SS レイラとの生活
時は、村が解散して半年後だ、オレの家族は移動中、黒魔種に追われバラバラになってしまった。そして今俺は一人暮らしだ。っていうかまだ7才だから冒険者にはなれない。冒険者になるには15歳以上でなければいけない。
ならどうやって生活しているかと言われれば冒険者ギルドに素材を持って行き、換金している。今日も魔物を討伐してギルドに持ち帰るところだ。いつも通りギルドの入り口をくぐるとサッと静けさが波紋のように広がる。
「あ、エルビスさん!こんにちは!」
俺は、普通に冒険者ギルドで恐れられていた。ここに来た初日、シルヴィがいない事の不安感からやらかした。俺の中でシルヴィの存在は支えになっていたようだ。そんな俺に喧嘩を吹っかけてきた男を片手で吹き飛ばしてギルドを半壊させた。
そのあまりもの凄惨さに悪魔とか破壊の魔王とか言われている。
「きょ、今日はどうしま、あ、ごめんなさい!何かしましたか!謝るので何も何もしないでください!ひぃぃぃ」
俺が、ここに来た時のことを無言で振り返っていたせいで、変な勘違いをさせてしまった。というか子供相手にガチ謝りしないで欲しいんだけど・・・
「いえ、そんなことしませんよ、今日はこれを買い取って欲しいんです。」
そう言ってカウンターに白い狼を置いた。
「こ、これは獣の王、ヴェルウルフじゃないですか!A級危険モンスターです。エルビスさんが倒したんですか?」
「はい」
いつものやり取りなので平然と答える。
「あ、えっと買取価格は白金貨500枚です。あ!おめでとうございます!今回のでギルドの修繕費払い終わりました。残りの白金貨200枚です!」
終わった・・・長かった。男を吹き飛ばした時に壊れた鑑定の水晶が白金貨5000枚を超える超高額アイテムだったのだ。5億円ってホントに泣きそうだった。ちなみに喧嘩を売った男は借金返済できず奴隷落ちした。
彼の負担分もオレが支払うことになってギルドで暴れたなぁ
「お兄ちゃん!やっと見つけた!」
黄昏ていた俺に声を掛けたのは、妹のレイラだった。なぜかずいぶんボロボロだ。
「あれ?どうした?レイラなんでこんなところに?」
「なんでこんなところにって言うのは私のセリフ! お父さんとお母さんは?」
「いや知らない、バラバラになっちゃった」
俺は首を振ってジェスチャーをする。
「そっか・・・ところでお兄ちゃんはどこに住んでるの?」
「今は借家で一人暮らし」
「そっか・・・じゃあ私も住むね?」
そう言って笑顔で俺の背後に立った。・・・なんで俺の背後に立った? こいつが善悪の判断無く人を傷つけるの知ってるから怖いんだけど?
「別にいいが俺と同居している奴がいる。そいつに危害は加えるな、変なことしたら追い出すからな!」
「ひどいよ・・・お兄ちゃん私妹だよ?そんなことしないよ!信じてよ!」
そう言ってオレに抱き着いてくる。嘘くせぇ! レイラがそういう事をするっていうのは知っているんだ!
「あの? エルビスさん? その方は妹さんですか?」
受付嬢がおどおどと聞いてきた。
「そうですけど?妹に手を出したらわかってますよね?」
俺は、そこそこ眼力を入れ、射抜くように受付嬢を見ると半泣きになりながらコクコクと何度もうなずく
そのままレイラを家まで連れて行った。
「そういえば、どうやって俺がここにいるってわかったんだ?」
レイラがへらへら笑いながら質問に答える。
「え?お兄ちゃん結構有名だよ?ある程度情報を絞ったらすぐわかったけど?」
え、マジかそんな有名な人間になっていたのか・・・
「びっくりしたよ。連絡が一切来ないから村に行ってみたらさ? すごいことになってたんだよもう一面焼け野原人っ子一人いない場所でね……って聞いてる?」
そうか……俺達が村を出ても黒ローブの襲撃は変わらなかったのか。やはり逃げて正解だった。
「そう言えば、レイラはどうする? うちに住むか? 他の住人がいるけど」
時間が巻き戻ったこの世界で、俺はまだレイラにディーネは紹介していない。
「いいの? その住人も気になるけどまぁいいや。実験室ある?」
「あるわけ無いだろ、お前には色々勉強してもらうことがある」
「私頭はいいよ? お兄ちゃんよりも」
「魔術とかな……俺より知ってるかもしれない。でもな? お前には倫理観とか良心の呵責とか無いだろ理解はできなくても納得だけはしてもらう」
「えぇ……そんなの魔術研究に邪魔だよ。倫理観とか良心の呵責なんてあったら魔術理論の実証のための人体実験できないじゃん」
「だ・か・ら、お前が理解できないのは知ってるよ。納得だけはしろ、今までは、そういうのが好き勝手にできる環境にいたんだろ? 人体実験がしたい時はできるし動物を無闇に殺しても誰も咎めない。でもな、それは普通の暮らしをしている人間からしたら全然普通じゃないんだ。さあうちに行くぞ。お勉強だ」
「いやだ~離して」
こうして俺とレイラの生活が始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます