮するかな……」


「マスターマスター! じゃあ私がマスターを優勝に連れていきます!」


 頭の中に響くディーネの声がウキウキとした声だ。


「いや、いらん一人で頑張るから」


「マスター私に冷たくないですか?」


「いや、そんな訳ないだろ」


 俺は脳内に響く二人の声を放置して教室に戻って席に座るとラルフという名の生徒が俺に話しかけてきた。


「おい、エルビス……お前のせいでここまでクラス順位が下がったんだ舐めた行動してると許さないからな」


 そう言って立ち去っていった。ラルフが話しかけてきた後シルヴィが俺の机に来た。


「エルビス、落ち込まないで次にあいつがあんなこと言ったら私がぶっ飛ばすから!」


 シルヴィに慰められてしまったがそんなに落ち込んではいないんだよなぁ。俺の机の方にもうひとり女の子が来た。入学試験の時に同じタイミングでカインさんと試験を受けたサラという生徒だ。


「あのね? あんまりラルフが言ったこと気にしないで、一緒に頑張ろ」


 そう言って立ち去っていった。サラさんが席に座ったタイミングでヴァリオン先生が教室に入ってきた。


「さあ、今日はクラス対抗戦だ。この落ちたクラス順位を上げるんだ、さぁ時間だ。外に出てうちのクラスの陣地に付いてくれ」


 いや待て、聞いてない聞いてないよ!


「あ、クラウド……クラス対抗戦についてなにか聞いてたか?」


「え? 毎月15日にクラス対抗戦があるじゃん聞くもなにもないよ」


 あ、そうだったの知ってて当たり前だったのか


「エルビス……早くEクラスの陣地に行こ」


 サレンさんが俺の服をグイグイ引っ張る。そんな俺の元に走ってきた。


「え、エルビス! わ、私と行こ!」


 シルヴィが俺の手を取り学校の校舎を出て森に入った。


「な、なあ? 陣地の場所わかるのか?」


「え……し、知らない」


 俺がサレンさんと話しているのを嫉妬して何も考えずに俺を連れてきたようだ。


『ピーーーー』


 笛の音が森の中に響き渡る。クラス対抗戦が始まったようだ。競技内容知らないんだけど? 詳しく聞く前にシルヴィが俺を引っ張ってきたから聞きぞびれた。


「シルヴィ! Eクラスの陣地にいくぞ」


 そう言った瞬間俺の目の前に火球が飛んできた。掠った火球は近くの木に当たり燃え上がった。


「エルビス! 左の木」


 シルヴィが指差した方向に男子生徒がいた。超加速を使い一瞬で男子の後ろに回り込んだ。そのまま魔力の塊を叩きつけて気絶させた。


「主様よ。生徒に通常の剣が使えないのなら妾が剣を貸してやろう」


 俺の目の前に闇の魔力で作られた刀のような武器が作り出された。刀を手に取り試し振りをした。剣から闇の衝撃波が飛んで俺の前方の森を見通しの良い平地に作り変えた。


「ノータ……なにこれ」


「すまんの……やりすぎてしまった」


 俺が刀を振った先には大きな布にDと書かれた青色の旗があった。クラス対抗戦の内容は旗取り合戦だったようだ。あれを回収するとしよう。


「シルヴィ、あの旗を取るぞ」


「うん、私は周りを警戒する」


 Dクラスの旗に歩いていくと10人近い生徒が突然出現した。


「みんな! Eクラスのエルビスだ。絶対に正面から戦うな不意打ちをしろ。旗を取らせるな」


 リーダーっぽい生徒がそう言った瞬間Dクラスの生徒が俺の周りに円を描くように取り囲んできた。


「どどど、どうしよう……殺傷製の高い攻撃しか思いつかない」


 俺がポツリ独り言を言った瞬間、俺を取り囲んだ生徒たちが後ずさりした。


「ばか! エルビスの嘘に決まってるだろ」


 リーダー格の男の子が大声でそう言ったがメガネを掛けた男子がそれを否定する。


「この森を更地にしていることから嘘じゃないだろ、Dクラスの旗は放棄して他のクラスの旗を奪ってポイントを稼ぐしか無い。エルビスを倒しても1ポイントだ。放っといて他の生徒を倒そう」


「そうだな」


 そう言ってDクラスの生徒が散開していった。え、戦わないの……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る