第2話 スキルの大量獲得だ!


 窒息状態でも死なない事がわかってからは、比較的に気持ちが楽になった。先程獲得した『苦痛耐性』『精神防御』がメンタル的なダメージを軽減してくれている。だが苦しいものは苦しい、気持ちが楽になったところで別に体の苦痛が消えたわけではない。


 酸素が体に行き渡ることがなく、肺が潰れているような感覚が常に襲いかかる。


 そこで気を紛らわせる為、なぜこんなところでおぼれているかを思い出してみた。おそらく元の記憶を持ったまま転生するという事自体に無理があったのだろう。


 生まれて間もない赤子に16歳の記憶を詰め込んだりしたら何が起きるかわからない。だから徐々に解凍するような形で復元していったのだろう。


 過去を辿るように思い出してみると思い出してきた。幼馴染のシルヴィと川で水遊びをしている時に、シルヴィが水にさらわれてそれを助けようとした時に、僕も足をさらわれて流されたのだ。


 流れていく途中でシルヴィは岩に引っかかったので、おそらく大丈夫だろうが助けようとして自分が流されるなんて我ながらアホである。


 そんな事を考えているうちにお腹がすいてきた。餓死で死ぬのか? そんな不安が頭をよぎったが、酸素がなくても死なないんだ、たぶん大丈夫だろう。でも延々と続く飢え。僕はどうなるのだろうか?


 脳内にアナウンスが聞こえる。


「空腹耐性 (小)」獲得

「苦痛耐性 (特大)」獲得

「物理防御 (中)」獲得

「精神防御 (大)」獲得

「体力自動回復 (小)



 すごい速度でスキルを獲得する。だがここから出るための行動に出なければ、僕はこの回復の泉をふさいでいる天井を必死で叩き始める。


 僕のスキル取得難易度低下とスキル経験値増加があればそのうちに強力なスキルを獲得してここからでられるだろう。だがその時まで僕は、まともな状態でいられるだろうか?


 一週間ひたすら無呼吸、無睡眠状態で、天井を殴り続けた。本当に何で生きているのだろうか?


「攻撃力上昇 (大)」獲得

「体力自動回復 (大)」獲得

「空腹耐性 (大)」獲得

「破壊属性付与 (中)」

「苦痛耐性が進化しました。苦痛無効化 (小)獲得」

「物理防御が進化しました。超物理防御 (小)獲得」

「精神防御が進化しました。精神ダメージ完全無効 獲得」

「魔術操作 (小)獲得」

「暗視  (小)獲得」


 ついに人間をやめ始めた。苦痛無効化のおかげで常時続いていた、気が狂いそうな苦しみから少し開放された。ギリギリ痛む内臓痛は消えない。一定レベルの痛みを無効化するスキルのようだ。


 そして暗視のスキルのおかげでこの泉の全体像が見えてきた。と言ってもスキルが小なので1mくらいしか見えていないのだが……


 時折何か泉の中を泳いでいる。それがなにかまではわからないが……


 焦りの感情が若干ストレスになっていたが、唐突にフッと焦りの感情が消えた。もっとここで強くなってもいいかもなぁと思い始める。


 これは、精神ダメージ完全無効化の影響だろう。これも完全に消し去るわけではなく精神的ダメージを薄める程度の効果らしい。もっと強い精神ダメージなら消し去るのかもしれない。


 だがこのスキル達は最低限人間らしくある基準を弁えていて、人間の範疇から逸脱することはないようだ。


 だが特に何もしないのは暇なので、天井をひたすら殴る。最初は血が出ていたが今は血が出るより先に再生する。体力自動回復の恩恵は怪我にも効くようだ。


 そんな窒息状態の日々が半年続いた。半年間ご飯を食べずとも死なない、睡眠もとっていないのだが‥‥この泉は恐ろしい、あまりにも強力すぎる。死にかけの人間をこの泉に突っ込むだけで死を防ぐ事ができるだろう。


 時折人影がふっと見えたこともあったが、こんな真っ暗闇な泉の中で見えるわけもない‥‥ただの幻想だろう。


 それにしてもかなり深いところに泉はあるらしい。もうかなり天井を破壊しているが未だに地上に出ない。もしかしたら破壊しているそばから天井が再生しているのかもしれない。


 ちなみに今の俺のステータスはこれだ。



 天門裕也(6歳)

 レベル30

 魔法特性 火、水、風、土、闇、光

 スキル 

 ・苦痛完全無効、

 ・無詠唱

 ・スキル取得難易度低下

 ・スキル経験値増加

 ・スキル限界突破{ユニーク}

 ・鑑定

 ・魔術支配 (中)

 ・精神ダメージ完全無効

 ・超物理防御 (特大)

 ・破壊属性付与(特大)

 ・体力自動回復 (極大)

 ・超攻撃力上昇 (大)



 年齢は一歳上がった、もういいだろうそろそろ本気で脱出しよう。”俺”は思いっきり握りこぶしを握るとその手に破壊属性を付与し思いっきり殴った。


 泉を覆っていた天井がはじけ飛び、水柱が上がる。斜め45度に穴を開けたので歩いて出れる。


 こうして、俺は半年ぶりに地上に足をついたのであった。


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