第14話 魔法高威力問題

 ベフィスとの決闘の翌日、俺は魔法の威力が強すぎる問題を解決するために訓練しようとしていた。シルヴィは珍しくいないカインさんと一緒だ。


「いいか、エルビス。魔術学校に行くのなら対人戦で魔法を使うこともあるだろう、そんな時にお前の魔法は確実に人を殺す。冒険者になるなら魔法の使用タイミングさえ気をつければ、加減できない馬鹿として喧嘩をふっかけられなくて、むしろいいかもしれんがな。


 今日こそ魔法をしっかり手加減して撃つんだ。いいな」


「はい、でもスキルが魔力を勝手に持っていって、魔法を打つから手加減なんて……」


「スキルのせいで手加減できないならスキルで手加減できるようにしろ」


 今日の的は魔物だ。俺は、魔物討伐で魔法練習ができて、村としては魔物を討伐してもらえると嬉しいこれがウィンウィンと言うやつだ。


 最近魔物の出現率が上がってきている。的はいっぱいあるという事だ。練習をしてなれるとしよう。


 龍魔法は現在、通常の龍魔法と無理やり魔法を押さえつけた時にできる子龍魔法の二パターン使える。子龍魔法は通常の龍魔法の半分程度の魔力で魔法を使える。威力は三分の一程度だ。


 ちなみに龍魔法とは言っているが、それは魔法の発動媒体が魔力によって形成された龍だからという理由に過ぎない。例えば普通の魔法使いが攻撃用の火を発動するとする。すると詠唱という過程を挟んで火が生まれる。


 俺の場合は、完全に固定化されたイメージのせいで、龍を作るという過程を挟まないと火が出せないのだ。そして威力は馬鹿みたいに高く。魔力消費も高い。それでもメリットを上げるなら龍を形成した時に魔力を持っていかれ、その形成された龍から魔力を消費して魔法を発動するので、自分の使える魔法の回数は最初からはっきりと分かっていることだろうか? 現在の魔力量だと龍魔法で三回、子龍魔法で六回と言ったところだ。


『水・子龍魔法:アクアボール』


 手加減の練習のため水魔法を空に打ち上げる。空に打ち上がった一メートルを超える水球は見えない所まで飛んでいった。


「駄目だな水が大きすぎるのもあるし、見えなくなるほど飛ぶってお前な……手加減する気あるのか?」


『手加減 獲得』


 おなじみのアナウンスが聞こえた。


 説教を食らったあとに、スキルを獲得した。いつも思うけどスキル獲得タイミング遅いよな。スキルを獲得したことは、黙っておいて手加減のスキル使って見るか。丁度いい所にゴブリンが来た。


 俺の手に赤い龍が宿る。


「ちょ、ちょっと待てエルビス。ゴブリンにそんなの撃つな! 山火事になるだろうが!」


 カインさんの注意を無視してスキル手加減を使い魔法を放った。ゴブリン二体分の大きさの火球がゴブリンに当たる直前半分以下の大きさに縮んだ。そのままゴブリンに当たり、五メートルほど吹き飛ばした。


「はっ? 何だ今のなんで小さくなったんだ?」


 カインさんが困惑している。


「カインさんが言ったじゃないですか。スキルで手加減できないならスキルで手加減できるようにしろって」


「はぁ? まさか手加減を獲得したのか?」


「はいそうですよ」


「マジカ……くぅぅぅやったぜ! 長かったなぁ。練習始めてまだ一年くらいだろ早いもんだ」


 はしゃぎまくってるカインさんの背中を押して家の方向へ向かっているとべフィスがいた。俺を見るとこっちの方に走ってきた。


「おそい! さあ今日も決闘だ!」


 またベフィスがいた。なんでこいつ俺に突っかかるんだ?  わからん。


「今日は昨日よりも強い黒錬金術で作られたお守りを付けている!これで攻撃力と速度が上がった! どうせお前も防御のお守りでもつけていたんだろ? これで対等だ!」


 なんて本当に訳の分からないことを言う。黒錬金術? なにそれおいしいの?


「さぁ行くぞ!」


 昨日の三倍の速度で飛び掛かるベフィス、早い! あのお守りそんな効果があるのか!  昨日はへなへなだった攻撃も今は剣を振るたびに風を起こしている。


 早めに決める必要があるな。俺は手加減のスキルを使い本気でお腹にパンチをめり込ませた。


「ごぶっ!」


 痛そうな音を立て転がるベフィス、


「お前どんなお守り買ったんだ。俺が持ってるお守りだって白金貨5枚だぞ! くそ!」


 そう言って立ち去った。なんだったんだ?


「エルビス! 大丈夫? すごい音したから窓の外を見たらまた戦ってたから心配したよ!」


 そう言いながら俺の体をぺたぺた触り確認している。少しくすぐったい。安全確認が終わると安心したように息を吐いた。


「今日うちでご飯食べない? もうエルビスのご両親にはもう許可貰ったから後はエルビスだけ! カインさんも一緒にどうですか?」


 家族ともうまく言っていないし、断る理由はない。


「いいよ。ご相伴にあずかるよ」


「じゃあこっち。カインさんも早く来て下さい!」


 ルヴィに手を引かれシルヴィの家についた。出迎えたのは顔をやつれさせたゼオンだった。気になって話しかけてしまう。


「どうしたんですか? 大丈夫ですか? ひどい顔ですけど」


「ああ、最近魔物多いいだろ? その対策でネれなかった。あとシルヴィの婚約話が毎日毎日来るんだ! どうなってるんだ! あんなに優良物件なのにシルヴィは断るし!なんとかしてくれ! エルビス君!」


 相当疲れているらしい明日辺りに息抜きしたほうが良いんじゃないか?


「エルビスこっち! 料理ができるまで遊ぼ、カインさんも」


 ゼオンを無視し、シルヴィが俺の腕を引っ張りシルヴィの寝室に来た。なにげに初めて入った。可愛いぬいぐるみと? 俺の服? なんか飾られてるんだけど? なにこれ怖い。


 俺の服を片付け忘れていたようで、走ってトランクの中にしまった。


「おい、お前のガールフレンドやばいやつだぞ。俺の昔のパーティにもいたぞこういうヤバイやつ」


「やっぱりやばいですか?」


「やべーよ」


「えへへ、なんでも無いよ! エルビス! こっちこっち来て!」


 笑顔でごまかすシルヴィ、仕方がないので知らないフリをしてあげよう。


「かわいいぬいぐるみだね!」


「そうでしょ! この布は特別でね!エルビスの……なんでも無い」


 何! 今なんて言おうとしたの! この子こわい! 怖いよ! 愛が重いよ!


「おい! やっぱやべーぞ。早めに縁を切るなら俺に言えよ! お前一人を逃がすくらいならなんとかなるぞ」


「ありがとうございます。いつかお世話になるかもしれません」


 ふとシルヴィって浮気とかしたら相手殺されそうなど考えていたせいで変な質問をしてしまう。


「重婚ってできたっけ?」


 思った事を声に出してしまった。


「え? 今なんて言った?重婚?するの?」


 先ほどまで太陽のような明るい笑顔だったシルヴィがドライアイスのような冷たく痛い視線を向けてくる。


「ち、違うってふと思った。それだけ!」


 そう言うと再び明るい笑顔に戻る、よかった


「馬鹿野郎! なんてこと聞いてるんだ。聞いてて戦慄したぞ、死にたいのか? こういうヤバイやつには、禁句だぞそれ」


 カインさんは何かを思い出すように、なかなか現実味の籠もった話をする。経験則かな?


 ご飯時まで人形遊びをして遊んだ。もちろんカインさんも一緒だ。ごつい男が人形遊びをするのを見るのはなかなかシュールで面白い。


 夕食に呼ばれたので、向かうとゼオンが机に俯いて泣いていた。その近くにはシルヴィ宛だと思われる手紙が複数。



「ああああもうヤダ! どんだけお見合い話送ってくるんだよ。もう勘弁しろよ! 俺だって嫁に出せるならだしてるわあぁぁぁぁ! 火魔法使って抵抗してくるんだ! 俺には手に負えないんだよ。頼むよ! シルヴィが幸せになってくれたらもうそれでいいからさあ」


 大分精神をやっているようだ。かわいそうになってきた。シルヴィを見ると素知らぬ顔をしている。


「なぁシルヴィ慰めてあげたら? それだけで元気になると思うよ?」


「いや! 知らない人と結婚させようとしてくるお父さん嫌い! 貴族としか結婚できないならエルビスが貴族になればいいじゃん!」


 ガシャン! とガラスの割れる音がする。それにお構いなしにゼオンは叫んだ。


「それだああああああああああああああ」

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