第73話 煉獄の門

 ドラゴンの方を見ると狂ったように火球を吐いている訳ではなく、強力な魔法陣によって防御されている教員塔に攻撃をしている。教員塔は教員の個室が設置されている塔だ。あそこに用があるのだろうか。


「取り敢えずドラゴンを撃退しよう」


「エルビス君! あれ見て」


 クラウドが指差した方向、ドラゴンの首元には紫色のアミュレットが掛かっていた。


「あれは何だ? 魔道具か?」


「違うよ……エルビス君あれは……」


「主様よ。あれは奪命のアミュレットじゃ一定数の命を奪い自らの望むものを具現化する。神話の神具じゃ、なんであんなものがあるかわからぬが死んでも主のスキルは使えんのじゃ」


 つまり、ここで死ねば回復の秘術使うことはできず、あのアミュレットに命を奪われるのだ。シルヴィを逃さなくては……


「ディーネ命令だ。シルヴィを連れてここから逃げろ他にも逃げれるやつを連れて。でもシルヴィ優先だ。もし連れている人間の命が危険にさらされたらシルヴィを優先して逃してくれ」


「わかりました。シルヴィを行きますよ」


「嫌だ! エルビスと戦う」


 シルヴィがディーネの手を振りほどき俺のもとに走ってきた。俺はシルヴィの頭に手をおいた。


『催眠付与』


 シルヴィはパタリと意識を手放した。


「あとは頼んだ」


「任せてください」


「主様よ、どうやって戦うのじゃ?」


「まず闇の世界で日光の光を魔力に変換してその魔力をそのまま闇の秘術に使ってあのドラゴンと戦うための世界を作ってアイツを引き込む。その後どれくらい魔力が残るかわからないから消費がない闇魔法を龍魔法で発動して攻撃する。破壊属性付与は15分しか使えないからタイミングは気をつける。援護を頼むノータ」


「わかったのじゃ、では行こう主様よ」


『闇の世界』


 闇の世界を発動した瞬間夕日の光が消え月明かりも星あかりもない暗黒な世界が訪れた。今この学校を照らしているのはドラゴンが吐いた火球と学校に着火した火だけだ。


「ノータ! やばい。もう日が沈みかけてたせいで魔力に変換できる量が想像以上に少ない」


「じゃがやるしかなかろう」


『闇の秘術』


 十分に竜と戦うための土地を生成すると俺の魔力がほとんど持っていかれた。日光から作り出した魔力は俺の全魔力の20倍だ。それでも全く足りなかった闇の秘術は魔法ではないし持っていかれた魔力は世界生成の代償なので闇の秘術のもう一つの効果、闇の魔法消費なしは効かない。


「行くぞ! ノータ」


「わかったんじゃ」


『ゲート』


 ドラゴンを飲み込むほどでかい巨大なゲートが生まれドラゴンは俺が作った世界に飲み込まれた。困惑する声が多く聞こえる。困惑する声を無視して俺たちも創造した世界に入り込んだ。世界にはいる直前森の方から大量の魔物が押し寄せているのが見えた。


「ノータ、速攻で決めるぞ」


「任せるのじゃ」


『龍魔法:ダークドラゴン』


 龍魔法によって顕現した龍が意思を持って動き始めた。竜対龍だ。


「主様よ。何をしておる! 闇魔法は使いたい放題なんじゃぞ? もっと闇龍を作るんじゃ」


 俺の作った龍とドラゴンの戦闘を眺めているとノータの叱責が飛んできた。俺はすぐにダークドラゴンを生成する。20対近く作ったところで精神がかなりすり減っているのを感じた。魔法は精神に宿ると言われるものだ。無限に使えるとはいえ無限に使っていれば何かがすり減るのだろう。


「主様よ。もう魔法を使うのはやめておくのじゃ、それ以上は精神が壊れかねん……」


 俺が作り出した龍はドラゴンを囲み魔法を放ち続けている。俺はフラフラする足をドラゴンに向け剣を構えた。ここで決める。


『闇の剣圧破壊属性付与』


 俺は一秒に一回のタイミングで剣圧による斬撃波を飛ばし始めた。俺が作った龍に攻撃をしていたドラゴンは俺が作った龍ではなく、致命的な攻撃をしてくる俺に注目した。


「GYAOOOOOOOOOOOO」


 ドラゴンが俺に地面がガラスになるほどの火を吹いてきた。とっさに剣圧による斬撃波を飛ばしドラゴンブレスを切り裂いた。破壊属性を付与してなかったら切り裂くことなど不可能な攻撃だ。


[GAYAOOOOOOOOOO]


 ドラゴンは闇龍の攻撃を受け苦しそうに鳴き声を上げた。そのまま地面に舞い降りた。


「ぐぅぅ……人の子よ。取引をしないか?」


「何の用だ? お前は俺らの学校を襲撃した人もたくさん殺した。言い逃れはできないだろ」


「儂はあそこにある、とあるものを破壊しなくてはいけなかったのだ」


「何だ。それは?」


 俺が追求すると少し吃った様子だったがすぐに話し始めた。


「あそこの塔には超大規模魔法陣:煉獄の門があるのだ。何としてもあれを破壊しなくてはいけない。そのためなら多少の人間の死などどうでも良いわ」


「ノータ? 煉獄の門ってなんだ?」


 俺はドラゴンお話を聞き震えているノータを問い詰めた。


「神話の時代、神を殺すために邪神が開発した悪魔の発明、大陸一つの生命体の命を全て奪いエネルギーに変換します。このエネルギーの使い方は自由で神に等しい力が使えます」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る